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黛信彦の時事ブログ

浜矩子語録(157)世界恐慌の引き金は?

2012年05月19日 | 浜矩子語録

ギリシャは、ここ2年で倒産件数6万社、若年層の失業率は5割を超えている。 盗難が横行し自殺が止まない。 そんな中、行われた選挙では連立協議が不調に終わり、選挙管理内閣が6月に再選挙を目指す。

ギリシャの世論調査では78%がユーロ圏残留を望み72%が緊縮財政に反対、まるでギリシャ全体が「生活保護」を望んでいるかのようだ。

18日のTV放送では、先行きを案ずるギリシャの人々がATMに並んでユーロを引き出す様子が各局で流された。 国家破たんやユーロ離脱が、非現実的なものではなくなっている。 

NHKは事態を憂慮し、同志社大学大学院教授・浜矩子を19日放送の週刊ニュース深読みに、信州大学教授・真壁昭夫とともに招き、「ギリシャ危機再燃」を解説させた。 その他の出演者は、タレントゲストに金子貴俊と香坂みゆき、NHKからアナウンサー小野文惠と徳永圭一、国際部記者・神子田章博。 

以下は同番組の、妖艶なエコノミスト・浜矩子語録である。

●ギリシャのユーロ圏離脱は本当にあるか?

(浜)~・~ ギリシャ国内で7割強の人たちがユーロ圏にとどまりたいと思っているのは、やはり出て行ったら何があるか分からないから怖いということがあって、次第しだいに「もしかしたら優等生クラブ(ユーロ圏)にいるよりは劣等生は劣等生なりのペースで行く方が楽かも知れない」思うようになるかも知れません。

更に言えば、「もしもギリシャが言い出しっぺで出て行ってくれたら、次に安心して出ていけるかも知れない」と思う国々もあるかも知れません。

ギリシャの思いは揺れていますし、優等生たちも「劣等生たちが集団的に出て行ってくれたら、我々だけでエリートコースで行けるかも知れないと」という気分が漂っていることはまちがいありません。 

●ユーロ圏はワンサイズブティック

(真壁)~・~ ユーロ圏17カ国は経済の大小強弱は無視して同居しているが金融政策は同じであり、金利は一緒通貨もいっしょですからどこかで無理が出る。

(浜)~・~ そこがそもそも無理だったのです。 実力相応のところでマイペースでやっていくほうが実はヨーロッパはまとまり易いのに、無理やりお仕着せワンサイズ、洋服のサイズが一つしかないブティックのようなものです。 太いも細いもワンサイズ。  

●緊縮か成長か?

(小野)~・~ たとえば、支出を減らしながら交際費を増やすなんてありですか? 成長しようとしたら借金しないと。 浜さん的見解は?

(浜)~・~ オランド(フランス新大統領)さんは、「成長に優しい財政再建を目指しましょう!」という言い方をしております。

一昨年のG20サミットでも「成長に優しい財政再建」と言っておりましたが、これは「胃腸に優しい暴飲暴食」と同じです。

胃腸に優しいことと暴飲暴食を同じ重みを持たせて実行することは無理です。 胃腸に優しくすることを第一に、たまには多少おいしくお酒も飲みましょう、と優先順位を付けなければ・・。 

●ギリシャ危機が世界恐慌に!?

(徳永)~・~ ギリシャ危機が世界恐慌につながることは大げさな言い方ではないと(浜、真壁の)お二人は言っています。お二人の意見の過程は違うのですが結論が同じで、「ある引き金」が起きるとリーマンショックを上回る恐慌になるのではないかとも言っています。その「引き金」とは?

真壁さんは、「国債発行高世界第三位(昨年のレートで残高160兆円)のイタリアがデフォルトに陥る」ことが引き金だと言います。

浜さんは、「ユーロ圏の要である欧州中央銀行の資金供給高は1兆ユーロ、危ないと言われるユーロ圏の国債をどんどん買うことで資金を貸し過ぎると、欧州中央銀行の信用はがた落ち」し、それが引き金だと言います。

(浜)~・~ 一番怖いのは、あのパネルの絵の中で欧州中央銀行が一生懸命汗かいていますが、あの汗が怖い。

汗をかいている段階はいいのですが、あれが血の汗になってきたら・・という感じになってくるわけですね。

本当に体力を犠牲にして不良債権をどんどん溜めて身体をむしばんで頑張っているのが「最早、これまでだろう」という発想が広まれば一気に行ってしまいます。

欧州中央銀行が駄目なら他の中央銀行もダメだろうということにもなりますね、日銀も同じことをやっているわけですから。

そして、リーマンショックの時よりも状況が更に悪いのは、汗をかいていたのはそれぞれの国々の財政だったのですが、(このたびは)財政は汗をかけなくなって、通貨の価値を守る伝家の宝刀たる中央銀行が、伝家の宝刀は抜かないから価値があるのに、抜かれっぱなしで鞘も捨てたというのが現状ですので、もう誰も助けに来てくれる者がいない、という状況で世界恐慌に陥るのです。 

●ギリシャ危機、日本の備えは?

(伊藤)~・~ 日本は、自分たちを守りつつ大もと(ギリシャ)の火を消すべきでは?

(浜)~・~ それは、ギリシャがユーロ圏から出て行くことが決定打であると思います。 78%のユーロ残留希望の人たちも「出て見たらけっこう楽、ぴったりサイズで良いわ!!」となる面があるのです。


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