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黛信彦の時事ブログ

浜矩子語録(145)本丸・ドイツも落城?

2012年01月06日 | 浜矩子語録

 

3日放送のNHK・大人ドリル(新春拡大版)で解説委員・嶋津八生が、2012年のキーワードとして「ユーロの終わり?」という言葉を選び、ユーロ札に関するクイズを出した。

「ユーロ札は7種類あり、それらには非常に古典的な建築物がデザインで使われていますが、はたしてどこの国の建築物でしょう?」と。

解答者はゲストのお笑い芸人・ゴリ。

ゴリの解答はことごとく外れ、嶋津解説委員が正解を明かす。

「ユーロ札に描かれている建築物は、全て現実のものではなく、ヨーロッパの様々な建築物の要素を取り入れた、架空のものです」と。

ユーロ諸国の利害関係から、特定の国の建造物などをユーロ札のデザインに使用することができないのだ。

通貨としてのユーロの出発がこのとおりバラバラであるから、その最後の危機は一体化できず「ユーロの終わりかも知れない」というのである。

 

そのNHKは、嶋津解説委員の予告を証明するかのように、5日放送のワールドWaveトゥナイト『世界はどう動く 信用不安の行方を読み解く』に妖艶なエコノミスト・浜矩子を招き、ユーロの課題を紐説いた。

 

以下、QはNHKキャスターの疑問、Aは浜矩子語録である。

●欧州信用不安、現状は?

Q~・~ ユーロ安をどう見る?

A~・~ ユーロ消滅に向かう本編の恐怖物語が始まる、そういう感じです。

 

Q~・~ 何故このタイミングでユーロ安か?

A~・~ クリスマス休みに入り、逃げ切った感じになっていて積み残した問題が改めてクローズアップされているところです。

なんら、抜本的な解決につながらない、その場しのぎしかできていない、というところで休みに入ったわけで、休みが明けたところでいよいよ本腰を入れてユーロから逃げていく、という展開です。

 

●フランス経済は大丈夫か?

Q~・~ 支援していた側のフランスが揺らいでいます。

A~・~ ヨーロッパではドイツが本丸、それに次いでフランスが支え役になるはず、ということですが、

このフランスが救出を必要とする状況になっていくといえば、いよいよ本丸のドイツしか残ってないという事になります。

本丸に火が付けば、これは落城ですね?こういうふうに定まっているわけですから、その寸前のところまでユーロ圏は来てしまっているという事が、フランスのどうにもならない姿に表れている。

 

財政緊縮化は待ったなし。だけれども、それをやればやるほどそれは、サルコジ(大統領)さんがあれだけ気にしていた雇用問題の状況を悪化させざるを得ない、という状況にフランスが追い込まれたので、いよいよ次はドイツに火が及ぶというところまで来てしまった。

 

●欧州は危機を乗り越えられるか?

Q~・~ フランス経済はどれだけ危機的か?

A~・~ 極めて危機的であると思います。

 

Q~・~ 解決策があるとしたら何か?

A~・~ 私はユーロ圏の設計を抜本的にやり変えるしかないと思います。

私がそこで一つ考えることは、この際ユーロ圏を2ディビジョン制にしてしまったらどうか?

メジャーリーグとマイナーリーグですね。

ユーロA、ユーロBというように2つに分けて、基本的には皆さんユーロ圏に所属してメジャーリーグでプレイすることが大原則。

しかし非常に調子が崩れてきて、ギリシャのようにとてもメジャーリーグではプレイできないとなった国はちょっと一休みするために、マイナーリーグの方に落ちてじっくり体質改善に取り組む。

 

今まで全然考えてもみなかったかたちを新たに作らないと、とても今までのような状態ではユーロ圏を存続させることはできないと、私は思いますね。

不可能を可能にする考え方がないと(欧州危機を乗り越えるのは)無理だと思います。

 

●アイルランドは2010年の危機時の財政赤字がGDP比30%台だったが、2012年見込みは10%以下と大きく改善。欧州信用不安の行方は?

Q~・~ アイルランドの成功例の“緊縮策”はユーロ危機脱却の処方箋になるか?

A~・~ そうは問屋が卸しません。

アイルランドの成功の背景は、その国民性と歴史です。歴史に根差す国民性と言った方が正しいかもしれません。

その国民性は一言でいえば「欲しがりません、勝つまでは!」というふうに一朝有事でまとまるところがあり、それは歴史的に貧しく食べるものはジャガイモしかない、そのジャガイモも非常に痩せた土地から育てなければいけないというようなことに耐えてきた、だからこそ、どんどんアメリカに向かって移民で出て行った、

 

そういう背景があるので「豊かさを手に入れるためならば、そこはグッと我慢しよう!」という呼びかけがあれば皆で呼応する、というものがアイルランドをとりあえずここまで引っ張ってきたという事です。

 

Q~・~ ということは、財政再建がうまく行くかどうかというところで、ファジーなものに因らざるを得ない?

A~・~ そこが経済社会の面白いところで、すべて人間の営みですから、どういう人間性がそこにあるか?

人間性を形づくる、言ってみれば、サイズが一つしかない洋服を常に買わなければいけない、太いも細いも高いも低いも、みんな同じワンサイズのものを着なければいけない、選択肢なしの世界、これって、誰もハッピーになれませんよね?

自分にぴったりサイズの物を選ぶことが許されないのがユーロ圏。

 

アイルランドの場合は、ぴったりサイズはないのだけれども(ユーロの)お仕着せに対して我慢してきていれば維持できる、だから頑張る。

 

ユーロ圏を2リーグにしたらどうかと申しましたけれども、まさに、お仕着せワンサイズから何とか脱却する道にならないかと思っているわけです。

 

一つの通貨を共有しながらもそれぞれが身の丈に合った展開ができる方に向けて、通貨はひとつだから金利も一つでなければだめ、財政赤字も一律GDP比3%でなでなければ許されないというような、身の丈が違う国々に一律のルールを適用するような事をやっているから危機的な状況に陥ってしまっているわけです。

 

身から出た錆的側面があるので、思い切って設計を変えるしか生き残れる道はないと私は考えます。

「みんなアイルランドになれ!」と言っても無理なのですから。

 

●どうなる?世界経済

Q~・~ 2012年の世界経済、ヨーロッパ経済からどう見る?

A~・~ 「今のヨーロッパは世界経済の縮図。グローバル経済も同じようなことが出てくる。一つの地球経済のルールに従わなければいけないのか?」という問題になってくるわけで「自分はこういうふうになって行きたい。地球経済の流れはこうだから、そっちに合わせなければいけないのか?」という悩みを各国が背負い込んでいる。

 

その結果として出てくる、ある怖いことは「こんな一つの地球に従うのは嫌だ!」というので、地球経済の一部を自分のために切り取ってしまうというふうに国々が思い出す、国々が自分のサバイバルのために地球経済を切り刻んでいくことになれば怖いです。

 

そのために、各国が保護主義的な政策を打ち出す、たとえばTPPのように一定の領域を抱え込んでその中だけで甘い汁を吸いましょう、というのが典型です。

 

Q~・~ 各国が分断されていく、そんな中で円高も含めた日本の立ち位置は?

A~・~ 日本は世界で最大の債権国。そういう国は少し鷹揚に構えて、「地球経済を分断することはやめよう!」と言う、そして外に向かって開かれた姿を示す位置にあると思います。

 

Q~・~ 円高下でも対応は変えない?

A~・~ いまや、円高は恐れるに足らず

円高であることは、債権大国日本の姿に憧れているからカネが日本に集まってきている訳ですから、それをテコに、新しい、大人らしい、成熟経済らしい展開が求められている日本だと思います。

 

Q~・~ ユーロ安も悲観的に捉えるべきではない?

A~・~ 過去の日本のイメージに振り回されていてはなりません。

円の購買力をどうやって日本人たちのため世界のために使えるかを考えれば世界が見えてきます。

 


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1 コメント

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『勤勉&実直』なぉ友達? (毒吐居士)
2012-01-12 09:23:35
 浜先生(元来は教化を受けた相手を指す?)、
いつも『正論』を通して下さって、有難うござ
います。
 亡父の母校【旧・3高】の跡を継ぐ(?)論客
として、応援させて頂いて居ます。
 因みに。当家『旦那寺』も、【知恩院サン】
ですし、祖父は「上京区・紫竹牛若町」在住の
『帝國陸軍』の「尉官」だったソウです。
 或いは。「今」は無いかも知れませんが嘗て
 は《羽振》も良かったトィウ【藤林家】。
 が。亡父は『東京・帝大』で何故か【サル
トル師】に目覚めて了い、亡くなるまで「反
裕仁」陛下で、通して居ました。ヒト夫々?
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