先のワシントン金融サミット、EU議長国であるフランス・サルコジ大統領は、EUの存在感を示したかに見えたが、それは分裂の矛盾を孕むEU諸国をなんとか纏めたい必死の形相の表れだった。
また、次回の金融サミットが09年4月にロンドンで開催されることになったことについて日本のメディアは、「第二回目は日本で開催したい」と発言していた麻生太郎首相や日本の国際的影響力不足を一斉に唱えたが、このことも「EU域内で開催して、統合欧州の団結心を取り戻したい」英仏などの切迫的危機感に、各国が同調したものだった。
妖艶なエコノミスト・浜矩子は、7日付毎日新聞“時代の風”欄に、「結束乱れる統合欧州――金融激震で脆弱さ露呈」を寄稿した。
グローバル・矩子は、「EUは、欧州中央銀行(ECB)への監督権限集中を行なうか、それを嫌うならばユーロ圏解散という事態になる」というのである。
~・~・~ リーマン・ブラザーズの倒産とAIGの国家管理化の影響で欧州連合(EU)域内の主要銀行が大損失を出し、資金繰り難に陥った。放置すれば、各国津々浦々の銀行が取り付け騒ぎに見舞われる。
ここで、いち早く動いたのがアイルランド政府だった。自国の国内銀行6行に関して、一律に預金全額保護の方針を打ち出した。迅速で思い切った対応だった。それにアイルランドの国民と金融業界は大いに喜んだ。
ところが、アイルランドのこの対応は、EUの他の加盟国から大ひんしゅくを買ったのである。
統合された金融市場の一員である以上、手前勝手は許されない。それが金融市場統合を進める上での暗黙裏の前提だったはずである。
だが、今回のような切迫した状態になれば、誰もが暗黙裏の前提のことなど、ご都合主義的に忘却する。抜けがけと自分さえ良ければ主義が横行することになるのである。
抜けがけの被害者とならないためには、自分もまた抜けがけするしかない。
この論法でアイルランドに続いてドイツも自国全行に関する預金全額保護方針を打ち出した。
統合欧州の中心的存在であり、経済規模もEU内最大のドイツであるから、この単独行動にはアイルランドの場合にも増して非難の声がEU中から上がった。
さすがにこれではまずいという認識が広まり、10月第2週に入るところでEU各国は金融救済のやり方に関する共通の原則づくりに踏み切った。その中で預金保護に関しても『EU全加盟国は向こう1年間にわたって最大5万ユーロまでの預金を全額保護する』という合意が成立した。
ところが、この合意には『ただし、加盟国の中には全額保護の上限を10万ユーロまで引き上げる意向の国々もある』というおまけの一文がついている。完全な抜けがけへの道は封じたが、部分抜けがけの余地はまだある。これでは、根本的な解決ではない。各国の利害が錯綜する中で、極めて中途半端な対応にとどまってしまった。統合欧州の内部団結も、結局はこの程度のものなのである。
今回のことで、ECBに金融監督権限がなく、統一的管理体制が確立していないことから、抜けがけが野放しになることが浮き彫りにされた。通貨を統合し、市場を統合しながら、監督権限は一本化されていない。この体制には明らかに矛盾がある。
この矛盾を彼らは重々承知しているが、解消しようとすると大変だ。
ECBへの監督権限集中か、それがいやならユーロ圏は解散ということにならざるを得ない。
だから、曖昧な暗黙領域に棚上げされている。あいまいさは、融和維持のための知恵でもある。だが、今回のような金融経済波乱が生じると、あいまいさに潜む脆弱さが表面化する。 ~・~・~
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また、次回の金融サミットが09年4月にロンドンで開催されることになったことについて日本のメディアは、「第二回目は日本で開催したい」と発言していた麻生太郎首相や日本の国際的影響力不足を一斉に唱えたが、このことも「EU域内で開催して、統合欧州の団結心を取り戻したい」英仏などの切迫的危機感に、各国が同調したものだった。
妖艶なエコノミスト・浜矩子は、7日付毎日新聞“時代の風”欄に、「結束乱れる統合欧州――金融激震で脆弱さ露呈」を寄稿した。
グローバル・矩子は、「EUは、欧州中央銀行(ECB)への監督権限集中を行なうか、それを嫌うならばユーロ圏解散という事態になる」というのである。
~・~・~ リーマン・ブラザーズの倒産とAIGの国家管理化の影響で欧州連合(EU)域内の主要銀行が大損失を出し、資金繰り難に陥った。放置すれば、各国津々浦々の銀行が取り付け騒ぎに見舞われる。
ここで、いち早く動いたのがアイルランド政府だった。自国の国内銀行6行に関して、一律に預金全額保護の方針を打ち出した。迅速で思い切った対応だった。それにアイルランドの国民と金融業界は大いに喜んだ。
ところが、アイルランドのこの対応は、EUの他の加盟国から大ひんしゅくを買ったのである。
統合された金融市場の一員である以上、手前勝手は許されない。それが金融市場統合を進める上での暗黙裏の前提だったはずである。
だが、今回のような切迫した状態になれば、誰もが暗黙裏の前提のことなど、ご都合主義的に忘却する。抜けがけと自分さえ良ければ主義が横行することになるのである。
抜けがけの被害者とならないためには、自分もまた抜けがけするしかない。
この論法でアイルランドに続いてドイツも自国全行に関する預金全額保護方針を打ち出した。
統合欧州の中心的存在であり、経済規模もEU内最大のドイツであるから、この単独行動にはアイルランドの場合にも増して非難の声がEU中から上がった。
さすがにこれではまずいという認識が広まり、10月第2週に入るところでEU各国は金融救済のやり方に関する共通の原則づくりに踏み切った。その中で預金保護に関しても『EU全加盟国は向こう1年間にわたって最大5万ユーロまでの預金を全額保護する』という合意が成立した。
ところが、この合意には『ただし、加盟国の中には全額保護の上限を10万ユーロまで引き上げる意向の国々もある』というおまけの一文がついている。完全な抜けがけへの道は封じたが、部分抜けがけの余地はまだある。これでは、根本的な解決ではない。各国の利害が錯綜する中で、極めて中途半端な対応にとどまってしまった。統合欧州の内部団結も、結局はこの程度のものなのである。
今回のことで、ECBに金融監督権限がなく、統一的管理体制が確立していないことから、抜けがけが野放しになることが浮き彫りにされた。通貨を統合し、市場を統合しながら、監督権限は一本化されていない。この体制には明らかに矛盾がある。
この矛盾を彼らは重々承知しているが、解消しようとすると大変だ。
ECBへの監督権限集中か、それがいやならユーロ圏は解散ということにならざるを得ない。
だから、曖昧な暗黙領域に棚上げされている。あいまいさは、融和維持のための知恵でもある。だが、今回のような金融経済波乱が生じると、あいまいさに潜む脆弱さが表面化する。 ~・~・~
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