木曜の夜 万事快調 あなたの目に浮かんでいる表情以外はね
話をしても あなたは退屈そう
なにか言いたいことがあるんでしょ
それをあなたは あたしの友だちの前でぶちまけて 恥をかかせる
だからあたしは あなたが嫌がる声色で こんな風に言ってみる
「結構なアドバイスどうも ダーリン。ほら、もう一本ビールいかが?」
するとあなたは あたしをあばずれよばわり
あたしたちと一緒にいる人は 誰でも恥ずかしい思いをさせられる
でもあたしは文句はいわないわ
あたしの指先は 土台のひび割れたところをつかんでいる
手を離してしまえばいいんだろうけど できやしない
あなたとけんかをするたびに こんなの正しくないって思う
あなたがうろたえると あたしは微笑む
忘れてしまった方がいいんだろうけど できやしない
「もっとレモンを食べろよ」とあなたは言う あたしが辛辣(bitter)すぎるからって
あたしは「あなたの友だちと一緒にいるほうがいいわ。その方が楽しいもの」と言ってみた
そう 子どもじみてたわね あなたはひどく怒った
ちょっと怖かったのは確か
でも あなたに嫌みを言うのがスリリングでたまらないの
あたしの指先は 土台のひび割れたところをつかんでいる
手を離してしまえばいいんだろうけど できやしない
あなたとけんかをするたびに こんなの正しくないって思う
あなたがうろたえると あたしは微笑む
忘れてしまった方がいいんだろうけど できやしない
青白い顔色をしてるわ そんなに落ち込んでしまうなんてびっくりね
もうあなたの顔なんてみたくない こっちまで気分が悪くなるから
あなたは気分を悪くして あたしのジョギングシューズに吐く それ 昨日買ったばかりよ
ああ もうそんなことに煩わされたくなんかない
明日の朝までにここを出てゆくわ
わざわざ暖房装置のスイッチをいれるのもうんざりだし
もうそんなことに縛りつけられていたくない
あたしの指先は 土台のひび割れたところをつかんでいる
手を離してしまえばいいんだろうけど できやしない
あなたとけんかをするたびに こんなの正しくないって思う
あなたがうろたえると あたしは微笑む
忘れてしまった方がいいんだろうけど できやしない
- Kate Nash「Foundations」(2007)
(Translated by Andy@音楽観察者)
この間、デビューアルバムの感想を書いたケイト・ナッシュの曲。「ポスト・リリー・アレン」の書く詞がどんなものか興味を持つ方のために訳してみた。
相手に不満を持ちながらも、ひとりになるのが怖くて別れに踏み切れない心理(結局最後には別れを決意することになるんだけど)をうまく描きだした詞だと思う。
不満点のディテールはいちいちリアルなのに、リフレインでは「My fingertips are holding onto the cracks in our foundation(土台部分のひび割れを指でつかんでいる)」という堅めの比喩を持ってきているところが良い。
訳していて困ったのは「intelligent input,darlin'」という言葉。
ちょっと調べてみたもののわからなかったので雰囲気で訳してしまったけれど、ほんとはどう訳すべきなのか、どなたか教えてください。
※10/16追記
「intelligent input」についてコメント欄でご教示いただいたので、それを参考に訳を直してみました。(当初訳は「インテリジェントな入力をしたらどう ダーリン どうしてもっとビールを飲まないの?」でした。)
ご意見をいただいた方々、ありがとうございました。
原詞はここ参照。
「Later with Jools Holland」での演奏。
話をしても あなたは退屈そう
なにか言いたいことがあるんでしょ
それをあなたは あたしの友だちの前でぶちまけて 恥をかかせる
だからあたしは あなたが嫌がる声色で こんな風に言ってみる
「結構なアドバイスどうも ダーリン。ほら、もう一本ビールいかが?」
するとあなたは あたしをあばずれよばわり
あたしたちと一緒にいる人は 誰でも恥ずかしい思いをさせられる
でもあたしは文句はいわないわ
あたしの指先は 土台のひび割れたところをつかんでいる
手を離してしまえばいいんだろうけど できやしない
あなたとけんかをするたびに こんなの正しくないって思う
あなたがうろたえると あたしは微笑む
忘れてしまった方がいいんだろうけど できやしない
「もっとレモンを食べろよ」とあなたは言う あたしが辛辣(bitter)すぎるからって
あたしは「あなたの友だちと一緒にいるほうがいいわ。その方が楽しいもの」と言ってみた
そう 子どもじみてたわね あなたはひどく怒った
ちょっと怖かったのは確か
でも あなたに嫌みを言うのがスリリングでたまらないの
あたしの指先は 土台のひび割れたところをつかんでいる
手を離してしまえばいいんだろうけど できやしない
あなたとけんかをするたびに こんなの正しくないって思う
あなたがうろたえると あたしは微笑む
忘れてしまった方がいいんだろうけど できやしない
青白い顔色をしてるわ そんなに落ち込んでしまうなんてびっくりね
もうあなたの顔なんてみたくない こっちまで気分が悪くなるから
あなたは気分を悪くして あたしのジョギングシューズに吐く それ 昨日買ったばかりよ
ああ もうそんなことに煩わされたくなんかない
明日の朝までにここを出てゆくわ
わざわざ暖房装置のスイッチをいれるのもうんざりだし
もうそんなことに縛りつけられていたくない
あたしの指先は 土台のひび割れたところをつかんでいる
手を離してしまえばいいんだろうけど できやしない
あなたとけんかをするたびに こんなの正しくないって思う
あなたがうろたえると あたしは微笑む
忘れてしまった方がいいんだろうけど できやしない
- Kate Nash「Foundations」(2007)
(Translated by Andy@音楽観察者)
この間、デビューアルバムの感想を書いたケイト・ナッシュの曲。「ポスト・リリー・アレン」の書く詞がどんなものか興味を持つ方のために訳してみた。
相手に不満を持ちながらも、ひとりになるのが怖くて別れに踏み切れない心理(結局最後には別れを決意することになるんだけど)をうまく描きだした詞だと思う。
不満点のディテールはいちいちリアルなのに、リフレインでは「My fingertips are holding onto the cracks in our foundation(土台部分のひび割れを指でつかんでいる)」という堅めの比喩を持ってきているところが良い。
訳していて困ったのは「intelligent input,darlin'」という言葉。
ちょっと調べてみたもののわからなかったので雰囲気で訳してしまったけれど、ほんとはどう訳すべきなのか、どなたか教えてください。
※10/16追記
「intelligent input」についてコメント欄でご教示いただいたので、それを参考に訳を直してみました。(当初訳は「インテリジェントな入力をしたらどう ダーリン どうしてもっとビールを飲まないの?」でした。)
ご意見をいただいた方々、ありがとうございました。
原詞はここ参照。
「Later with Jools Holland」での演奏。
訳詞がお役に立てて幸いです。
ずいぶん前に訳したものなので、これだけ時間が経って誰かの役に立つとは思ってもみませんでした。嬉しいです。
「Must」の訂正、ありがとうございます。なるほどと思いました。学校の英語教育のせいか、mustはつい「~せねばならない」と訳してしまいがちですね。
ちなみに、intelligent inputの件はもう、解決されたようですが、lemonの件について、小さな訂正をさせていただきます。
Must の使い方の違いですが、『You must eat a lot of lemons』という表現は、『レモンをたくさん食べなさい』という意味ではなく、「君、レモンをたくさん食べるだろう。だからあなたはあんなに辛辣(bitter)な人。』レモンは苦いというより、酸っぱいという事は事実ですが、今回はレモンで中和することは、多分関係ないと思います。
"You must be tired" や ”I must be crazy" と同じ ”must" ですね。
では、
本当にありがとうございました!ブログまた拝見させていただきます!
私は「創造説」にとらわれすぎてしまいました(爆)。
レモンのくだりも、ちょっと気になっていたのですが、腑に落ちました。お酒の飲み方から来てるのでしょうか。
みなさんの意見それぞれに「なるほどなあ」と思うところがあり、それを参考に訳を直してみました。いかがでしょう。
>がぶるさん
なるほど。そこで迷うのは「もっと面白いこといってよ」なのか「(皮肉っぽく)面白いこといってくれてどうも」なのか、なんですよね。当初訳はどっちかというと前のタイプでした。
>タイコウチさん
「ずいぶん知的なセリフね、あなたにしては」というニュアンス、そうかもしれません。サビの言葉の使い方といい、わざと堅い単語を持ってきてるんでしょうか。
この曲に限らず、彼女の詞はどれもなかなか面白いですよ。曲の方がちょっと追いついてきていない感はありますが。
>matsumotoさん
明解なご教示ありがとうございます。
「そうね、結構なアドバイスどうも。ほら、もう一杯ビールでも飲んだらどう?」という訳だと、前後の文脈とも矛盾せずにつながりますね。納得です。
レモンの件もおっしゃるとおりだと思います。ただ日本語にそのまま訳すとわけわからなくなるんですよね。というわけでそっちもちょっと追記してみました。
あと、bitterすぎるからレモンをたくさん食えというのは、bitterなのをすっぱいレモンで中和する(?)というような洒落で言っているんだと思いますが、どうでしょう。うまく訳すのはなかなか難しいですが。
この歌詞の文脈では、心ない彼の言葉に、「ずいぶん知的なセリフね、あなたにしては」というようなニュアンスなのかな、なんて思いました。
たしかに、生活感のあるリアルな描写と、比喩的なイメージの広がるリフレインの対比が面白いですね。