○THE VELVET UNDERGROUND & NICO「UNRIPENED」(1966/2007)
ヴェルヴェッツのファーストアルバム「THE VELVET UNDERGROUND & NICO」の最初期ヴァージョンを収めたCD。いわゆる「Norman Dolph Acetate」と呼ばれるものである。当初この形でテスト盤が作成されたものの、レコード会社にリリースを拒否されたといういわくつきの音源だ。「UNRIPENED(熟していない)」というタイトルもそこからきているのだろう。つまり最終形になっていないということ。だからバナナも青いと。
この音源が発見された経緯については一番下にリンクを張っておいたのでそれを見ていただくとして、まあ、ありていにいえばブートなんだよね、これ。でもなぜかamazonやHMVなどで、公式盤同様に入手することができる。
収録曲は9曲。そのすべてが公式盤とは違うテイクまたはミックスである。公式盤の中で最もポップな2曲「Sunday Morning」「There She Goes Again」は収録されていない。そして曲順も大幅に違う。いきなり「European Son」で始まり、「The Black Angel's Death Song」が続く。ちょうど公式盤の曲順をさかさまにたどるような感じだ。その結果、印象は当然ダーク&ヘヴィーなものになる。
これが本当にバンドが当初企図した作品の形だったのだとしたら、なかなかにすごいことだと思う。だって、このままでは絶対にリリースできなかっただろうから。なんでもありの現在ならともかく、1966年だよ。まだ「サージェント・ペパーズ」すらリリースされてない時代なんだよ。
なにはともあれ、ヴェルヴェッツ好きならばとりあえずおさえておいたほうがいい音源ではある。アセテート盤からの盤起こしなのでスクラッチノイズもところどころで入るけれど、思ったほど音質も悪くなかったし。
なお、公式盤と聴き比べをしてみたのでその感想を以下に記しておく。比較に使った音源は、2002年にリリースされた「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ<デラックス・エディション>」のディスク2(モノ・ヴァージョン)である。
01. European Son
ライナーノーツには「Completely diferrent take」とある。曲が曲だけにわかりにくいのだが、ガラスの割れるSE(開始後約1分)直後のギターフレーズは公式盤と明らかに違うので、なるほどそうかなあとも思う。
しかし公式盤のギターフレーズは、「UNRIPENED」ヴァージョンの方でも開始2分ほどの部分に登場するし、曲全体の雰囲気やルー・リードの歌い方にはほとんど差がないように感じられるので、もとは同テイクで、編集及びミックスが違うだけなのかもしれない。「UNRIPENED」ヴァージョンの方が公式盤より1分ほど長いというのも、その推測を裏付けるように思われる。
02. The Black Angel's Death Song
別ミックス。ただし、これも曲が曲だけに、はっきりとした違いはわかりにくい。
03. All Tomorrow's Parties
別ミックス。公式盤ではニコのヴォーカルがダブルトラックなのに対し、「UNRIPENED」の方はシングルトラックである。そのせいか公式盤より生々しく感じられる。
04. I'll Be Your Mirror
別ミックス。ニコのヴォーカルにかかっているエコーが少ない。曲がフェイドアウトする直前のバックコーラスもほとんど聞こえない。
05. Heroin
別テイク。ルーの歌い方、ギターリフ、ドラムスのたたき方などかなり違う。完成度は公式盤テイクの方が高いと思うが、これはこれで興味深い。公式盤テイクより1分ほど短い演奏。
06. Femme Fatale
別ミックス。違いはバックコーラス。公式盤ではルーの声が前面に出ているが、「UNRIPENED」ヴァージョンの方はファルセットが前面に出ていてちょっと可愛らしい感じだ。
07. Venus In Furs
別テイク。ルーの歌い方は公式盤よりなげやりな印象。これも完成度は公式テイクの方が上か。
08. I'm Waiting For The Man
別テイク。これははっきりわかる。ドラムスが入っていないし、公式テイクではよく聞こえるピアノの音も控え目。ブルースっぽいギターソロも大きな違い。ルーの歌い方もダルめだ。デモテイクのように聞こえなくもない。
09. Run Run Run
別ミックス。公式テイクよりガレージっぽく響く。しかし、この曲で終わるってのは変な感じだね。
(参考記事)
◆「87円のレコードが1800万円で落札 - 2枚しか現存しないテスト盤」(産経新聞)
◆「THE MYSTERY OF THE VELVET UNDERGROUND'S "REAL FIRST RECORD"
(AND HOW THE ONLY EXISTING COPY WAS BOUGHT FOR 75 CENTS)」
アセテート盤を購入した当事者に依頼されて音源の正体を調査した人物による詳細な手記。
おまけ。YouTubeにあった映像。当時のフィルムに「Venus in Furs」をかぶせたもの。
Au revoir Simone ってどーですカニ?
Andyさん好みカシラ?
ロキノンで記事読んで、聴いてみたいと思っていたグループでした。なかなかいいっすね。自然体ぽくて。
例のごとくMySpaceで他の曲も試聴してみましたがよかったので、CD探してこようかなあ。
しかし次から次へと聴きたい音楽が出てくるのでうれしい反面たいへんですー。