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渡航後の患者がマラリアである確率

2011-01-25 | Malaria
マラリア確率

マラリア流行地での14研究に関するメタ解析
症状で診断することには限界がある。
脾腫の尤度比(LR: likelihood ration)は3.3 [95%CI 2.0-4.7]
肝腫大の尤度比は2.4 [95%CI 1.6-3.6]

輸入マラリアに関する7つの研究
発熱による陽性尤度比は5.1 [95%CI 4.9-5.3]
脾腫による陽性尤度比は6.5 [95%CI 3.9-11.0]
咳嗽による陽性尤度比は0.04 [95%CI 0-0.56]
下痢による陽性尤度比は0.11 [95%CI 0.01-1.90]
高ビリルビン血症(>1.2mg/dL)による陽性尤度比は7.3 [95%CI 5.5-9.6]
血小板減少(<150,000/μL)による陽性尤度比は5.6 [95%CI 4.1-7.5]

米国のマラリア統計
2008年に約1300症例の報告
熱帯熱マラリアが69%, 三日熱マラリアが25%
アフリカでの罹患が71%, アジアでの罹患が22%
72%の症例でマラリアの予防内服がない状態
死亡症例は2例


マラリア非流行地域における旅行と関連した健康問題に関する30,000件以上のデータベースから報告
サハラ以南での相対危険度(RR: relative risk)は208, オセアニアは77, 南アジアは54, 東南アジアでは12

ベルギーでの報告
マラリア流行地域から帰国した発熱患者1619人において、マラリアの罹患率27% (435/1619) [Bottieau et al, 2007]

スイスでの報告
マラリア流行地域から帰国した発熱患者336人において、マラリアの罹患率29% (97/336) [D’Acremont et al, 2002]


臨床応用
西アフリカから帰国後に発熱した患者が脾腫を認めた
検査前確率30%, 脾腫の尤度比を6.5して計算する
検査前オッズが3/7で、Likelihood Ratioが6.5だとすると、検査後オッズは3/7 x 6.5 = 2.7857
これを確率で表せば2.7857/1+2.7857 = 0.74となり
本症例がマラリアである確率は74%


2X2の表において下記の条件であれば
a: 検査陽性かつ疾患陽性
b: 検査陽性かつ疾患陰性
c: 検査陰性かつ疾患陽性
d: 検査陰性かつ疾患陰性

Likelihood Ratio of a Positive Test = [a/(a + c)] / [b/(b + d)]
Likelihood Ratio of a Negative Test =[d/(b + d)]/ [c/(a + c)]
Sensitivity = a/(a + c) x 100 (%) False negative rate = c/(a + c) x 100 (%)
Specificity = d/(b + d) x 100 (%) False positive rate = b/(b + d) x 100 (%)
100 - Sensitivity = False negative rate
100 - Specificity = False positive rate

オッズと確率の関係式
Odds = Probability/(1 - Probability)
Probability = Odds/(1 + Odds)


Reference:
JAMA. 2010 Nov 10;304(18):2048-56. Epub 2010 Nov 5.

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