蜜柑のつぶやき ~演出家の独り言~

NPO法人劇空間夢幻工房の演出家/青木由里の日々の呟き。脚本執筆・役者・ワークショップ講師も兼業する舞台人日記♪

劇空間夢幻工房 第17回 劇団本公演「星のない町 ぼくの町」

NPO法人劇空間夢幻工房 第17回 劇団本公演
タイトル 『星のない町 ぼくの町 ~ゴミ人間プペル奇譚~』
脚本・演出 青木由里
原案 『えんとつ町のプペル』西野亮廣 著
出演 青木賢治/栗生みな/坂本真由美/青木淳/井田亜彩実/鈴木一衣/導星ゆな 他

日時 2022年3月5日(土)18:00~    2022年3月6日(日)11:00~/16:00~
会場 須坂市 メセナホール 大ホール
チケット予約フォーム:https://www.quartet-online.net/ticket/mugen_puperu

上記公演は好評のうちに幕を閉じました。
ご来場を賜りました皆様、ご尽力を賜りました皆様に、心より御礼を申し上げます!

見えない力

2012年05月11日 17時21分12秒 | 日記
今週は、月曜日から読書と台本構成の熟考で
自宅に閉じこもり、左脳と右脳がフル活動♪

昨日、久しぶりに外出。
午後から、オープンエア声楽隊に初参加の意思表明をしてくださった
声楽家集団「土の会」のWさんとお会いした。
ご紹介下さったのは、同じく「土の会」所属のMさん。
こうして、声楽を中心に長年活動されている皆さんに
オープンエアに参加していただけるような環境が
徐々に整って来たことが、とても嬉しい。

オープンエアの目的の一つは
長野在住の芸術家の皆さんとのコラボ。

  演劇は総合芸術である

と考え、2001年から創作し始めた野外劇である。

ようやく認知されるようになってきた…

更に芸術性の高い舞台を提供できるよう頑張らねば!

Wさんも、Mさんと同様、大変魅力的で
これまでもオペラのソリストや聖歌隊として
数々の舞台をご経験されて来た。
歌声を聞かせて頂くのが、今から楽しみ♪

夜は、市民劇場例会にて観劇。

今月は、無名塾!
あの仲代達矢氏が率いる劇団だ。

仲代氏に関しては、30年位前に観た映画「二百三高地」での
フレームからはみ出そうな表情と演技を観て

  凄い役者さんがいる…

と思ったことを、未だに鮮明に覚えている。

無名塾は、俳優として、人間としての磨きをかけ
品格の高い芸質を備えた役者を育てることを目的として
寝食を共にしながら真摯に演劇創作に取り組んでいる劇団である。

若い頃、本気で無名塾に入りたい!と思ったことがあったっけ。

市民劇場の例会としては、久しぶりの無名塾。
なので、とても楽しみにしていた。
ただ、仲代さんは既に80歳とご高齢のため
そこだけが若干心配だったが…

作品名  Hobson's Choice-ホブソンの婿選び-
作    ハロルド・ブリッグハウス
訳・演出 丹野郁弓
出 演  仲代達矢 渡辺梓 樋口泰子 松浦唯 ほか

内容は…

舞台は、1886年のイギリスの片田舎。
靴屋を営むホブソン一家が、婚期を逃した長女の結婚騒動を経て
大きく変化をしてく人間模様を描いている。
1886年はイギリスのビクトリア時代後半。
商人たちが力を持ち始め、そのエネルギーが産業革命の旗印となり
その後の大英帝国経済圏へと発展していく、そんな時代。
妻に先立たれ、飲んだくれの頑固親父ホブソンに
反旗を翻した娘達と職人ウィリー…

一言で言うと…

  良い作品を観させていただいた!

観終わった後の充足感…観劇の醍醐味です。

体調が心配だった仲代氏は、愛嬌がありコミカルで軽やか
全く年齢を感じさせない演技だった。
善悪が混同し、理不尽極まりない父親だけど
愛すべきキャラクターとして、つくられていた。

板の上には、目には見えない力が存在している…
そんなことを思った。

観劇前に台本を読んだ時は

  理不尽で頑固者の飲んだくれ親父

というイメージだったが、良い方に裏切られ
それがとても心地よかった。

翻訳物は、違和感が残ることが多いが
今回は、その点が殆ど気にならず

 事なかれ主義、見て見ぬふり

が横行している現代において
この作品を提出した意味は深い。

主人公の娘マギーは、大変意思が強く
自分の未来ビジョンを明確に持ち
それを行動に移していく。
やり方はかなり強引だけど
状況を変えたいと本気で思えば
摩擦も覚悟で取り組む必要があるのだろう。
大切なのは、周囲の…家族の幸せを忘れないこと。
一見エゴに見えるマギーの行動の裏側には
父と妹たちへの深い思いがある。

自分の幸せがみんなの幸せ…
みんなの幸せが自分の幸せ…

どっちが先かで論争になりそうだけど

自分の幸せが周囲の幸せに繋がるのか
周囲の幸せが自分の幸せに繋がるのか

と、自問自答してみると、今の自分の状態がわかるかもしれない。

どちらにしても、相手のこと、あるいは
近しい人に思い馳せることができるか否かで
状況や出来事は変化していくんじゃないかな。

無名塾は、若手メンバーも育っていて、今後も楽しみな劇団
舞台芸術がおかれた日本の現状は厳しいが
諦めず、今後も継続していって頂きたいと心から願う。

役者は、役者である前に人間である。
人間として、どうであるか…
ここが重要なポイントだと私も思う。

舞台は、その人が見えちゃうんだよね。

弱い自分と向き合い、悪戦苦闘しながらも
くじけず努力を積み重ねていくにつれ
舞台での存在感が増していく―

昨日は、充実した一日でした♪