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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

たった一頭になってしまったオオムラサキ (妻女山里山通信)

2011-08-26 | アウトドア・ネイチャーフォト
 長雨が止んだのを見計らって久しぶりに樹液バーを訪れてみました。鬱蒼とした緑と蒸し暑さは夏のままですが、よく見ると小さな秋が散見されます。汗を拭きつつ樹液バーに辿り着いたのですが、あんなに賑わっていたのに全くだれもいません。二十数頭のオオムラサキ、それを上回る数のアオカナブンとカナブン。ミヤマカミキリにルリボシカミキリ。ルリタテハやクジャクチョウ、サトキマダラヒカゲも。

 オオスズメバチは、8月中旬頃から、次世代を託すオスバチと少し遅れて新女王バチの卵を産み付けます。長雨の後で巣の修理や、新女王バチ、オスバチの卵の世話で忙しいのでしょうか。オスバチと新女王バチは、9月中旬から10月下旬頃羽化します。秋口からは大量の餌が必要になるため、樹液バーはほとんどオオスズメバチに占領されます。ちょうどキノコ狩りシーズンの頃が最も攻撃的で危険なのです。ハチに刺されて亡くなる人は、毎年20人~50人程度にのぼり、1984年は73人の方が犠牲になりました。熊による被害よりずっと多いのです。

 天敵である熊と同じ色とうことで(諸説あり)、黒い服や黒髪のままは厳禁です。紺色や焦げ茶もおすすめできません。明るい色がよいといわれていますが、私は経験的にこの季節の葉の色と同じ緑がいいと思います。一種のカモフラージュです。ただ緑だと紫外線が見えるチョウなどには、葉と間違えるのか、よく留まられます。

 オオスズメバチにまとわりつかれてカチカチと威嚇音を出されたら、巣が近くにあるので速やかに立ち去りましょう。もっと攻撃的なときは、いきなり頭などに体当たりしてきます。三回経験がありますが、それは小石を頭に投げられたような強い衝撃でした。もっと危険な場合は、いきなり刺されます。飛行しているオオスズメバチを見たら、木の陰に隠れるなどして飛行ルートをよく見る事です。薮に入って行ったら、そこに巣がある可能性があります。目を狙ってくるので、キノコ狩りやトレッキングにはポリカーボネートの保護グラスをおすすめします。

 しばらく樹液バーの様子見ていましたが、訪れるものは皆無でした。ハエさえ訪れません。それでも、ヒカゲチョウやコミスジは数頭舞ってきました。でもそれだけです。クヌギの高い梢を見上げても、あの大きな羽音を立てて飛び回っていたオオムラサキの姿は見えません。森はすっかり寂しくなりました。だれも訪れなくなった樹液バーは、樹液が酵母菌で発酵して甘く白い結晶になっていました。これは人が舐めても甘くて美味しいのです。
 さて、このひとりぼっちになってしまったオオムラサキのメスですが、お腹が大きいので卵はあるようです。もし交尾が済んでいれば後は産卵するだけ。たくさん卵を産んでくれるといいのですが。先に生まれた卵は、すでに孵化しているものもあるはずです。

 早々に帰路につくと、倒木に粘菌のエダナシツノホコリが成長していました。苔むした倒木には、キララタケの幼菌が。夏キノコの大きなハナビラタケが、黴びていました。9月に入ると秋のキノコのシーズンが始まりますが、この長野県北部にも3月にセシウムが降下しました。まだ芽吹き前だったので、降下したセシウムはほとんど地上の枯葉上に落ちたはずです。この枯葉を集めて堆肥を作れば、濃度が濃くなるのは当然です。キノコは種類にもよるようですが、放射性物質を吸収し易いので、厳重な検査が必要だと思います。チェルノブイリ以後のフィンランド食品安全局の見解では、放射性セシウムは、きのこを水に漬けたり茹でこぼしたりすることで除くことが可能であり、この工程で70~90%のセシウムが削減できるとされています。もっとも元の数値が異常に高ければ問題外ですが。

★Youtubeスライドショー(BGMは、GarageBandで作曲したオリジナルです)
■Omurasaki butterflies in Japan 2011 Part 1of3【オオムラサキ】


■Omurasaki butterflies in Japan 2011 Part 2of3【オオムラサキ】


■Omurasaki butterflies in Japan 2011 Part 3of3【オオムラサキ】


 1986年のチェルノブイリ以後、規制値超えの食品が輸入差し止めになったことがありました。また、イタリアのパスタが危ないと言われたり、乳製品が危ないといって輸入食品が売れなくなったこともありましたが、そこは忘れ易い日本人。その後、グルメブームにのって実は大量の汚染食品が欧州から日本へ輸出されました。チェルノブイリ汚染のヨーロッパの木材は日本に大量輸入されていたともいわれています。いずれにしても現在の食品安全基準の暫定規制値はチェルノブイリ時よりも100倍も緩くなっています。その上、測定基準がバラバラでサンプリングの数が異常に少ないデタラメ検査と偽装表示(現にスーパーで産地偽装が起きています)で、全国に汚染食品が大量に流通するのは間違いないわけで、自衛するしかないのですが、都市部、特に東京圏では非常に困難なことだと思います。

「食品安全情報」(食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報:国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)

●半減期が約三十年と長く、食品や土壌への深刻な汚染を引き起こすセシウ ム137の放出量を単純比較すると、福島第一原発からの放出量は広島原爆168.5個分に相当すると政府が発表しました。国立環境研究所の推定では、その内の22パーセントが、東日本の陸地に降下したそうです。放射性物質の降下は、北は岩手や宮城、山形の各県から、南は関東を越え静岡県にも届き、新潟や長野、山梨の各県にも到達しました。つまり、広島原爆37個分のセシウムが、東北関東を中心とした各地に降下したわけです。被曝者は、5000万人以上になるのではないでしょうか。恐るべき事実です。

原発推進派は、自らや自らの子や孫も被曝しているというのに、なぜ悪魔の手先になるのか。命より金が大事だと、己の子供や孫に教えているのか。
●電力会社の原発関係支出:1年間=2兆1353億円(2009年)
原子炉メーカー:東芝、日立製作所、三菱重工などへ約6300億円
鉄鋼会社:新日本製鉄等へ約3200億円
建設会社:鹿島建設、大林組、清水建設、大成建設等へ3080億円
商社:三菱商事、丸紅等へ3512億円
化学:住友化学等へ5億4500万円
マスコミ:読売新聞・フジテレビ等大手新聞社やテレビ局へ883億円
(日本原子力産業協会:原子力関係売上高概観)
●NHK電力関係保有事業債:総額900億円超
東京電力(保有数23/金額145億円),中部電力(9/68億円),関西電力(12/65億円),中国電力(10/51億円),東北電力(7/45億円)
3月の事故直後にどこよりも『原発は安全だ』と報じてきたのはNHK。原子力村の御用学者を重用し、「メルトダウンはしていない」「安全だ」と繰り返してきた。実際はチェルノブイリ並みのレベル7で、みなさまのNHKに国民はだまされた。・・実質裏CMと同じ。これでは公正な報道などできるわけがない。
(日刊ゲンダイ2011年8月18日掲載)

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