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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

当地では幻の、スミナガシ(墨流)に出会った!!!(妻女山里山通信)

2011-08-19 | アウトドア・ネイチャーフォト
 先週末にやっと巡り会えたスミナガシ(墨流)です。墨流しとは、水に墨汁を流して模様を紙や布に転写する技法で、9世紀頃からある日本独特の伝統芸術。スミナガシの翅の文様は、まさにそれを体現したものといえるため、このような命名になったのでしょう。実際は墨一色ではないので、トルコ発祥のマーブリングに近いものですが、その色合いは正に和のテイスト。オオムラサキが国蝶なら、スミナガシは和蝶ともいうべきと思えるのですが、実際は、日本からヒマラヤまでを含む東南アジアに分布します。

 食草がアワブキなので、当地では希少なチョウといえます。妻女山山系にいることは、知っていたのですが、実際に見たのは今回が始めてでした。オオムラサキが20頭余りいる中でたった1頭ですから、その希少性が分かってもらえると思います。オオムラサキの食草であるエノキは、あちこちに見られます。アワブキは、おそらく谷筋にあるのでしょうが、現在の所特定できていません。

 このスミナガシは、オオムラサキが集まる樹液バーからは少し離れたクヌギの木にいました。発見した時は、思わず声をあげてしまったほど感動的な出会いでした。吸汁の時は、翅を広げているので撮影のチャンスです。極めて日本人好みの和風の柄に朱色の口吻が実にお洒落です。この樹液バーには、もう一頭お洒落なガがきていました。地味な前翅と隠れて派手な紅色の後翅を持つベニシタバです。落語家が羽織の裏地に凝るような、なかなか粋なガですが、これは別にお洒落のためではなく、威嚇するときに翅を広げて紅の部分を見せて相手を驚かすためのものらしいという事です。

 この樹液バーは、直径50センチぐらいのクヌギの木に前もって傷をつけて作っておいたものです。里山ですから、昔は盛んに木山をして枝打ちや伐採をしたので、樹液バーはたくさんあったはずです。しかし、人が入らなくなると樹液バーを作るのはカミキリムシやボクトウガの幼虫だけということになり、樹液バーの数も限られてしまいます。そうすると、樹液バーをよりどころとするたくさんの昆虫達が食糧難に陥る訳です。里山に暮らす昆虫達は、長い事そうやって人の暮らしと密接な関係を保って来たのです。

 今回は、100m位の範囲で、人工的に樹液バーを十数カ所作りました。スミナガシが現れたのはその内のひとつでした。写真に写っている白い物は樹液が酵母菌によって発酵し、水分が蒸発して結晶化したものです。スミナガシやオオムラサキは、この結晶化したものの奥に湧き出ている樹液を吸っています。それも出るとすぐに酵母菌の働きにより発酵するようです。結晶化したものを食べに来る昆虫もいます。この結晶化した白いものはどんな味だろうと舐めてみましたが、いわゆる樹臭さは全くなく、砂糖を水で練ったような甘さで、しかも旨味が感じられます。美味しい!
 メープルシロップを思えば、それも当然だと思うのですが、クヌギの樹液がこんなにも甘いとは思ってもみませんでした。人が感じられるようなアルコール分はありませんが、樹液をたっぷりと飲んだオオスズメバチが、フラフラヨタヨタと歩き回ってから飛び立つ様を見ると、昆虫がほろ酔いするぐらいには発酵しているようです。

 さて、そのスミナガシの翅の色なんですが、よく見るとかなり多くの色味を感じる事ができます。そこで、どれくらいの色味があるのか和色で数えてみました。
 青系から緑系に列挙します。
★紺桔梗(こんききょう)・瑠璃色(るりいろ)・群青色(ぐんじょういろ)・黒橡(くろつるばみ:つるばみはクヌギの古名)・空色(そらいろ)・花浅葱(はなあさぎ)・藍媚茶(あいこびちゃ)・海松色(みるいろ:みるは海藻のミル)・苔色(こけいろ)・白。
 体を覆う長い毛は鼠色ですが、鳩羽鼠(はとばねずみ)を中心に、藍鼠なども感じます。
 そして朱色の口吻は、光の具合で朱鷺色(鴾色・ときいろ)だったり、猩々緋色(しょうじょうひいろ)だったりします。光の加減ではもっと他の色が見えたりもします。実に美しい色合いです。

 撮影の合間に、30センチぐらいの近距離から見ると、本当に美しく、思わず見とれてしまいます。どちらかというと外連味のあるオオムラサキの雄の江戸紫(オオムラサキの青はもっと青味が強い色ですが)よりも、より日本人好みの色合いかなとも思います。といっても当人(当虫)は、「和テイストだ!? なんだそりゃ。知らねえなあ」てなところでしょうが。しかし、こんなに美しいチョウがいることを、地元の人はもちろん首都圏の人はほとんど知らない・・・。里山に対するリテラシーがないですから。
 樹液をたっぷりと飲んで高いクヌギの樹冠へと舞い上がったスミナガシを、恍惚として呆然と見送った暑い夏の午後でした。それは幻のようなひと時でした。

 これから秋になるとオオスズメバチが攻撃的になり、熊も栗を目当てに出没するので、要注意です。

■Suminagashi butterflies in Japan 2011 Part 1of2【スミナガシ】


■Suminagashi butterflies in Japan 2011 Part 2of2【スミナガシ】


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「日本政府がICRP(国際放射線防護委員会)の基準を盾にとって、『年間 20mSv(ミリシーベルト)までの被曝は安全』と主張しているのは、言語に絶するほど間違っている。ICRPのリスク・モデルはもともと1952年に作られたもので、その基準は軍需産業が核実験を正当化するためのものです」

 宮城のイノシシからセシウムが検出されました。福一から300キロも離れたセミに奇形が多く見られるという報告もありました。山地の汚染は非常に深刻です。幸い妻女山山系のセミや昆虫に、今の所は異変は見られません。しかし、汚染された生態系は嘘をつきません。世界の報道は、国民や世界に向かって嘘をつく政府と真実を伝えないマスコミ、国際的犯罪企業東電という論調に変わって来ています。隠しても、やがて恐ろしい事態が起きる事で真実は明らかになるしょう。

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