双極性障害の治療に用いられる気分安定薬の一つであるリチウムについて、本ブログでも過去にとりあげたことがありますが、今回、新たな知見が報告されました。
「双極性障害の治療でリチウムを1年間継続して内服した場合、リチウムを内服していなかった場合と比較して有意に認知症発症のリスクが低下した」とBR J PSYCHIATRY(2015)から発表されました。本研究では50歳以上の双極性障害患者41,931名が参加した大規模な調査で、信頼性の高い研究と言えそうです。
リチウムは日本うつ病学会が作成している双極性治療ガイドラインにおいて、うつ病エピソード、躁病エピソード、維持療法のいずれにおいても推奨される治療薬として挙げられております。また、リチウムには自殺予防効果もあることが示唆されており、古くからある薬剤ではありますが、当院では今現在もリチウムを双極性障害の第一選択薬の一つとして使用しております。ただし、副作用の一つに甲状腺への影響があり得ますので、元々、甲状腺疾患がある方には別のお薬で治療を開始する必要があります。