本年10月に京都大学の十一教授らのグループが、科学雑誌「Scientific reports(nature)」に“EMDRの脳における作用機序”に関する論文を発表しました。これは、近赤外線分光法(NIRS)という装置を用い、トラウマ的出来事を体験した被験者に対してEMDRを行った前後で脳血流に変化があるかどうかをみた研究です。
タイトルは“Possible neural mechanisms of psychotherapy for trauma-related symptoms: Cerebral responses to the neuropsychological treatment of post-traumatic stress disorder model individuals”で、open accessであるためネット上で誰でも閲覧することができます。
主な結果としては、EMDRの前後で右上側頭溝と左眼窩前頭皮質において脳血流の変化がみられました。右上側頭溝は不快記憶の想起を司る脳部位であり、眼球運動による不快記憶の正常化がEMDRの作用機序の一端であることが示されております。今回の結果を得るまでに10年近い年月を費やしたと筆者はお話されていました。本当にご苦労様でした。今後、EMDRの作用機序のさらなる解明が期待されます。