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徳富蘆花「自然と人生」より「晩秋初冬」

2011年10月24日 | 読書日記

 霜落ち、木枯らし吹き初めてより庭の紅葉(もみぢ)門(かど)の銀杏(いてふ)しきりに飛びて、晝は書窓を掃ふ影鳥かと疑はれ、夜は軒を撲(う)ちて晴夜に雨を想ふ。朝に起き見れば、満庭皆落葉。眼をあぐれば、さても痩せたり楓(かへで)の梢、錦は地に散り布(し)きて梢には昨夜の凩(こがらし)に残されし二タ葉三葉四葉心細気(こころぼそげ)に朝日に光り、昨日まで黄金の雲と見し銀杏も今朝は膚(はだ)薄う骨あらはれ、晩春の黄蝶(くわうてふ)にも似たる残葉の猶此處其處に縋(すが)りつきたるもあはれなり。

※「日本現代文学全集5 徳富蘆花集」(講談社)の「自然と人生」より「晩秋初冬」の一部を抜き書きしました。


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