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monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

ロングフェローの詩

2025年05月10日 | 読書日記

「将軍の恋」ロングフェロー(牧田勝訳)、建文館、1911年
を読んで、雅文調でよいなと思った箇所を抜き出してみました。

48ページ
周辺(あたり)はなべて閑寂(さび)つれど
煩悶(もだへ)の波のむねにうち

51ページ
森の小川を横ぎれば
流水(ながれ)、はげしく石(いし)をうち、
浅瀬(あさせ)にひゞくみづのおと、
なほ道すがらみちの辺(べ)に
紅色(くれない)さけるはなさうび
摘(つ)みつゝゆけば、いと奇(く)しく
薫香(くぬか)あたりにかんばしく
熟睡(うまひ)のとこに葉の積(つ)みて
童(わらべ)は森にうせにけり。


シャルル・ドルレアンの詩「夏」

2025年05月06日 | 読書日記

 夏 シャルル・ドルレアン (矢野目源一郎訳)
いざ来(わ)せぬ夏のさきがけ
住家(すみか)飾りにいそいそと
花の毛氈(まうせん) 緑葉(みどりは)を
敷きつらねたる𣑥被(たくぶすま)

見渡すかぎり牧の野は
ただ嫰草(わかくさ)の深々と
いざ来せぬ夏のさきがけ
住家飾りにいそいそと

心も解けて晴々と
凍りつめたる愁(うれひ)さへ
去りて憩(やすら)ふときなれば
冬のうかがふ陰もなし
いざ来せぬ夏のさきがけ
(「世界詩人全集24 世界名詩名訳集」新潮社、S43年、225p~)


シャルル・ドルレアンの詩「春」

2024年02月03日 | 読書日記

 春 シャルル・ドルレアン (矢野目源一郎訳)
風や冬枯(ふゆがれ)氷雨(ひさめ)の衣袍(ころも)
春立つ今日は脱ぎすてて
光のどけき春の陽を
綾に織りたる袖かざす

鳥も獣もおしなべて
悦び唄ふ声合せ
風や冬枯氷雨の衣袍
春立つ今日は脱ぎすてて

小川 池水(いけみづ) 行潦(にはたづみ)
飛び散る水の金銀を
揃ひ衣裳の目も彩(あや)に
いづこも春のよそほひと
今日脱ぎすつる冬衣(ふゆごろも)
(「世界詩人全集24 世界名詩名訳集」新潮社、S43年)


三月題詞

2022年03月05日 | 読書日記

 草は手(て)をのばし、大地はこゑをひそませる。すべては、うすいろの若(わか)やぐ笑ひをはびこらせて、あをじろい月光(げっくゎう)のおとし子をはらむではないか。樹(き)のうへにおよぐ魚(うを)のすばやさは、点点としてながれさる木(こ)の葉(は)の命(いのち)をかもしそだてて息(いき)ぐみ、よそほひを凝らしながら眼(め)をよせる女の指に不思議のにほひをふるはせる。
(『限定版 大手拓次全集 別巻』(白鳳社、1971年、446p)より「季節題詞」)


二月題詞

2022年02月05日 | 読書日記

 大空のひびきは、あゆみをはこんで二月のよそほひをつくる。やはらかな白天鵞絨(しろびろうど)のやうな手のなかにつめたく咲いてはこぼれてゆくさびしい花びら。二月よ、二月よ、おまへのつつまれたあわゆきいろの肌は、限りない秘密の瘴気(しゃうき)を吹いて胸をときめかす。ああ、二月は面(おもて)をふせた恋のうしろすがたである。
(『限定版 大手拓次全集 別巻』(白鳳社、1971年、446p)より「季節題詞」)