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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 秋 野分

2013年08月30日 | 日本古典文学-秋

野わきする空のけしきに成りにけり村雲はやき秋の夕暮
(宝治百首~日文研HPより)

野分を 藤原為名朝臣
草も木も野分にしほる夕暮は空にも雲の乱れてそ行
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

野分を 前大納言為兼
野分たつ夕の雲のあしはやみ時雨ににたる秋の村雨
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

題不知 藤原定兼朝臣
今朝も猶野分のなこり風あれて雨ふりそゝく村雲の空
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 院一条
吹みたし野分にあるゝ朝あけの色こき雲に雨こほるなり
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

風後草花といふ事をよませ給うける 新院御製
夜すからの野分の風の跡みれは末ふす萩に花そ稀なる
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

野分の又の日こそ、いみじう哀におぼゆれ。立蔀、透垣などのふしなみたるに、前栽ども心ぐるしげなり。大なる木ども倒れ、枝など吹き折られたるだに惜しきに、萩女郎花などのうへに、よろぼひ這ひ伏せる、いとおもはずなり。格子のつぼなどに、颯と際を殊更にしたらんやうに、こまごまと吹き入りたるこそ、あらかりつる風のしわざともおぼえね。いと濃き衣のうはぐもりたるに、朽葉の織物、羅などの小袿著て、まことしく清げなる人の、夜は風のさわぎにねざめつれば、久しう寐おきたるままに、鏡うち見て、 母屋よりすこしゐざり出でたる、髮は風に吹きまよはされて、少しうちふくだみたるが、肩にかかりたるほど、實にめでたし。物あはれなる氣色見るほどに、十七八ばかりにやあらん、ちひさくはあらねど、わざと大人などは見えぬが、生絹の單衣のいみじうほころびたる、花もかへり、濡れなどしたる、薄色の宿直物を著て、髮は尾花のやうなるそぎすゑも、長ばかりは衣の裾にはづれて、袴のみあざやかにて、そばより見ゆる。わらはべの、若き人の根籠に吹き折られたる前栽などを取り集め起し立てなどするを、羨しげに推し量りて、つき添ひたるうしろもをかし。
(枕草子~バージニア大学HPより)

野分、例の年よりもおどろおどろしく、空の色変りて吹き出づ。花どものしをるるを、いとさしも思ひしまぬ人だに、あなわりなと思ひ騒がるるを、まして、草むらの露の玉の緒乱るるままに、御心惑ひもしぬべく思したり。おほふばかりの袖は、秋の空にしもこそ欲しげなりけれ。暮れゆくままに、ものも見えず吹きまよはして、いとむくつけければ、御格子など参りぬるに、うしろめたくいみじと、花の上を思し嘆く。
(源氏物語・野分~バージニア大学HPより)

野分したるあしたに、おさなき人をたにとはさりける人に 赤染衛門
あらく吹風はいかにと宮木野の小萩かうへを人のとへかし
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

野分の後、思ひまさらるることありてよめる 御垣が原の右大将
思ひ草さらでも末の露の身をいかに吹きつる秋の嵐ぞ
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)


古典の季節表現 秋 すすき

2013年08月29日 | 日本古典文学-秋

文保百首歌奉りける時 民部卿為藤
露むすふしのゝを薄ほに出ていはねとしるき秋は来にけり
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす よみ人しらす
小倉山麓の野へのはな薄ほのかにみゆる秋のゆふくれ
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

ひとむらは植ゑてだに見む花すすき露おく秋の袖のたぐひに
(大永六年内裏屏風和歌)

題しらす 平貞文
今よりはうへてたに見し花薄ほにいつる秋はわひしかりけり
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

ひとかたになびきもはてず花すすき吹きもさだめぬ秋の野風に
(蓮愉集)

荒れたる家に、尾花の折れ返り招くを見てよみ侍りける うつほのおほきおほいまうち君
吹く風の招くなるべし花すすき我呼ぶ人の袖と見つるは
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

うちなびく尾花が末の気色(けしき)にはたれか心をとどめざらまし
(平家花ぞろへ)

枯れ枯れなる前栽の中に、尾花の、ものよりことにて手をさし出で招くがをかしく見ゆるに、まだ穂に出でさしたるも、露を貫きとむる玉の緒、はかなげにうちなびきたるなど、例のことなれど、夕風なほあはれなるころなりかし。
「穂に出でぬもの思ふらし篠薄招く袂の露しげくして」
(源氏物語・宿木~バージニア大学HPより)

つねよりも思ふ事ある比、尾花が袖の露けきをながめいだしつゝ、
露のおくをばなが袖をながむればたぐふ涙ぞやがてこぼるゝ
(建礼門院右京大夫集~岩波文庫)

人を行方知らずなして嘆き侍りけるころ、尾花の風になびくを見て 浜松の中納言
尋ぬべき方しなければ古里の尾花が袖にまかせてぞ見る
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

去年の春石山に詣(ま)でたりしに、山中にとまりて休みなどせしを、又の年の秋前をわたるに、さぞかしと思ふに、あはれにて、問はすれば人なし、薄ぞ情(なさけ)なげにすくみて立てるに、書きて結びつく
過ぎゆけど招く尾花もなかりけりあはれなりしは花の折かな
(和泉式部集~岩波文庫)

藤原のとしもとの朝臣の、右近中将にてすみ侍けるさうしの、身まかりてのち人もすます成にけるに、秋のよふけてものよりまうてきけるついてに見いれけれは、もとありしせんさいいとしけくあれたりけるをみて、はやくそこに侍けれはむかしをおもひやりてよみける みはるのありすけ
君かうへし一むら薄虫のねのしけき野へとも成にける哉
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

家に五十首歌よませ侍りける時 入道二品親王性助
たかうゑし形見とたにも白露の一村薄何なひくらむ
(続拾遺和歌集・異本歌~国文学研究資料館HPより)

(草の花は)
これに薄を入れぬ、いとあやしと人いふめり。秋の野のおしなべたるをかしさは、薄にこそあれ。穗さきの蘇枋にいと濃きが、朝霧にぬれてうち靡きたるは、 さばかりの物やはある。秋の終ぞいと見所なき。いろいろに亂れ咲きたりし花の、かたもなく散りたる後、冬の末まで、頭いと白く、おほどれたるをも知らで、昔おもひいで顏になびきて、かひろぎ立てる人にこそいみじ
(枕草子~バージニア大学HPより)


古典の季節表現 秋 女郎花

2013年08月26日 | 日本古典文学-秋

手に取れば袖さへにほふをみなへしこの白露に散らまく惜しも
(万葉集~バージニア大学HPより)

あきかせのふきそめしよりをみなへしいろふかくのみみゆるのへかな
のへことにたちかくれつつをみなへしふくあきかせのみえすもあらなむ
(亭子院女郎花合~日文研HPより)

朱雀院のをみなへしあはせによみてたてまつりける 左のおほいまうちきみ
女郎花秋のゝ風にうちなひき心ひとつをたれによすらん
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

いたうあばれたる所にて、女郎花に露の置きたるを見て
女郎花露けきままにいとどしく荒れたる宿は風をこそ待て
(和泉式部続集~岩波文庫)

嵯峨の院に行幸ありけるに、野の花の盛りなる中にも、をみなへしの霧の絶え間もわりなげなるを御覧じて 狭衣の帝の御歌
立ち返り折らで過ぎ憂きをみなへし花の盛りをたれに見せまし
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

てをとらはひとやとかめむをみなへしにほへるのへにやとやからまし
おほよそになへてをらるなをみなへしのちうきものそひとのこころは
(亭子院女郎花合~日文研HPより)

三条右大臣女の女御のもとへはしめてつかはしける 清慎公
秋の野に色うつろへるをみなへし我たに行ておらんとそ思
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

つれなかりける人の許に女郎花につけて 藤原範永朝臣
一夜たにねてこそゆかめ女郎花露けきのへに袖はぬるとも
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

権中納言経定、歌合し侍けるに読てつかはしける 按察使公通
女郎花しめゆひをきしかひもなくなひきにけりな秋の野風に
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす をのゝよし木
女郎花おほかる野辺にやとりせはあやなくあたの名をやたちなん
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)


古典の季節表現 秋 萩

2013年08月25日 | 日本古典文学-秋

たかまとののへのあきはきこのころのあかときつゆにさきにけむかも
(万葉集~日文研HPより)

娘女らに行相の早稲を刈る時になりにけらしも萩の花咲く
秋田刈る刈廬の宿りにほふまで咲ける秋萩見れど飽かぬかも
秋風は涼しくなりぬ馬並めていざ野に行かな萩の花見に
沙額田の野辺の秋萩時なれば今盛りなり折りてかざさむ
見まく欲り我が待ち恋ひし秋萩は枝もしみみに花咲きにけり
我がやどに咲ける秋萩常ならば我が待つ人に見せましものを
(万葉集~バージニア大学HPより)

これさたのみこの家の歌合によめる 藤原としゆきの朝臣
秋萩の花さきにけり高砂のおのへの鹿はいまや鳴らん
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

宝治百首歌めされける時、萩露を 後嵯峨院御製
白露もこほれて匂ふ高円の野への秋はき今さかりなり
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

さを鹿の朝立つ野辺の秋萩に玉と見るまで置ける白露
(万葉集~バージニア大学HPより)

うすくこくわきてやつゆもおきつらむまのゝむらはぎおのがいろいろ
(郁芳門院媞子内親王前栽合~「平安朝歌合大成3」)

露ながら折らまほしきはむらさきのたまをつらぬく庭の糸萩
(実材母集)

夕露のむすふと見ゆるいと萩を吹とく風に花そ乱るゝ
(永享九年住吉社奉納百首~「続群書類従14下」)

うつろはむことたにをしきあきはきにをれぬはかりもおけるしらつゆ
(伊勢集~日文研HPより)

九月十三夜、十首歌合に、朝草花 土御門院小宰相
露なからみせはや人に朝な朝なうつろふ庭の秋萩の花
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

秋の野に露負へる萩を手折らずてあたら盛りを過ぐしてむとか
(万葉集~バージニア大学HPより)

ゆふされはつゆのやとりとなりにけりはらはぬにはのあきはきのはな
(文保百首~日文研HPより)

題しらす よみ人しらす
ゆふされは玉ぬく野辺の露なから風にかつ散秋萩の花
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

秋の歌に 前中納言定家
風ふけは枝もとをゝにをく露のちるさへおしき秋萩の花
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

白露に争ひかねて咲ける萩散らば惜しけむ雨な降りそね
雁がねの来鳴かむ日まで見つつあらむこの萩原に雨な降りそね
さを鹿の心相思ふ秋萩のしぐれの降るに散らくし惜しも
(万葉集~バージニア大学HPより)

(霊龜元年歳次乙卯秋九月志貴親王時作歌一首[并短歌])短歌二首
高円の野辺の秋萩いたづらに咲きか散るらむ見る人なしに
(霊龜元年歳次乙卯秋九月志貴親王時作歌一首[并短歌])或本歌曰
高円の野辺の秋萩な散りそね君が形見に見つつ偲はむ
(万葉集~バージニア大学HPより)

 秋雨のいみしくふる日はきの花につけて人にやりし
つまこひにしかはしからむ秋萩を雨さへしほるおしき比哉
(赤染衛門集~群書類従15)

ちかとなりなる所に、方たかへにわたりて、やとれりときゝてある程に、ことにふれて見きくに、うたよむへき人なりときゝて、これか歌よまむさまいかてよくみむとおもへとも、いとも心にしあらねはふかくもおもはす、すゝみてもいはぬほとに、かれも又心みんと思ひけれは、はきのはのもみちたるにつけて、うたをなむをこせたる 女 
秋はきのした葉につけてめにちかくよそなる人の心をそ見る 
返し つらゆき
世中の人に心をそめしかは草葉に色もみえしとそ思ふ 
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

秋にもなりゆく。身にしむ風も堪(た)へがたう、わが身一つに思し知らるるに、見出(い)で給へりし方(かた)の御壺の前栽も、人住まぬ所顔にわざと荒らし給へれば、吹き過ぐる風のけしきさへ心を告げ顔にもの悲しき。千草(ちぐさ)の中に、古枝(ふるえ)忘れぬ萩は、取り分きなつかしう見なさる。
 荒れてゆく元(もと)の籬(まがき)を知り顔に古枝(ふるえ)忘れぬ秋萩の花
露けき御袖の上なり。
(恋路ゆかしき大将~「中世王朝物語全集8」笠間書院)

親につつむ事ありて、隠れてゐたる方(かた)の前に、萩のいとおもしろきに露のおきたれば
さは見れどうちもはらはで秋萩を忍びてをれば袖ぞ露けき
(和泉式部集~岩波文庫)

御溝水(みかはみづ)の流になみたてる色々の花どもいとめでたき中にも、萩の色こき、咲き乱れて、朝の露玉をつらぬき、夕の風靡くけしきことに見ゆ。これを見るにつけても、御覧ぜましかばいかにめでさせ給はましと思ふに、
 萩の戸におもかはりせぬ花みても昔を忍ぶ袖ぞ露けき
と思ひ居たるを、人にいはんも、同じ心なる人もなきにあはせて、事のはじめに漏り聞えむ、よしなければ、承香殿を見やるにつけても思ひいでらるれば、里につくづくと思ひつづけ給はんとおしはかりて、これを奉りしかば、
 思ひやれ心ぞまどふもろともに見し萩の戸の花を聞くにも
(讃岐典侍日記~岩波文庫)

後冷泉院くらゐにつかせ給ひけれは、さとにまかりいて侍りて又のとしの秋、東三条のつほねの前にうへて侍けるはきを人のおりてもてきたりけれは 麗景殿前女御 
こそよりも色こそこけれ萩の花涙の雨のかゝるかきりは(イかかる秋には)
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)


古典の季節表現 秋 荻(をぎ)

2013年08月24日 | 日本古典文学-秋

天徳三年九月庚申歌合に、荻を読侍ける 藤原元真 
荻の葉に風のすゝしき秋きてはくれにあやしき物をこそ思へ
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

 くれてのち、七月七日、かぜのよふけてふき侍りしかば、あはれとおぼえて
をぎのはぞ風にみだるるおとすなるものおもふほどに秋やきぬらん
(山田法師集~新編国歌大観7)

秋来(き)ぬと袖にしらせて吹きそむる荻の上葉の風ぞ身にしむ
(草庵集百首和歌)

百首歌に、はつ秋のこゝろを 崇徳院御歌
いつしかと荻の葉むけのかたよりにそゝや秋とそ風もきこゆる
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

をきのはのすゑこすかせのおとよりそあきのふけゆくほとはしらるる
(順集~日文研HPより)

荻風を 伏見院御歌
こゝにのみあはれやとまる秋風の荻のうへこす夕くれの宿
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

一品の宮に絵ども奉る中に、芹川の大将のとほ君の、女一の宮思ひかけたる秋の夕べ描きたるに、思ひ寄せらるることやありけん、書きて添へまほしかりける 薫大将
荻の葉に露吹き結ぶ秋風も夕べは分きて身にぞしみける
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

村上の御時八月はかり、うへひさしうわたらせたまはてしのひてわたらせ給ひけるを、しらすかほにてことひき侍りける 斎宮女御
さらてたにあやしきほとの夕暮に荻ふく風の音そ聞ゆる
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

かどちかきをぎの末を、馬にのりながら、結びてゆく人なんあると聞きて、つとめて
なほざりに穂末をむすぶ荻の葉のおともせでなど人のゆきけん
返し
ゆきがてに結びし物ををぎの葉の君こそおともせでは寝にしか
(大弐三位集~岩波文庫「紫式部集」)

その十三日の夜、月いみじくくまなくあかきに、みな人もねたる夜中許に、(略)かたはらなる所に、さきをふくるまとまりて、「おぎのはおぎのは」とよばすれど、こたへざなり。よびわづらひて、ふえをいとおかしくふきすまして、すぎぬなり。
ふえのねのたゞ秋風ときこゆるになどおぎのはのそよとこたへぬ
といひたれば、げにとて、
おぎのはの こたふるまでのふきよらでたゞに すぎにるふえのねぞうき
(更級日記~バージニア大学HPより)

待つ人にあやまたれつつ荻の音のそよぐにつけてしづごころなし
(祭主輔親卿集)

こんとたのめて侍けるともたちのまてとこさりけれは、あきかせのすゝしかりける夜ひとりうちゐて侍りける 僧都実誓
荻のはに人たのめなる風の音をわか身にしめてあかしつるかな
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

七月ばかり、人の許に
たれぞこの訪(と)ふべき人はおもほえで耳とまりゆく荻の上風
(和泉式部集~岩波文庫)

八月ばかり、人のもとに
音(おと)すれば訪(と)ふか訪(と)ふかと荻の葉に耳のみとまる秋の夕暮
(和泉式部続集~岩波文庫)

冷泉院みこの宮と申ける時、百首歌よみて奉りける中に 重之
荻の葉にふく秋風を忘れつゝ恋しき人のくるかとそ思ふ
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

平かねきかやうやうかれかたになりにけれはつかはしける 中務
あき風のふくにつけてもとはぬかなおきのはならは音はしてまし
(後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

三条院みこの宮と申ける時、ひさしくとはせたまはさりけれは 安法々師女
世のつねの秋風ならは荻のはにそよとはかりの音はしてまし
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

白河院、鳥羽殿にて、前栽あはせせさせ給けるによめる 敦輔王
おきのはに事とふ人もなきものをくる秋ことにそよとこたふる
(詞花和歌集~国文学研究資料館HPより)

 田家暮風 藤原資隆朝臣
とふ人もなきわかやとの夕まくれ誰にこたふる荻のは風そ
(月詣和歌集~続群書類従14上)

とふひともなきやとからのさひしさをあきそとつくるをきのうはかせ
(新葉集~日文研HPより)

 荻をすなこしける扇にかきたるをある人の北の方歌つけてたふへきよしいひおこせたりけれはよめる
荻の葉の露うちはらふ秋風につらぬく玉をまくかとそみる
(出観集~群書類従15)

人のわづらひけるとぶらひにまかりて、昔思ひ出でらるることやありけん、荻の上風の渡るにしたがひて、ほろほろとこぼるる露に、涙も誘はれぬる心地して 風につれなきの太政大臣
秋風や昔をかけて誘ふらん荻の上葉の露も涙も
かく渡れるよし聞こえければ 冷泉院の一の宮
憂しとのみ思ひ果てにし秋風にそよめく荻の音ぞ悲しき
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

「此の頃袖の露けき」などいひたる人に
秋は猶思ふことなき荻の葉も末たわむまで露はおきけり
(和泉式部集~岩波文庫)

秋歌よみ侍ける 源重之女
秋はたゝ物をこそ思へ露かゝる荻のうへふく風につけても
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 後徳大寺左大臣
夕されは荻の葉むけを吹風にことそともなく涙おちけり
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

うゑすてて聞く人もなきふる郷のまがきにのこるをぎのうはかぜ
(光経集)