monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 夏 夏の夕

2017年06月24日 | 日本古典文学-夏

ほのかなるかけとはみえすゆふつくようのはなかきのたそかれのやと
(嘉元百首~日文研HPより)

かすならぬみのうのはなのさきみたれものをそおもふなつのゆふくれ
(順集~日文研HPより)

なにしおははしはしやすらへほとときすたちはなてらのなつのゆふくれ
(後鳥羽院御集~日文研HPより)
 
ふるかはのきしのあたりのあさくさにつはななみよるなつのゆふかせ
(新撰和歌六帖
 
みくりはふみきはのまこもうちそよきかはつなくなりあめのくれかた
(拾遺愚草員外~日文研HPより)
 
かはつなくたなかのゐとにひはくれておもたかなひくかせわたるなり
(夫木抄~日文研HPより)
 
ふるさとのにはのさゆりはたまちりてほたるとひかふなつのゆふくれ
(秋篠月清集~日文研HPより)

堀河院に百首歌奉りける時 権大納言師頼 
草ふかみあさちましりの沼水に蛍とひかふ夏の夕暮 
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

夏歌の中に 参議雅経
露まかふ日影になひく浅ちふのをのつから吹夏の夕かせ 
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

夏歌の中に 民部卿為世 
入日さす峰のこすゑに鳴蝉の声をのこしてくるゝ山もと 
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

 昼の御座にうち臥したまひて、御物語など聞こえたまふほどに暮れにけり。すこし大殿籠もり入りにけるに、ひぐらしのはなやかに鳴くにおどろきたまひて、
 「さらば、道たどたどしからぬほどに」
 とて、御衣などたてまつり直す。
 「月待ちて、とも言ふなるものを」
 と、いと若やかなるさましてのたまふは、憎からずかし。「その間にも、とや思す」と、心苦しげに思して、立ち止まりたまふ。
 「夕露に袖濡らせとやひぐらしの鳴くを聞く聞く起きて行くらむ」
 片なりなる御心にまかせて言ひ出でたまへるもらうたければ、ついゐて、
 「あな、苦しや」
 と、うち嘆きたまふ。
 「待つ里もいかが聞くらむ方がたに心騒がすひぐらしの声」
(源氏物語・若菜下~バージニア大学HPより)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「末葉」用例

2017年06月23日 | 日本国語大辞典-さ行

 「末葉(すえば)」という単語には「終わり頃。末端。」という語釈があり、日本国語大辞典・第二版では、室町末-近世用例を早い例として挙げていますが、400年ほどはさかのぼる用例が複数あります。

かそふれは-なつもすゑはに-なりにけり-あさのたちえや-かりにゆかまし
(久安百首・01131 上西門院兵衛)~日文研HPより

ふみわくる-やまのしたくさ-うらかれて-あきのすゑはに-なりにけるかな
(清輔集(清輔朝臣集)00181)~日文研HPより

左 有家朝臣
うら若きやよひの野辺のさいた妻春は末葉になりにけるかな
(六百番歌合、春十五首、二十九番・残春)
峯岸義秋校訂『六百番歌合・六百番陳情(岩波文庫)』岩波書店、1936年、77ページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大手拓次「夏の夜の薔薇」

2017年06月21日 | 読書日記

夏の夜の薔薇 大手拓次

手に笑とささやきとの吹雪する夏の夜(よる)、
黒髪のみだれ心地の眼がよろよろとして、
うつさうとしげる森の身ごもりのやうにたふれる。
あたらしいされかうべのうへに、
ほそぼそとむらがりかかるむらさきのばらの花びら、
夏の夜の銀色の淫縦(いんじゆう)をつらぬいて、
よろめきながれる薔薇の怪物。
みたまへ、
雪のやうにしろい腕こそは女王のばら、
まるく息づく胴(トルス)は黒い大輪のばら、
ふつくりとして指のたにまに媚をかくす足は欝金(うこん)のばら、
ゆきずりに秘密をふきだすやはらかい肩は真赤(まつか)なばら、
帯のしたにむつくりともりあがる腹はあをい臨終のばら、
こつそりとひそかに匂ふすべすべしたつぼみのばら、
ひびきをうちだすただれた老女のばら、
舌と舌とをつなぎあはせる絹のばらの花。
あたらしいふらふらするされかうべのうへに
むらむらとおそひかかるねずみいろの病気のばら、
香料の吐息をもらすばらの肉体よ、
芳香の淵にざわざわとおよぐばらの肉体よ、
いそげよ、いそげよ、
沈黙にいきづまる歓楽の祈祷にいそげよ。
(青空文庫より)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

紫陽花(あぢさゐ)

2017年06月19日 | 日本古典文学-和歌-夏

今もかも来(き)ませわが背子見せもせむ植ゑしあぢさゐ花咲きにけり(新撰和歌六帖)

あぢさゐの八重咲くごとくやつ世にをいませ吾背子見つつしのはむ(万葉集)

飛ぶほたるひかげ見えゆく夕暮になほ色まさる庭のあぢさゐ(長秋詠藻)

宵のまの露に咲きそふあぢさゐの四(よ)ひらぞ月のかげに見えける(新撰和歌六帖)

夏もなほ心は尽きぬあぢさゐの四ひらの露に月もすみけり(長秋詠藻)

夏の野は咲きすさびたるあぢさゐの花に心をなぐさめよとや(林葉集)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夏萩

2017年06月18日 | 日本古典文学-和歌-夏

生(お)ひかかり葛(くず)の玉巻く夏萩を植ゑては秋の鹿や待たれむ(小一条左大臣忠平前栽合)

賤(しづ)はなほ月影のこせ夏萩の麻のをがらの白きかきほに(草根集)

夏萩のあさのをがらと徒人(あだびと)の心かろさといづれまされり(好忠集)

これを見ようへはつれなき夏萩の下葉濃くこそ思ひ乱るれ(清少納言集)

露にだに心おかるな夏萩の下葉の色よそれならずとも(風雅和歌集)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする