monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「踏み破る①」用例

2021年11月20日 | 日本国語大辞典-は行

 「踏み破る」という語の「①踏んで破る。踏んでこわす。蹴やぶる。また、ぶちこわしにする。」という語釈は日本国語大辞典第2版では、『日葡辞書』(1603-04)の例を早い用例として挙げていますが、100年以上さかのぼる用例があります。

すはや地獄に、帰るぞとて、大地(だいジ)をかっぱと、踏み鳴らし、大地をかっぱと、踏み破つて、奈落(ならく)の底にぞ、入(い)りにける。
(謡曲「野守」)
『日本古典文学大系40 謡曲集 上』岩波書店、1960年、317ページ


「走り飛び」用例

2021年11月19日 | 日本国語大辞典-は行

 「はしりとび(走跳・走飛)」は、走って行って跳ぶこと。助走をして跳ぶこと。日本国語大辞典第2版では、『日葡辞書』(1603-04)の例が引かれていますが、100年以上さかのぼる用例があります。

ただ目を塞ぎ走り飛びに致して(略)
(謡曲「丹後物狂」)
『日本古典文学大系40 謡曲集 上』岩波書店、1960年、204ページ


古典の季節表現 冬 十一月中申日 吉田祭

2021年11月11日 | 日本古典文学-冬

  後福光園摂政家の歌合に、吉田祭 正三位兼煕
百とせをはや四かへりの霜をへてたえぬ吉田の神まつりかな
(新続古今和歌集~「和歌文学大系12」明治書院)

十七日、雪なほいとふかうつもりしに、吉田の使にたちて、かへさに、しゆき〔主基〕かたの女く所の事がらゆかしくて、「そなたざまやれ。」と申し侍りしかば、くやく〔ためもち・かねとも〕、六位のくるまのとものものなども、「夜ふけてはるかにめぐらむ事、かなふまじき」よし申し侍りしかども、せめてたづねまほしさに、「吉田のつかひのかへりには、かならず女く所へたちいるしぎにてあるぞ。」と申し侍りしかば、「まことにさる先例ならば。」とて、はるばるとたづねゆきたりしに、ゑじがもんおそくあけ侍りしに、「今にはじめたる事か。吉田使のかへさに、内侍のいらせ給ふに、ことあたらしくあけもまうけぬか。」と、あらゝかにいさめ申し侍りしも、「かやうの事や。先例にもなり侍らむ。」とをかしくて、辨内侍、
とはましや積れる雪の深きよに是もむかしの跡といはずは
(弁内侍日記~群書類從18)

(寛弘元年十一月)二十二日、壬申。
内裏から退出した。一日中、天が陰(くも)った。吉田祭に奉幣使を出立させた。時々、雪が降った。
(御堂関白記〈全現代語訳〉~講談社学術文庫)

(寛仁元年十一月)十四日、戊申。
吉田祭に奉幣を行なった。私自らは鴨川の川原に出ることはなく、使者を遣わした。陰陽師たちに奉幣を行なわせた。日が宜しくなかったことによるものである。
(御堂関白記〈全現代語訳〉~講談社学術文庫)

(嘉禄二年十一月)廿日。霜凝り、霧深し。天晴れ、雲尽く。宰相来たる。明日、吉田祭に参ず。此の祭の如し。更に然るべき口伝を受けず。粗々江次第を見る。又当時の形勢に随ふ。召使引導、弁行事、渋く思はず。又帯を忘れ了んぬ。抑々明日欠日なり。初度の事、然るべからず。只初めて氏社の祭に逢ふ。又大原野遠きに依り、是非なく之に行くか。頗る普通ならざる事なり。日次を沙汰せずと云々。(略)
廿一日。遅明に時雨。朝陽即ち明し。吉田祭に宰相着行。冷泉の女房・母堂・祖母来会。冷泉に此の家の人々又行き向ひて対面と云々。(略)夜に入り女房帰る。吉田祭に参じ勤め了んぬと云々。
(『訓読明月記』今川文雄訳、河出書房新社)


十一月題詞

2021年11月06日 | 読書日記

 銀色の猛獣はほがらかに媚を売り、真紅の脣に金鈴(きんれい)を鳴らして思想の墓上に近づく。肉体に蒸(む)れたる宝石は念願を交して薄暮の扉に焔のゆめをゑがき、尾をたれ、言葉を祭り、紫紺の柩(ひつぎ)に亡魂の帆をかけて、せはしげに、また快く、神の姿へとみちびかれる。
(『限定版 大手拓次全集 別巻』(白鳳社、1971年、447p)より「季節題詞」)


「上葺き②」用例

2021年11月03日 | 日本国語大辞典-あ行

 「上葺き」という語には「② かやの類で屋根を葺くこと。」という語釈がありますが、日本国語大辞典よりもさかのぼる用例が複数あります。また、屋根そのものの語釈がないので、追加すべきと思います。

寝殿の南面を女院の御見物のところとす。南のついがきにそへて。かたはや二宇をつくる。竹をもちてたるき柱とす。松をもてうはぶきとす。紫べりの畳をしく。
(承元御鞠記)
『群書類従19』、371p

洞院摂政家百首に、旅 藤原信実朝臣 
塩風に/笘のうはふき/ひまみえて/うきねの枕/あけぬ此夜は 
(続古今和歌集)~国文学研究資料館HPより