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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 春 早蕨

2014年01月12日 | 日本古典文学-春

石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも
(万葉集~バージニア大学HPより)

正治二年奉りける百首の春歌 皇太后宮大夫俊成
早蕨は今はおりにもなりぬらんたるみの氷いはそゝくなり
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

侍従藤原仲忠、「蕨に消ゆる雪」、
雪解くる春の蕨のもゆればや野辺の草木のけぶり出づ らむ
(うつほ物語~新編日本古典文学全集)

筑紫にて、さわらびといふ題を
かまど山ふりつむ雪もむら消えていまさわらびももえやしぬらむ
(大弐三位集~岩波文庫「紫式部集」)

題しらす 亀山院御製
焼すてし煙の末の立かへり春もえ出る野へのさわらひ
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

堀川院に百首歌たてまつりける時、早蕨 大納言公実
春日野の草葉はやくとみえなくに下もえわたる春の早蕨
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

春の歌の中に 正三位実綱
山はなをみ雪しふれとかけろふのもゆる野原の春のさわらひ
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

紫のちりばかりしておのづからところどころにもゆるさわらび
(建礼門院右京大夫集~岩波文庫)

うちかへすかたやまはたのさわらひのしたにもゆるもあらはれにけり
(新撰和歌六帖~日文研HPより)

堀川院の御とき、百首の歌のうち、早蕨をよめる 藤原もとゝし
深山木のかけ野の下のしたわらひもえ出れともしる人もなし
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

おなし心(早蕨)を 栄仁親王
山賎の時そともなきすさひにも折はわすれぬ春の早蕨
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

ならにて人ひと百首歌よみけるに、さわらひをよめる
和歌作者原表記 権僧正永縁 
山里はのへのさわらひもえ出るおりにのみこそ人はとひけれ 
(金葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

 阿闍梨のもとより、
 「年改まりては、何ごとかおはしますらむ。御祈りは、たゆみなく仕うまつりはべり。今は、一所の御ことをなむ、安からず念じきこえさする」
 など聞こえて、蕨、つくづ くし、をかしき籠に入れて、「これは、童べの供養じてはべる初穂なり」とて、たてまつれり。手は、いと悪しうて、歌は、わざとがましくひき放ちてぞ書きたる。
 「君にとてあまたの春を摘みしかば常をわすれぬ初蕨なり
 御前に詠み申さしめたまへ」
 とあり。
 大事と思ひまはして詠み出だしつらむ、と思せば、歌の心ばへもいとあはれにて、なほざりに、さしも思さぬなめりと見ゆる言の葉を、めでたく好ましげに書き尽くしたまへる人の御文よりは、こよなく目とまりて、涙もこぼるれば、返り事、書かせたまふ。
 「この春は誰にか見せむ亡き人のかたみに摘める峰の早蕨」
(源氏物語・早蕨~バージニア大学HPより)