monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

下駄で歩く

2020年10月31日 | 着物/和服

 二枚歯の下駄で歩く時は、後ろ足で地面を蹴るために、前端を地面に付けて歩いていましたが、それは間違った歩き方だという指摘をしている きもの雑誌を見つけました。「七緒 30」(2012年6月7日、プレジデント社、69ページ)では、二枚歯の下駄で歩く時は、前のめりにならないで、前端は地面に付けないように歩くと書いてあります。底を引き摺るように歩くんでしょうか。このとおりに歩いてみようとしても、私には出来ませんでした。
 ほかに歩き方について書いてある資料がないか、探してみました。

 潮田鉄雄「日本人とはきもの」(住宅新報社、1976年、135~138ページ)によると、「前へ歩をすすめるためには、前アゴの先端で地面を蹴る」ことが必須のようです。歯がすり減ってしまうと、地面を蹴ることができず、引き摺って歩くことになるとのこと。
 しかし、137ページには「脛にはねを上げないように雨天を歩く」方法について、「能・狂言の摺り足のように、平行に下駄を保ちつつ、そっとおろせばよい」と書いてあり、この歩き方を晴天も行なうと、冒頭の「七緒」の記事の歩き方になるのかなー、と思いました。

 下駄とはいえ、一本歯の下駄ならば、アゴは接地しない歩き方になると思います。
 日常的に下駄を履いている人の歩き方を観察してみたいものです。あるいは、歌舞伎なら舞台で下駄を履く演目があるかな?

 数年前、津軽塗りの二枚歯の下駄を購入した際、店主と底にゴムを貼るかどうかの話をして、前歯と後葉のほかに前アゴ先端にもゴムを貼ってもらいました。前アゴのゴムは店主からの提案で、その時までそこにゴムを貼るという選択肢は、自分には無かったです。
 次回話す機会があれば、アゴを地面に付けない歩き方について、質問してみたいです。


後家の島田髷?

2020年10月26日 | 読書日記

 諸田玲子「恋縫」(集英社文庫、2007年)を読んでたら、二十歳前半くらいの年齢の後家が島田を結っている描写が出てきました(97ページ)。「えっ? 島田髷って未婚女性の結うものじゃなかったっけ?」と思い、調べてみました。
 「後家島田」という種類の髷があることは分かりましたが、この髷は「主に、京・大坂で行なわれた」とのことなので、この小説の舞台の場所とは一致しないな~、と疑問しきりです。
 年輩の女性が年齢不相応の若い格好をすることをいう「四十島田」という語がありますが、この場合の四十女は未婚女性なんでしょうか?


古典の季節表現 冬 まさきのかづら

2020年10月25日 | 日本古典文学-冬

神あそひのうた とりもののうた
み山には霰ふるらしと山なるまさきのかつら色付にけり
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

外山(とやま)なるまさきのかづら冬くれば深くも色のなりにけるかな
(和泉式部集~岩波文庫)

寛平御時、后宮の歌合に よみ人しらす 
神無月時雨ふるらしさほ山のまさきのかつら色まさりゆく
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

たいしらす 後京極院 
吹はらふ外山の嵐音たてゝ正木のかつら今やちるらん 
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

しくれこしとやまもいまはあられふりまさきのかつらちりやはてぬる 
(秋篠月清集~日文研HPより)

 おなし人をうちにさそふとて
いてたちて友まつほとの久しさにまさきの葛ちりやしぬらん
 かへし
急かすは散も社すれ紅葉々のまさきの葛おそくくるとて
(実方朝臣集~群書類従14)

神無月の比、岡屋入道前関白もとより、山中何事か侍ると申つかはして侍ける返事に、よみてつかはしける 慶政上人
なかめやるまさきのかつら散はてゝ目にかゝるへき物たにもなし
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)


「むらぞめ」という語

2020年10月24日 | 日本国語大辞典-ま行

 「むらぞめ(斑染)」という単語は、日本国語大辞典では「まだらに図案を染めること。また、そのもの。」と語釈になっていますが、以下の用例だと、語釈は少し違うかなと思います。「まだらに染めること。また、そのもの。」という語釈でよいのではないでしょうか。

 滝紅葉
山姫の滝のしら糸むら染になして落ちそふ嶺の紅葉ば 
(草根集~新編国歌大鑑8)


「繰り懸ける」用例

2020年10月23日 | 日本国語大辞典-か行

 「繰り懸ける」という語には「たぐって引っかける。繰って、物にしかける。」という語釈があり、日本国語大辞典では山家集(12C後)の用例を早い例として挙げていますが、さかのぼる用例があります。

花すゝきまそほの糸を繰りかけて絶えずも人を招きつる哉
『和歌文学大系15 堀河院百首和歌』2002年、明治書院、119ページ