monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

暮春・三月尽

2010年03月31日 | 日本古典文学-和歌-春

こむ年(とし)も来(く)べき春とは知りながらけふの暮るるは惜しくぞありける(風雅和歌集)

つれづ れと花を見つつぞ暮らしつる今日をし春のかぎりと思へば(新後拾遺和歌集)

馴れ着つるかすみのころも飽かでのみはやく暮れゆく春のわかれぢ(草庵集百首和歌)

吉野川かへらぬ春も今日ばかり花のしがらみかけてだにせけ(続後撰和歌集)

やまぶきの花の露そふ玉川のながれてはやき春の暮れかな(風雅和歌集)

花もまた散りぬるはての芥川かへらぬ波に春ぞ暮れぬる(夫木和歌抄)

花鳥(はなとり)のなごりをあとに残しおきていづ くにけふは春のゆくらむ(大膳権大夫行文五十首)

暮れてゆく春のみなとは知らねども霞におつる宇治の柴ぶね(新古今和歌集)

けふといへば惜しまぬかたもなかりけり暮れていづ くに春のゆくらむ(草庵集)

鳴けや鳴けしのぶの森のよぶこ鳥つひにとまらむ春ならずとも(新続古今和歌集)

ながむれば思ひやるべきかたぞなき春のかぎりの夕暮れの空(千載和歌集)

暁(あかつき)は夏とや告げん夕まぐれ春をかぎりの入相の鐘(後土御門院御百首)

夜もすがら惜しみ惜しみてあかつきの鐘とともにや春は尽くらむ(玉葉和歌集)


横瀬夜雨の詩集「花守」より

2010年03月31日 | 読書日記

 横瀬夜雨の詩集「花守」より、気に入った詩を抜き書きします。(青空文庫より)

沈める星
   (子を失ひし人に)

花は根になる春の暮
かへらぬ吾子(あこ)の魂(たましひ)を
櫻が下の墓(おくつき)に
呼びし涙は乾かじな

朝明(あさけ)の名残みだれたる
ちぬの浦曲の虚舟(おぼろぶね)
沈める星の光(かげ)見れば
思ひよ空にさわぐらむ

靜かにそそぐ水にすら
地(つち)ぬらさじと心して
葬りにけむ春くれて
山時鳥鳴かんとす

(後略)


惜春・残春

2010年03月30日 | 日本古典文学-和歌-春

行きて見ん深山(みやま)がくれのおそざくら飽かず暮れぬる春の形見に(風雅和歌集)

ふるさとの花のさかりは過ぎぬれどおもかげ去らぬ春の空かな(新古今和歌集)

吉野やま花のふるさとあとたえてむなしき枝に春風ぞ吹く(新古今和歌集)

花は散りその色となくながむればむなしき空に春雨ぞ降る(新古今和歌集)

濡れて居(を)る藤の下かげ露散りて春やいくかの夕暮れの空(玉葉和歌集)

春もはやあはれいく夜にありあけの月かげほそき横雲の空(延文百首)

春のなごりながむる浦の夕なぎに漕ぎわかれゆく船もうらめし(風雅和歌集)


まさに朧月

2010年03月30日 | 雑日記

 宵のくちに東からのぼる満月を見ることができました。まさに朧月です。月をさえぎる雲はないのですが、少し霞がかかって輪郭がにじんだようになって、とても風情のある眺めでした。低い位置に月があると、中空にあるよりも大きく見えて、贅沢な気分になります。
 思わずウットリ眺めて、王朝時代にトリップしてしまいましたよ。

 桜が咲いていれば、花見に絶好の晩です。なにせ、桜と満月を同時に楽しめる機会は、めったにないことと思いますから(しかも、晴れて)。
 残念ながら、まだ桜は咲いてないので、脳内花見しかできませんが、それでも春の朧月をこの目で見ることができて、心が豊かになった気分です。


平知度、平知忠を花にたとえると

2010年03月29日 | 日本古典文学

 「平家花ぞろへ」より、平知度と平知忠を花にたとえている文章を抜き出します。(「室町時代物語集成12」角川書店)

(平知度)
 このかみたちにもすぐれ、年よりもおとなしやかなる体(てい)、岩に白つつじとこそ。

(平知忠)
 岩つつじの、ことにからくれなゐなる心地したまふ。

 平知度は、清盛の息子のひとり。
 平知忠は、知盛の次男。山吹にたとえられた知章の弟です。