観劇☆備忘録

ミュージカル大好き!

タン・ビエットの唄 (大阪)

2008年02月10日 | ミュージカル
まだ東京公演が始まったばかりなので、ネタバレの直撃はなるべく避けますね。
その為、少し分かりにくい感想になっているかも知れませんが御容赦下さい。

真っ白な状態で舞台をご覧になりたい方は読まないで下さいね



地獄の様なヴェトナム戦争の中を必死に生きた姉妹(姉:ティエン/土居裕子・妹:フェイ/安寿ミラ)と、解放民族戦線の5人の男達(畠中洋/吉野圭吾/宮川浩/駒田一/戸井勝海)の物語。

ヴェトナム戦争をヴェトナム人の側から描いたミュージカル。


女性陣の澄んだ歌声と、男性陣の血管が切れそうなくらいの熱演に圧倒されっ放しの2時間40分。

とても良かったです!


劇場(シアタードラマシティ)に入ると、ロビーに中華風(ヴェトナム?)の衣装を着た女性がお香を持って立っていたり、客席を歩いていたり。

始まる前から中華チックで不思議な雰囲気。


そして開幕。

東洋的な音楽が流れ、蓮の精の可憐な踊りから始まる。

舞台の床がカーペットの様になっていて村人達は皆、素足。
(床はよく見えなかったので違っていたらすみません)

土居さんも素足で、太極拳の様な綺麗な足運びでスッと歩いて来られました。


この様に動き方から相当訓練されたかの様に、出演者の皆さんの動きが綺麗なんです


特に凄いと思ったのが、棒を使った芝居とダンス

この時に皆で歌う「もしも自由を手にしたなら」(『勇気そして希望』)は名曲

ややゆっくりと歌い始めると、さっきまで作業(また、これがお見事)に使っていた棒を全員で「ダン!ダダン!」と床に叩きつけてリズムを取り、そこにピアノやバイオリンなどが絡んで来てどんどんスピードアップ、熱く盛り上がるナンバー

もう最高に格好良かった

このシーンだけでも、もう一度観たい


大抵のミュージカルは「ダンスはアンサンブルさんにお任せ」って感じなのですが、この舞台はメインの皆さんも頑張っておられました。
(もちろんアンサンブルさんも素晴らしかったですよ)


宮川さんや駒田さんなど、あまりダンスの印象が無い方も努力の後が見えましたし、土居さんまで吉野さんに支えて貰って前転

(見事に決まった後、「やったね♪」って感じでさりげなく目を合わせておられたのが微笑ましかったです/笑)


ダンスが得意な人、見事に歌える人、芸達者な演技が出来る人。

それぞれの出演者の強みと魅力(キャラクター)が適材適所で、最大限に活かされ、引き出されていたのがとても嬉しかったです


吉野さんの華麗なダンスとジャンプ
やさぐれてからの熱演、トアン(畠中さん)との口論のシーンはこちらの体温も一気に上昇しました


土居さんの澄んだソプラノ
彼女の歌を堪能できて大満足です
『タン・ビエットの唄』は今でも耳に残っています


戸井さんのソロは一幕ラストの『運命』一曲だけですが、歌い挙げ系で堪能できます。
「もしも自由を手にしたなら」も格好良かったです


宮川さんの人間味溢れる少し濃い目の演技と歌(誉めてます/笑)も憎らしい程ピッタリとハマっていました


駒田さんは二役で、特に父親役が真に迫っていて凄かったです


歌に演技に健闘しておられた畠中さん。
彼が演じる、男らしくて懐が深く面倒見の良いトアンが5人衆の中で一番好きです

二幕冒頭のお笑いネタの最後に大阪弁ネタをやってくれたお巡りさん(福永さん)に「ご苦労様でした」と生真面目に頭を下げておられたのもツボでした(笑)


人間の弱さ、そして強さを熱演・熱唱された安寿さん。
土居さんとのやりとりに何度もウルッと来ました


別れた姉に何があったのか過去と現在を行き来して、段々謎が明らかになって行くサスペンス仕立ての構成も見事ですし。

重い話をテンポ良く見せる演出も素晴らしかった。

(舞台を前後に分けて使い、前で過去の話をしていると後ろでその場面が再現されるなど、常に誰かが、何かが動いていて、流れる様に話が進んで行く。)

何より、一切の無駄のない脚本が最高でした




<ここからストーリーバレが入ります>



民族戦線の5人の男達が皆、純粋で優しいんですよね。

哀しいくらいに…

フェイ(安寿さん)に怒るのも単に彼女が逃げた事を非難しているのではなく、その事で姉のティエンを裏切り傷つけたからだし。

帰って来たフェイに冷たかったのも、ティエンの妹である彼女が真相を知り傷つく事を恐れたからだろうし…。


5人の男達がそこまで愛し、守ろうしたティエン(土居さん)。

彼女は両親や村人を理不尽に殺されても、愛した人に裏切られても未来を信じ、その時に自分出来る最良の道を選んで進んで行くとても強い女性

当時のヴェトナム人達にとって「さよなら」は、永遠の別れを意味していたけれど、彼女にとっての「さよなら」はそうでは無く、また会う為の・・・未来への希望を託す為の「さよなら」。

数々の悲劇と悲しみを越えて、その願いは遂に現実となる。

彼女の意思を継ごうとする人達がいる限り…。


舞台では滅多に泣かない質の私も、このラストシーンには号泣でした

カーテンコールもオールスタンディングで大盛り上がり



ただ闇雲に反戦を唱える舞台ではありません。

人間愛、家族愛、生きる意味・希望など普遍的な物をテーマに、「元気」というより「生きる力」そのものを分けてくれる舞台です


後2~3回は観たいと思いましたが、大阪は二回で終了・・・。
それだけが残念です