宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

NASAの次世代有人宇宙船“オリオン”に欧州が協力

2013年01月25日 | 宇宙 space
NASAとヨーロッパ宇宙機関(ESA)は、
NASAの新型有人宇宙船“オリオン”の開発に、ESAが参加することを発表しました。

“オリオン”は将来、月や小惑星、火星に人間を送り込むことを目指し、
NASAやロッキード・マーチン社が開発中の宇宙船です。

宇宙飛行士が乗るクルーモジュールと、
スラスターや推進剤、太陽電池やバッテリー、生命維持装置などが載るサービスモジュールとに分かれていて、今回、欧州側がサービスモジュールを、提供することで合意したんですねー







“オリオン”
(イメージ図)





サービスモジュールとは、宇宙船の動力供給や推進、船内環境維持などを担う部分です。
これは、欧州の国際宇宙ステーション(ISS)補給機“ATV”の技術を導入することになります。





“オリオン”
(構想図)



ESAはISSへの無人輸送機として“ATV”を開発し、2008年から現在までに3機の“ATV”を運用した実績を持ち、今年は4機目が打ち上げられる予定です。

また、“ATV”はISSに物資を運ぶだけでなく、ドッキング中にエンジンを噴射し、ISS全体の軌道を修正することもできるようになっているんですねー

ESAが有人宇宙船そのものを開発した経験は無いのですが、“ATV”の技術はサービスモジュールの開発にとって十分であると判断されたということです。

“オリオン”は現在、2014年に行われる予定の、EFT-1と呼ばれる飛行に向けて開発が続けられています。

EFT-1では“デルタIVヘビー”という既存の大型ロケットを用いて、
“オリオン”が実際の打ち上げ、宇宙飛行、大気圏への再突入に耐えることができるが試験されます。
この飛行は無人で行われ、ESAのサービスモジュールは、まだ使用されないんですねー

その後2017年にSLSと呼ばれる、
開発中の超大型ロケットを用いて、月への飛行EM-1が行われることになります。
この飛行も無人なんですが、ESAのサービスモジュールが搭載されます。
そして、2021年には4人のクルーを乗せた、初めての有人飛行EM-2が計画されているんですねー

ESAがサービスモジュールを提供する事により、NASAはその分の浮いた開発費を、“オリオン”のカプセル部やSLSの開発・製造に充てることができるんですねー

またESAにとっても、“オリオン”のサービスモジュールという主要部分を押さえることで、“オリオン”の運用にある程度口出しできるようになります。

そして、そのミッションにESAの宇宙飛行士を、参加させることが…
つまり、NASAが挑む小惑星や火星の有人探査という挑戦に、ESAも共同で挑戦できるということになります。

NASAのウェブサイトでは、打ち上げからカプセル帰還までのミッションの流れを、CGアニメで見ることができますよ。

“ケプラー”による系外惑星探査、地球サイズの惑星が増加

2013年01月24日 | 宇宙 space
NASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”の観測で作られた、最新の系外惑星候補リストが発表されました。
このリストには新たに461個が加わり、地球サイズの惑星が多数存在することが明らかになりつつあるんですねー

2009年5月~2011年3月の観測に基づいた今回のリストには、2036個の恒星の周囲にある2740個の惑星候補天体が含まれます。

2012年2月発表の前回リストと比べると、
地球サイズ、または少し大きいスーパーアースサイズの天体の増加が、とりわけ目立つんですねー





“ケプラー”による
系外惑星候補の発見個数を
直径サイズごとに
グラフ化したもの。



また、複数の惑星がある惑星系も、365個から467個に増えています。
“ケプラー”が、これまでに見つけた惑星候補の43%について、同じ惑星系に他の仲間がいるということになるんですねー

“ケプラー”は、惑星が公転運動で恒星の手前を通過(トランジット)することによって、
恒星の明るさが低下する現象を観測する“トランジット法”で、系外惑星を見つけます。

少なくとも3度の減光(公転3回分)が観測されたものから、外部要因と思われるものを取り除いて“惑星候補”を絞り込んでいくんですねー
そして、追観測と解析を行って、晴れて系外惑星として認定されることになります。
前回リストでは確定された惑星は33個でしたが、今回は105個にまで増えています。

2009年の“ケプラー”打ち上げから3年半以上が経ったことで、公転周期の長い小型の惑星の減光観測も十分積み重ねられたきました。
なので、真に地球にそっくりの天体が見つかるのは時間の問題なのかもしれません。

今回のリストをハーバード・スミソニアン天体物理センターで解析したところ、
恒星の17%が、太陽系の水星より軌道の小さい地球サイズの惑星を持つことが分かりました。

この割合を当てはめると、天の川銀河には170億個以上の地球サイズの惑星があることになります。
さらに、地球の軌道ぐらい離れているものや、大型のものも含めると、恒星の70%にも及ぶんですねー
“ケプラー”以外の観測も併せると、太陽と同タイプの恒星のほとんどに惑星が存在するようです。

また、巨大ガス惑星を除き、恒星のタイプによる惑星のタイプの数に、偏りが見られないことも明らかになりました。
「太陽タイプの恒星の方が、地球サイズの惑星が多い」、
「海王星サイズのものが、赤色矮星に少ない」っといった、ばらつきはないようです。

ソユーズの後継機は2020年頃に

2013年01月23日 | 宇宙 space
ロシア宇宙庁が2020年までに、
老朽化するソユーズロケットおよび宇宙船の後継機を開発する計画を発表しました。

計画の総額は6兆2000億円。
月と、そのさらに遠くへの無人宇宙ミッション立ち上げを目標としているんですが、計画の最優先項目はソユーズの後継機開発だったりします。

1960年代に旧ソ連の科学者によって開発され、
ロシアの宇宙探査の屋台骨となってきたロケットが、古くなってきたということです。

ソユーズロケットおよびソユーズ宇宙船は、
1998年の国際宇宙ステーション(ISS)の打ち上げ以降、ISSへの人員往復の要の役割を果たしてきました。
でも、2011年8月、無人宇宙貨物輸送の際に事故が発生し、後続ミッションに遅れが生じていました。

また、昨年以降は、NASAのスペースシャトルが引退したことで、ISSへ宇宙飛行士を送る唯一の手段になっています。

ロシア宇宙庁が発表した計画では、2018年までに試験が可能な推進力を持った、
エネルギー輸送モジュールを導入するそうです。

さらに、月の詳細な研究のための計画の開始や、
月の土壌サンプルを研究するための無人ミッションを複数立ち上げるんですねー

また、計画で「完全に新しい惑星間移動技術および、惑星における人の活動を可能にする技術の導入」を目指すとか…
ひょっとすると、月への有人探査とか、具体的に計画されていくのかもしれません。

ロシア宇宙庁は近年、人口衛星を周回軌道に乗せることに失敗して、
高い注目を集めた火星ミッションが地球に墜落するなど、複数の失敗に見舞われています。

ロシア宇宙庁がNASAに大幅に遅れをとり初めているんですねー

これらの原因には、ロシア宇宙庁からの人材の流失や、下請け会社の効率の悪さが指摘されています。
この指摘どおりなら、NASAに追いつくのは当分先の話になりそうですね。

宇宙理論では存在するはずがない“クエーサー・クラスタ”を発見

2013年01月22日 | 宇宙 space
現代の宇宙理論では、存在するはずがないとされていた規模の超巨大な宇宙構造…
この宇宙構造“クエーサー・クラスター”が、新たな研究により発見されました。

今回の研究では、スローン・デジタル・サーベイのデータが用いられています。

世界各国の研究者からなるチームは、史上最大の“クエーサー・クラスター”を、地球から90億光年の距離に発見したんですねー
クエーサーは若い活動銀河の一種で、今回見つかったクラスターは直径40億光年もあります。





クエーサーの
エネルギー放出の様子
(イメージ図)



地球が属している天の川銀河は、直径がわずか10万光年、
さらに、天の川銀河が位置する“おとめ座超銀河団”でも、その大きさは1億光年程度です。

なので、今回見つかった“クエーサー・クラスター”が、どれほど大きいか分かりますよねー
この“クエーサー・クラスター”は、これまで知られていた中で、最も大きな宇宙構造となるようです。

クエーサーが場合によっては、
「直径7億光年以上という巨大なクラスターを形成する」ということは、
かねてから天文学者の間では知られていたようです。

でも今回見つかった、73個のクエーサーからなるクラスターの40億光年という巨大な直径は、天文学者を悩ませているんですねー

これは、現在の宇宙物理学のモデルでは、「宇宙構造の大きさの上限は12億光年を越えることはない。」と考えられているからです。
なので、今回の発見は、現在の認識に疑問を突きつけるものであり、謎が解決されるどころか、新たな謎が生まれたと言えます。

この巨大な宇宙構造の意義は、その記録破りの大きさだけにとどまらず、
私たちが属する天の川銀河をはじめとする、さまざまな銀河の進化過程を明らかにしてくれる可能性を持っているんですねー

高いエネルギーを放つクエーサーは、
宇宙の初期の段階で発生し、最大級の明るさとエネルギーを持つ天体です。
これは、大多数の銀河の進化の初期における、ごく短い時期の姿だと考えられています。

こうした巨大なクエーサー群は、
「現在の宇宙における超銀河群の先駆け的存在だったのではないか?」とする説もあります。
でも、両者の関係の正確な性質は、いまだに謎のままなんですねー

また今回の発見は、一義的にコンピュータによる、モデル化の研究対象ではあるのですが、望遠鏡を使った観察よってさらに綿密に検証される必要があるようです。

この構造は、ビッグバン以降に宇宙で形成された衝撃波に基づいた予想よりも大きいようで、
何らかのメカニズムが、クエーサーをこれほど大規模に、しかも短時間で集めている可能性が高いんですねー
そして、このメカニズムが、初期宇宙の状態に関連しているとも考えられていようです。

赤外線天文衛星“あかり”がとらえた大マゼラン雲

2013年01月21日 | 宇宙 space
地球から約16万光年離れたところにある大マゼラン雲。

  南半球の空にかかる天の川の下、真ん中よりやや右寄りにぼんやりと見えるのが大マゼラン雲、
  左下にはかすかに小マゼラン雲が見える

この銀河は天の川銀河の伴銀河で、南半球の夜空では小マゼラン雲と並んでいるのが肉眼でわかり、その名のとおり雲のように見えるんですねー

地球からは、この銀河をほぼ真上から見下ろすことができるんですねー
なので、1つの銀河の中で星の誕生や進化が、どのようにして起こるのか?
また、それらの活動がどう関連し、物質が循環しているかを調べるには、
かっこうの天体で盛んに研究が行われています。

JAXA宇宙科学研究所と東京大学などの研究では、
赤外線天文衛星“あかり”が2006年~2007年に行った観測から、
この大マゼラン雲の赤外線天文カタログとスペクトルカタログが作成・公開されました。

カタログには、5つの赤外線波長でとらえられた、66万個以上の天体の位置や明るさが記載されているんですねー
そのうち1757個については、赤外線のスペクトルについてもまとめられています。





大マゼラン雲の
星形成領域“N48”で
取得したスペクトル
波長ごとの強さから
その位置に存在する
分子がわかる



世界で初めてとらえた波長でのデータも含まれていて、
生まれたての星や、進化した星… そして惑星系形成など様々な研究に役立つと期待されています。

赤外線天文衛星“あかり”は、2006年2月に打ち上げられ、2011年11月に運用を終了しています。
でも、そのデータベースを元にした分析研究は、引き続き行われているんですねー

“あかり”による大マゼラン雲の近・中間赤外線サーベイについては、これまでにも成果が発表されてきましたが、今回の発表はその集大成となるようです。