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クエーサー中心部に潜む超大質量ブラックホールの質量を調べる方法

2019年01月14日 | ブラックホール
25億光年彼方のクエーサー“3C 273”を高解像度で観測してみると、クエーサーの中心に存在する超大質量ブラックホールの周りを、ガス雲が高速で回転運動している様子がとらえられました。

これまで、ブラックホールの質量測定には、クエーサーからの光の変動を利用するしかありませんでした。
でも、今回の観測手法を使えば質量の測定が可能になるんですねー

宇宙に多数存在するクエーサーの超大質量ブラックホールの質量を測定する上で、今回の計測手法が1つの基準になるようです。


銀河の中心1%程度のコンパクトな領域からエネルギーを放出する天体

星、星間チリ、星間ガスといった通常の銀河の構成要素とは別の部分からエネルギーの大半が放出されている特殊な銀河を活動銀河と呼びます。

このエネルギーは、活動銀河の種類によって若干異なりますが、電波、赤外線、紫外線、X線、ガンマ線など、電磁波のほぼすべての波長域で放出されているんですねー

エネルギーの大半は、銀河の中心1%程度のコンパクトな領域から放出されていて、この部分を活動銀河核と呼びます。


クエーサーの中心に存在する超大質量ブラックホール

1963年にオランダの天文学者マーティン・シュミットによって初めて発見されたのが、活動銀河の1つクエーサーでした。

そのクエーサー“3C 273”は、おとめ座の方向25億光年彼方にあり、天の川銀河内の星全てを合わせた明るさの100倍もの輝きを放っていたんですねー
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ハッブル宇宙望遠鏡によるクエーサー“3C 273”(画像中央)の可視光線画像
今回の研究では、ドイツ・マックスプランク地球外物理研究所のチームが、“3C 273”の中心部分を詳しく観測。
用いられたのは、ヨーロッパ南天天文台パラナル観測所のVLT干渉計に設置された装置“GRAVITY”でした。
  “GRAVITY”は4つの望遠鏡を連動させて、
  口径130メートルに相当するバーチャルな望遠鏡として機能するため、
  非常に高い解像度を得ることができる。


そして、とらえたのが、“3C 273”の中心部分に存在する超大質量ブラックホールの周りを、ガス雲が回転運動している様子でした。


ガス雲の運動からブラックホールの質量を測定する

天の川銀河以外の銀河の中心で、ガス雲の回転運動が詳しく調べることができたのは初めてのこと。
“GRAVITV”は初めてブラックホールの周りを細部まで見せてくれたんですねー

今回の観測によりガス雲の運動を明らかにすることができました。
観測された領域の実際の大きさは太陽系程度。でも、25億光年も離れているので見かけの大きさは極めて小さいようです。

これまで、超大質量ブラックホールからガスまでの距離や、ガスの動きのパターンの計測には、クエーサーからの光の変動を利用するしかありませんでした。

それが、“GRAVITY”では、10マイクロ秒角のレベルで構造を見分けることが可能なんですねー
この精度は、月面に置いた硬貨を地球から観測できるレベルです。

また、ガス雲の回転運動の測定からブラックホールの質量が太陽の約3億倍であると計算され、過去にクエーサーの光の変動から見積もられていた値と一致することも確認されています。

今回の成果が意味しているのは、宇宙に多数存在するクエーサーの超大質量ブラックホールの質量を測定する上で、“GRAVITY”の計測結果が1つの基準になることですね。


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