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モバライダー mobarider

宇宙で最も明るい銀河は、中心にある超大質量ブラックホールによって輝いている

2018年12月09日 | ブラックホール
2023年12月23日更新
宇宙で最も明るい銀河が、周囲にある3つの銀河を飲み込みつつある様子がアルマ望遠鏡の観測でとらえられました。

なぜ、この銀河は最も明るい銀河になれたのでしょうか?

3つの銀河のガスやチリ、そして超大質量ブラックホールが銀河の輝きを作っているようです。


宇宙で最も明るい銀河

これまでに知られている銀河の中で最も明るいのはどの銀河でしょうか。

それは、2015年にNASAの赤外線天文衛星“WISE”によって発見された、みずがめ座方向の銀河“W2246-0526”。
その明るさは太陽の350兆倍もあり、宇宙に存在する銀河すべてを地球から同じ距離に置くことができれば、“W2246-0526”が最も明るく見えるそうです。

今回、アルマ望遠鏡による観測でとらえたのは、少なくとも3つの小さい銀河のガスやチリが“W2246-0526”へと引き込まれつつある様子でした。

それでは、なぜ宇宙で最大の銀河では無い“W2246-0526”が、最も明るい銀河になったのでしょうか?

その理由は、他の銀河から引き込まれつつあるガスやチリにあるようです。


銀河中心部に存在するブラックホールが輝きを作っている

“W2246-0526”が明るく輝ける原因は、中心部に存在している超大質量ブラックホールにあるようです。

この超大質量ブラックホールが他の銀河からガスやチリを引き込むと、ブラックホールへ落下する物質は角運動を持つので、降着円盤と呼ばれるへんぺいな円盤をブラックホールの周囲に作ります。
この降着円盤内のガスやチリは、非常に高速に回転することで摩擦熱を発生し、電離してプラズマ状態になるんですねー
電離したガスやチリは回転しているので強力な磁場が作られ、降着円盤からは荷電粒子のジェットが噴出され、非常にまぶしく輝く訳です。
この非常に明るい銀河中心部の天体を活動銀河核と呼ぶ。
3つの小銀河から“W2246-0526”に流れ込むガスやチリの量は、ブラックホールで消費される量を十分に補充できているようです。
銀河“W2246-0526”周辺の観測画像。アルマ望遠鏡の観測により得られた電波データから作成。
銀河“W2246-0526”周辺の観測画像。アルマ望遠鏡の観測により得られた電波データから作成。


他の小銀河と“W2246-0526”とをつなぐチリの尾

チリ・ティエゴ・ポルタレス大学の研究チームは、“W2246-0526”と他の銀河のうち1つとをつなぐチリの尾のような構造を見つけています。

この尾の位置や形状は、ある銀河から別の銀河へと物質が流れていく際に見られるものと一致。
過去のデータから、3つの小銀河の存在は分かっていたのですが、それらの銀河と中心の銀河との相互作用を示す証拠が見つかったのは、今回が初めてのことでした。

この様子を非常にはっきりと見ることができたのは、アルマ望遠鏡による観測のおかげでした。
W2246-0526”周辺の画像。水色の線で囲まれた部分に“W2246-0526”があり、その周りに小銀河のC1~3が存在する。Tidal Tailと書かれた部分に、銀河をつなぐガスやチリからなる尾がある。
“W2246-0526”周辺の画像。水色の線で囲まれた部分に“W2246-0526”があり、その周りに小銀河のC1~3が存在する。Tidal Tailと書かれた部分に、銀河をつなぐガスやチリからなる尾がある。


なぜ強力に輝くことができるのか

“W2246-0526”は約124億年前の初期宇宙に存在する天体です。

この距離(過去へ遡る時間の長さ)は、複数の物質供給源を持つ銀河としては、これまでに発見されている中で最も遠いもの。
アルマ望遠鏡の40台のアンテナによる2時間半かけて行われた観測により、これほど遠くかすかな銀河を、高感度かつ高精度で調べることができたんですねー

“W2246-0526”は、高温のチリに隠された銀河“Hot. Dust-Obscured Galaxies(Hot DOGs)”と呼ばれる珍しい種類の天体でもあります。

ただし、この銀河が大量のチリに隠されたクエーサーの代表的な存在なのか、あるいは特殊な存在なのかは、まだはっきりとは分かっていません。
クエーサーは活動銀河核の一種。銀河の中心核だけで残りの銀河全体よりもはるかに明るく輝いている天体。
“WISE”によって発見された他の銀河の約2倍も明るく輝いている“W2246-0526”。
非常に初期の宇宙で形成された銀河なので、“W2246-0526”は他に仲間のいない独特な銀河の可能性もあります。

一方、現在の典型的な銀河の1000倍も明るい、チリに覆われた遠方の銀河は“WISE”で数多く見つかっています。
ひょっとすると、チリに隠されたクエーサーと銀河の進化における重要な段階で起こる現象を、“W2246-0526”は見せてくれているのかもしれません。

“W2246-0526”の超大質量ブラックホールの質量は、太陽の約40億倍見積もられていますが、その強力な明るさを説明するには、その3倍の質量を持つ超大質量ブラックホールが必要になるようです。

銀河が輝く現象にブラックホールが関わっていることは分かりましたが、なぜここまで強力に輝くことできるのでしょうか?
この謎については今後の観測に期待ですね。
“W2246-0526”と周囲のイメージ図。
“W2246-0526”と周囲のイメージ図。



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