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表面を覆う氷の下に海を持つ太陽系外惑星は存在している? 一部は間欠泉活動の観測で見つかるかもしれない

2024年01月26日 | 系外惑星
木星の衛星エウロパや土星のエンケラドスのように、太陽系にある氷で覆われた天体の一部には、地下に広大な海が存在していると予測されています。
その中には、地下海の有力な証拠と考えられる間欠泉が確認されている天体もあるんですねー

今回の研究では、似たような環境を持つ太陽系外惑星が存在する可能性を探るため、17の惑星について調査を実施。
その結果、いくつかの惑星には氷の下に海が存在する可能性があることを突き止めています。

また、“プロキシマ・ケンタウリb”や“LHS 1140b”など一部の惑星では激しい間欠泉活動が起きている可能性があり、噴出した水や、水に含まれる分子の存在を望遠鏡で観測できる可能性があるようです。
この研究は、NASAのゴダード宇宙飛行センターのLynnae C. Quickさんたちの研究チームが進めています。
図1.2009年に探査機“カッシーニ”が撮影したエンケラドスの間欠泉。この画像では30か所以上の噴出口が確認された。(Credit: NASA/JPL/Space Science Institute)
図1.2009年に探査機“カッシーニ”が撮影したエンケラドスの間欠泉。この画像では30か所以上の噴出口が確認された。(Credit: NASA/JPL/Space Science Institute)


表面を覆う氷の層の下に海を持つ天体

表面を氷で覆われた低温の天体は、一見すると生命に適した環境には見えませんよね。

でも、分厚い氷の層の下に大量の液体の水があるとしたら…
そう、そこには海が存在する可能性が指摘されているんですねー

では、なぜ水は凍らずに存在できるのでしょうか?
それは、氷を解かす熱源があり、“他の天体からの潮汐力による過熱”(※1)や“岩石に含まれる放射性元素の崩壊熱”などが考えられています。
※1.天体の軌道が円形でないとき、惑星(や衛星)から遠いときはほぼ球体の天体も、接近するにしたがって惑星(や衛星)の重力で引っ張られ極端に言えば卵のような形になる。そして惑星(や衛星)から遠ざかるとまた球体に戻っていく。これを繰り返すことで発生した摩擦熱により天体内部は熱せられる。このような強い重力により、天体そのものが変形させられて熱を持つ現象を潮汐加熱という。
厚い氷の層の下に海があると考えられている天体として有力なのは、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラド。
これらの天体では、水を主成分とするプルーム(間欠泉、水柱)が観測されていて、氷の下の海が水の供給源だと考えられています。

では、太陽系外の惑星でも同じように氷の下に海を持つ天体は存在するのでしょうか?
仮に存在するとした場合、そのような惑星を発見する方法はあるのでしょうか?


地下海を持つ天体の条件

今回の研究では、氷の層の下に海を持つ太陽系外惑星(系外惑星)が存在する可能性を探るため、2つの性質を満たしている17の惑星を調査しています。

1つ目の条件は、地球と比べて直径はおよそ2倍以下、質量は8倍以下の天体です。
この条件に合う惑星は、地球と比べて平均密度が低いものになります。

氷は岩石と比べて密度が低いので、低密度な惑星は氷が主体になる可能性があります。
また、直径を地球のおよそ2倍以下に制限しているのは、低密度な理由が氷ではなく豊富なガスになる亜海王星(地球と海王星の中間的な性質を持つ惑星)である可能性を排除するためです。

2つ目の条件は、推定表面温度がマイナス18℃未満の惑星です。
この温度は、地球に大気が存在しないと仮定した場合の表面温度(平衡温度)と同じであり、これよりも表面温度の低い惑星では表面の水が凍っている可能性が高くなります。
大気が存在する場合の惑星の表面温度を指定することは困難なので、このような前提で計算されています。

ただ、特に2つ目の条件は再検討が必要と言えます。
それは、例え独自の分厚い大気が無かったとしても、惑星表面を構成する氷などの光の反射率、そしてプルーム(間欠泉、水柱)や宇宙風化によって生成される水蒸気の薄い大気など、表面温度を変更する要素がいくつもあるためです。


内部の加熱と氷の厚さと地下海の規模

今回の研究では、エンケラドスやエウロパの観測データや最新のモデリングをもとに、氷が主体の惑星の表面温度を改めて計算。
その結果、これまでのモデルと比べて最大で30℃も温度が食い違うことを発見し、より正確な状況の把握が可能になりました。

研究チームでは、新たに得られた惑星のデータを元に、潮汐力や放射性物質の崩壊熱などを推定。
そこから氷の厚さ、氷の下の海の規模、そして間欠泉活動の予測を行っています。

まず、内部活動については、全ての惑星の内部でエンケラドスやエウロパを超える熱が発生していて、一部の惑星では地球や木星の衛星イオ(※2)を超える熱が生じていると推定されました。
この熱の発生からは、氷の下に海を形成する可能性が高いことが分かります。
※2.イオは木星のガリレオ衛星の1つで、太陽系の衛星の中では4番目に大きく、半径は1800キロ強と地球の3分の1にもなる。他のガリレオ衛星から潮汐力を受け、内部が加熱されて高温のマグマを放出していてる。内部を加熱する熱の発生量は100兆ワットと推定されていて、これは地球の熱(47兆ワット)の2倍以上になる。
図2.今回分析された惑星の内部の熱の推定値。全ての惑星がエウロパを超えているだけでなく、一部の惑星は地球やイオを超えていると推定されている。(Credit: Lynnae C. Quick, et al.)
図2.今回分析された惑星の内部の熱の推定値。全ての惑星がエウロパを超えているだけでなく、一部の惑星は地球やイオを超えていると推定されている。(Credit: Lynnae C. Quick, et al.)
推定された氷の厚さの値は、最も薄い“プロキシマ・ケンタウリb”の58メートルから、最も分厚い“MOA-2007-BLG-192L b”の38.7キロまで様々なもの。
ただ、この値は惑星全体の平均値になるので注意が必要なんですねー

例えば、エンケラドスの氷の平均的な厚さは25キロですが、プルームが噴き出している極域では10キロ未満になっているようです。
これとは逆に、氷の厚さの平均が30キロで、極域では66キロまで厚くなっているのがエウロパです。

エンケラドスとエウロパでは、表面温度や内部の熱源の配置の違いによって極域の氷の厚さが全く異なっています。
このことから、太陽系外惑星の氷も局所的に平均値より極端に薄い・厚い場所がある可能性は否定できません。
ただ、どの惑星の氷の厚さも地殻と表現される50キロを下回ることは興味深い発見になります。

さらに、一部の惑星では水のプルームの放出量が推定されています。

最も少ない“ケプラー441b”から噴出している水の量は、毎秒7.5キログラムとわずかなもの。
一方、氷の厚さが58メートルしかないと推定される“プロキシマ・ケンタウリb”では毎秒610トン、厚さ1.7キロと推定される“LHS 1140 b”では毎秒29トンの水が噴出していると推定されました。

エウロパの水の噴出量が毎秒2トンであることを考えると、いかに激しい噴出であるかが分かります。
噴出した水は、凍った粒となって惑星の周りを覆うことになります。

もし、プルームの噴出量が間欠泉のように時間と共に変化する場合、遠く離れた地球から観測すると、それは水の量の変化として観測されるはずです。
また、氷の粒の中に他の分子が含まれる場合、水と共に検出される可能性もあります。

噴出した水やその他の分子の観測は、強力な望遠鏡を使えば可能になるようです。


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