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モバライダー mobarider

超新星爆発を起こして姿を消した黄色超巨星

2013年05月25日 | 宇宙 space
夜空に輝く星のうち大質量のものは、あるとき自分自身の質量を支えきれなくなって、
急激につぶれて大爆発を起こすことがあります。

これは“重力崩壊型超新星爆発”と呼ばれる現象で、
超新星爆発を引き起こす星の性質や、爆発の多様性の起源を追求することは、宇宙物理学において重要な課題となっているんですねー

これまで、“重力崩壊型超新星爆発”を起こすほど大きな質量の星は、
爆発の直前には、星の生涯の末期にあたる、大きく膨れ上がった低温の星“赤色巨星”か、
明るさが太陽の10万倍程度、表面温度が数万から10万Kに達している高温の恒星“青色コンパクト星”になると考えられていました。

でも、りょうけん座の銀河“M51”に出現した、超新星“SN2011dh”は様子が違っていました。

ハッブル宇宙望遠鏡で撮影されていた超新星爆発前の画像を解析したところ、
超新星爆発が起こった場所に、星の進化の途中であり超新星爆発を起こさないはずの黄色超巨星があったのが見つかったんですねー

早期の光学観測や電波観測から、爆発した星は暗くて見えない“青色コンパクト星”であり、
見つかった黄色超巨星は爆発した星の伴星か、超新星とは無関係で地球からは、偶然同じ場所に見えていたと考える研究者もいました。
もちろん、この場合には超新星の光が収まった後には、再び黄色超巨星が観測できるはずです。

一方、初期の光度曲線を流体力学的計算によってモデル化する理論研究では、
爆発した星が黄色超巨星であるとした時のみ、観測された光度曲線をよく再現することをつきとめていました。

また、2つの大質量の星がひじょうに接近した連星系の進化を計算し、黄色超巨星に成長して爆発する場合があることを見つめ出しました。
さらに、この計算から超新星の光が収まった後には、黄色超巨星は観測されず、伴星の“青色コンパクト星”が観測されることを予測しています。





超新星出現前(左)と
出現2年後(右)



そして、2013年3月にハッブル宇宙望遠鏡による観測から、
超新星の場所が、爆発前にあった黄色超巨星の明るさより暗くなっていること、
すなわち黄色超巨星が、確かに無くなってしまっていることが分かりました。
黄色超巨星が消えてしまうという、流体力学的計算による理論研究の予測が観測により証明されたんですねー

黄色超巨星の爆発が証明されたことによって、パズルの最後の一片として残されたのは、
連星のモデルから予測される、黄色超巨星の伴星であった星を発見することになりました。

計算によると、黄色超巨星が爆発した時点で、伴星は大質量の青色の星に進化していることになります。
この星は表面温度が高いので、主に紫外線領域の光を発していて、
爆発前の可視光領域の観測では、黄色超巨星の明るさに隠されていたと考えられます。







超新星爆発直前の
青色コンパクト星(左)と
黄色超巨星(右)の連星系
(イメージ図)





でも近い将来、超新星爆発の光がじゅうぶんに暗くなった後であれば、暗い伴星でも観測可能になると予測されています。
2014年には、ハッブル宇宙望遠鏡や、すばる望遠鏡を用いて観測を行い、
超新星爆発メカニズムのモデルの最終的な検証を行うようですよ。


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