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モバライダー mobarider

大小マゼラン雲で星形成が急上昇したのはなぜ? 天の川銀河との合体が始まっていることが原因のようですよ

2019年02月04日 | 銀河・銀河団
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大マゼンラン雲と小マゼラン雲に含まれる星々の重元素量のマップから、銀河の星形成の歴史が分かってきたんですねー

星の形成は、最初のうちは天の川銀河の50分の1ほどと非常にゆっくりで、今から20億年前に急上昇へ転じたようです。

なぜ、急に星が形成され始めたのでしょか?
そこには、大小マゼラン雲と天の川銀河が辿る歴史が絡んでいるようです。


銀河の中で重元素が増えていく歴史の記録

銀河としては地球から最も近い距離(16万光年)の位置あり、天の川銀河の伴銀河である大マゼラン雲と小マゼラン雲。
南半球の空に見える連銀河で、1520年のマゼランによる航海の途中で見つかったので、この名前が付けられています。

そして、両銀河に含まれる星のデータから、星の形成史に関する研究を進めているのが、アメリカ国立光学天文台“NOAO”およびモンタナ州立大学のチームです。
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肉眼で見ることができる銀河、
大マゼラン雲(右)と小マゼラン雲(左)。
星のスペクトルを調べると、星の運動や温度、化学組成、さらに一生のうちでどの段階にあるかといった情報が分かります。
これらの情報から、銀河の中でどの時代にどのくらい星が作られていたかという歴史を推測することができます。

重い星は寿命が短く、一生の最期に超新星爆発を起こして重元素(水素とヘリウム以外の元素)を銀河内へ放出します。

放出された元素は銀河内のガスと混ざり合って次世代の星の材料になり、旧世代の化学組成が受け継がれた星が誕生します。

こうしたプロセスが何度も繰り返されるうちに、大質量星よりも寿命の長い低質量星には、銀河内で重元素が増えていく歴史が記録されていきます。

そこで星々の重元素量をマッピングすると、銀河の星形成史を読み解くことができるんですねー
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位置天文衛星“ガイア”のデータから作られた大マゼラン雲の画像に、
今回の研究で得られた星の重元素量マップを重ね合わせたもの。
紫は重元素が多く、黄色は少ない。


星形成が急上昇した原因

研究の結果分かってきたのは、大小マゼラン雲内の星形成の歴史が天の川銀河とは完全に異なっていること。

天の川銀河では、最初のうちは非常に活発だった星形成が、その後は落ち着いていきます。
対照的に、大小マゼラン雲の星形成は、最初のうちは天の川銀河の50分の1ほどと非常にゆっくりで、今から20億年前に急上昇へ転じたようです。
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天の川銀河(黒)と大マゼラン雲(青)の星形成史の比較。
天の川銀河の星形成率は最初は高く、その後は下がり続けている。
大マゼラン雲では、最初はゆっくりとした星形成で、20億年前から急上昇している。
それでは、大マゼラン雲と小マゼラン雲で星形成が急上昇した原因は何でしょうか?
それは、両銀河と天の川銀河との相互作用だと考えられています。

大小マゼラン雲の一生は、宇宙の比較的孤立した一角でひっそりと始まったので、星形成がほとんどありませんでした。
それが、数十億年前から始まった天の川銀河を含む銀河同士の相互作用によってガスが圧縮され、星が誕生するようになったようです。

大小マゼラン雲は、今後数十億年の間に天の川銀河に引き込まれていき、合体が進んでいくことになります。
それにつれて、両銀河内の星形成はさらに激しくなり、25億年以内には大マゼラン雲は完全に天の川銀河に飲み込まれてしまいます。

ただ、小マゼラン雲は星の材料になる水素ガスが急速に失われているので、星形成が完全に止まってしまう可能性もあります。

星形成がさらに激しくなり輝きだすのか、星形成が止まってしまい徐々に暗くなって消え去っていくのか、大小マゼラン雲の星の形成史はどうなるのでしょうね。


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1 コメント

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興味深い記事をありがとうございます (奈緒美)
2019-02-05 12:54:45
「星々の重元素量をマッピングすると、銀河の星形成史を読み解くことができる」って、初めて知りました。星形成史、知れば知るほど、面白いですね。小さな子ども向けの教室をしているのですが、教室の子どもたちも星や宇宙の話題が大好きです。子どもたちの希望で、教室内に宇宙を作って遊ぶこともあります。
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