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木星へ向けて! NASAの小惑星探査機“Lucy”が地球スイングバイのためのエンジン燃焼に成功

2024年02月10日 | 太陽系・小惑星
NASAの小惑星探査機“Lucy(ルーシー)”は2月3日、地球への接近に向けて重要となるエンジン燃焼を成功させました。
図1.NASAの小惑星探査機“Lucy(ルーシー)”のイメージ図。(Credit: NASA)
図1.NASAの小惑星探査機“Lucy(ルーシー)”のイメージ図。(Credit: NASA)
“Lucy”は、2021年10月16日にユナイテッド・ローンチ・アライアンスの“アトラスV-401”ロケットに搭載され、ケープカナベラル空軍基地から打ち上げられた探査機です。

“Lucy”ミッションの主な目的は、木星のトロヤ群に属する小惑星の探査を行うこと。
複数の小惑星を訪れることから、ミッションの期間は2021年から2033年までの12年間が予定されています。

木星のトロヤ群とは、木星の公転軌道を移動する小惑星のグループ。
太陽から見て、木星に対して60度前方あるいは60度後方の軌道に分布しています。
すなわち、太陽と木星の重力や小惑星のグループにかかる遠心力が均衡するラグランジュ点L4・L5付近を運動する小惑星のグループのことです。
最初に見つかった小惑星にトロイア戦争の英雄にちなんだ名前が付けられたことから“トロヤ群”と呼ばれています。
図2.太陽(黄)を中心に、水星~木星までの惑星(白)と木星のトロヤ群に属する小惑星(緑)の位置を示したアニメーション。トロヤ群の小惑星は木星(Jupiter)に先行するL4点のグループと、後続するL5点のグループに分かれている。(Credit: Astronomical Institute of CAS/Petr Scheirich (used with permission))
図2.太陽(黄)を中心に、水星~木星までの惑星(白)と木星のトロヤ群に属する小惑星(緑)の位置を示したアニメーション。トロヤ群の小惑星は木星(Jupiter)に先行するL4点のグループと、後続するL5点のグループに分かれている。(Credit: Astronomical Institute of CAS/Petr Scheirich (used with permission))
探査機が惑星の近傍を通過するとき、その惑星の重力や公転運動量などを利用して、速度や方向を変える飛行方式があります。

この飛行方式の特徴は、燃料を消費せずに軌道変更と加速や減速が行えることにあります。
積極的に軌道や速度を変更する場合を“スイングバイ”、観測に重点が置かれる場合を“フライバイ”と言い、使い分けています。

2月3日、“Lucy”は2回目の地球スイングバイに向けて、36分間にわたりメインエンジンを噴射し地球に接近する軌道に入りました。
スイングバイが成功すれば、“Lucy”は現在の火星と木星の間の小惑星帯をかすめる軌道から、木星付近に探査機を移動させる軌道へ入ることになります。

推進剤の半分を使い果たした“Lucy”は、地球の重力を利用して史上初めてトロヤ群の小惑星へ向かうことになります。
図3.NASAの小惑星探査機“Lucy(ルーシー)”の予定軌道。(Credit: NASA/Goddard/SwRI)
図3.NASAの小惑星探査機“Lucy(ルーシー)”の予定軌道。(Credit: NASA/Goddard/SwRI)
地球スイングバイを行って軌道を修正した“Lucy”は、2025年には2つ目の探査対象である小惑星帯の小惑星ドナルドジョハンソン(Donaldjohanson)のフライバイ探査を行います。

幾つもの小惑星を一度のミッションで探査する“Lucy”は、小惑星を周回する軌道には入らず、通過しながら探査するフライバイ観測を行うんですねー

その後は、2027年のエウリュバテス(Eurybates)とその衛星ケータ(Queta)をはじめ、ミッションの主目標である木星のトロヤ群の小惑星探査が行われる予定です。

ディスカバリー計画のミッションとして2017年に選定された“Lucy”。
このミッションは、NASAによる低コストで効率の良いミッションを目指したディスカバリー計画により、提案されていました。

ディスカバリーと言えば、1992年に当時のNASA長官が提唱した、「より速く、より良く、より安く」のスローガンを体現する計画。
過去のディスカバリー計画の探査ミッションには、小惑星“ベスタ”と準惑星“ケレス”を探査した“ドーン”、太陽系外惑星探査を行う“ケプラー”、彗星を探査した“メッセンジャー”などがあります。

そう、低コストのミッションなのに高パフォーマンス!
どれも素晴らしい結果を残しているんですねー

“Lucy”のミッションでも、太陽系の成り立ちやその経過の解明に役立つ発見があるはずです。


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