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モバライダー mobarider

合体途中のそれぞれの銀河の中心で明るく輝く超大質量ブラックホール“二重クエーサー”を新たに発見。

2020年08月29日 | 銀河と中心ブラックホールの進化
すばる望遠鏡がとらえた3万個以上のクエーサーから選び出されたのは、400個以上の二重クエーサー候補でした。
これらを他の大型望遠鏡を用いて追観測してみると、3つの二重クエーサーが特定され、そのうちの2つは新たに判明したものでした。
二重クエーサーは、銀河が合体する過程で、それぞれの銀河中心にある超大質量ブラックホールが明るく輝いている状態の天体。
これを詳しく調べることで、銀河の合体や進化、超大質量ブラックホールの成長過程などの研究が進むようです。


銀河の合体や衝突で見られる二重クエーサー

宇宙では、銀河同士が衝突するという、大変ダイナミックな現象が頻発しています。

その銀河の中心には、質量が太陽の数百万倍から数十億倍にも及ぶ超大質量ブラックホールが存在し、そこに大量のガスが流入すると銀河全体よりも明るく輝くクエーサーとして観測されます。
クエーサーは、銀河中心にある超大質量ブラックホールに物質が落ち込むことで生み出される莫大なエネルギーによって輝く天体。遠方にあるにもかかわらず明るく見える。

さらに、銀河が衝突や合体するときには、ガスの流入量が特に多くなります。
そこで期待されるのが、2つのブラックホールが二重クエーサーとなった姿が見られることです。

でも、2つのクエーサーが同時に輝いている期間は短いんですねー
さらに、見つけるには広い観測領域と近接した2点を分解できる高い解像度の両方が必要になります。

なので、多くの二重クエーサーを見つけて、研究を進めることは困難なことでした。


新たに発見された2つの二重クエーサー

東京大学国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究所や国立天文台の研究者による国際共同研究チームは、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ“HSC”で撮影された画像の中から、すでに知られている3万4476個のクエーサーを調査。
“HSC(Hyper Suprime-Cam:ハイパー・シュプリーム・カム)”は、すばる望遠鏡に搭載されている超広視野主焦点カメラ。満月9個分の広さの天域を一度に撮影でき、独自に開発した116個のCCD素子により計8億7000万画素を持つ。まさに巨大な超広視野デジタルカメラ。

その中から選び出したのは、2つもしくは、それ以上の光点を持っていると見られる天体421個でした。

これらが真の二重クエーサーであることを確かめるため、他の望遠鏡による追観測を実施。
すると、3つが二重クエーサーだと特定することができました。
今回見つかった二重クエーサー“SDSS J141637.44+003552.2”。地球から約47億光年の距離にあり、2つのクエーサーは1万3000光年離れている。(Credit: Silverman et al.)
今回見つかった二重クエーサー“SDSS J141637.44+003552.2”。地球から約47億光年の距離にあり、2つのクエーサーは1万3000光年離れている。(Credit: Silverman et al.)

このうち2つは、これまでに知られていなかった二重クエーサーでした。

このことから推定されるのは、全クエーサーのうち0.3%は、銀河の合体過程で超大質量ブラックホールが2つ存在しているということ。

今後も研究チームでは、二重クエーサーの特定を続けていくそうです。
これにより、銀河や超大質量ブラックホールの合体や進化についての理解が深まるといいですね。


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