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星形成が止まった“小マゼラン雲”は、徐々に暗くなって穏やかな死を迎えることになる

2019年01月05日 | 銀河・銀河団
天の川銀河の伴銀河“小マゼラン雲”から、水素ガスが急速に失われていることが電波観測で明らかになりました。

水素ガスといえば星を形成する材料です。
その星の材料が失われていっているということは、“小マゼラン雲”ではやがて星形成が完全に止まるかもしれないんですねー

“小マゼラン雲”は徐々に暗くなってやがて消え去っていくのかもしれません。


天の川銀河の周囲を公転している小さな銀河

オーストラリア国立大学の研究チームは、銀河の進化を調べるプロジェクトを進めています。

このプロジェクトの一環で観測しているのが、天の川銀河の伴銀河“小マゼラン雲”。
  伴銀河とは、重力の相互作用により、より大きな銀河の周囲を公転している銀河。
  小マゼラン雲のそばには、やはり天の川銀河の伴銀河で“小マゼラン雲”より少し大きな
  “大マゼラン雲”がある。


“小マゼラン雲”は地球から約18万光年の距離にあり、質量は太陽の数十億倍と見積もられていて、直径も質量も天の川銀河の10分の1以下という矮小銀河です。
  矮小銀河は、数十億個以下の恒星からなる小さな銀河。
  天の川銀河には2000億~4000億個の恒星が含まれているが、
  矮小銀河の規模はこの約1/100以下になり、
  特に小規模な矮小銀河は球状星団と区別できないこともある。

今回の観測で得られたのは、これまでの“小マゼラン雲”の電波画像に比べて3倍以上も分解能(細かい部分を見分ける能力)が向上した画像でした。
この画像により、“小マゼラン雲”が周囲の環境と相互作用する様子をより精密に調べることができたそうです。

観測には、オーストラリア連邦科学産業研究機構の電波望遠鏡アレイ“オーストラリアSKAパスファインダー”が使われています。
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電波望遠鏡アレイ“オーストラリアSKAパスファインダー”のパラボラアンテナ群。
背景の夜空に広がっているのは天の川。


水素ガスの流出により将来的には星が作られなくなる

観測の結果明らかになったのは、“小マゼラン雲”の中で星形成が活発な棒構造の部分から、中性水素ガスが流れ出していること。
流れ出したガスは銀河の外に向って、700光年以上の距離にわたって続いていました。

“小マゼラン雲”から流出している水素ガスの量は約1000万太陽質量で、この量は銀河内に存在する水素ガスの3%に当たるんですねー

観測から推測される水素ガスの流出量は、1年当たり太陽質量の0.2~1倍で、これは小マゼラン雲で1年間に生まれる星の質量よりも10倍近く多いものになるそうです。

今回、小マゼラン雲から水素ガスが激しく流出している現象が観測できました。
そして、矮小銀河から失われる水素ガスの質量を、観測に基づいて見積もることができたのは、これが初めてのこと。

小マゼラン雲が全てのガスを失うと、最終的には新たな星形成が止まることを意味します。

星形成が止まった銀河は、徐々に暗くなってやがて消え去っていくことに…
これは、ガスを全て失った銀河が迎える穏やかな死ともいえます。

ただ、小マゼラン雲は、将来的には天の川銀河と合体すると考えられているので、合体により新たな星形成が始まるのかもしれません。
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“オーストラリアSKAパスファインダー”の観測で得られた
小マゼラン雲の水素ガスの電波画像。


流れ出した水素ガスの雲

天の川銀河の周囲には、大小マゼラン雲から長く伸びる“マゼラニック・ストーム”という水素ガスの雲が存在してます。

今回の観測データは、“マゼラニック・ストーム”のガスの供給源が小マゼラン雲である可能性を示している点でも重要な結果になります。

“オーストラリアSKAパスファインダー”は小マゼラン雲全体を一度の観測でカバーし、この銀河の水素ガスの様子を、これまでにないほど詳細にとらえることができました。

現在、“オーストラリアSKAパスファインダー”では、天の川銀河と大小マゼラン雲の最新の水素ガス分布を得る観測に取りかかっています。

この観測によって分かってくるのが、これらの矮小銀河がどのようにして天の川銀河と合体していくのかということ。
また、“マゼラニック・ストーム”もやがて天の川銀河に引き込まれ、新たな星の材料になる可能性があります。

観測を続けていけば、銀河の進化について役立つ発見が色々とありそうですね。


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