雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

失言 ・ 小さな小さな物語 ( 971 )

2017-10-31 15:20:17 | 小さな小さな物語 第十七部
「失言」って、結構多いですよね。
国会議員をはじめ、地方議員や首長など選挙で選ばれた人たちに限った場合でも、失言云々の騒動は後を絶ちません。実につまらない物から、法的に問題のある発言、個人や団体を誹謗したり軽蔑するようなもの、さらには、失言者自身の知性を疑ってしまうようなものも少なくありません。
反対に、立場や主張が違う人からは、上げ足を取ったり、曲解するような理屈をつけて失言扱いすることも少なくないようです。

「失言」を辞書などで調べてみますと、ごく一般的と思われる説明としては、「言うべきでないことをうっかり言ってしまうこと。またその言葉」あるいは、「言ってはいけないことを不注意で言ってしまうこと」などと思われます。しかし、この二つ、微妙にニュアンスが違うと思われませんか。
また、このような説明もあります。「立場上、口にすべきでない発言をうっかりしてしまうこと」というものですが、これなどは、発言そのものが問題というより、発言者の立場そのものが問題といった感じがします。

また、実際にテレビなどで放映されるような失言問題を考えてみますと、「言わずもがな」とか、「口が滑った」とか、「調子に乗り過ぎた」といった類の同情すべき種類のものも少なくありません。
しかし、中には、これは失言の中には入らないのではないかと思われるものも結構見受けられるのは深刻といえます。つまり、「本人はどこが失言なのか分かっていない」「当然この程度のことは言える立場にあると思っている」「発言そのものが、知識不足や知性の問題と考えざるを得ないもの」「何とも説明がつけようもないもの」といった発言で、この種のものは、「失言」の範疇に入れたりすれば、失言が怒るのではないでしょうか。

しかし、立場はともかく、また社会などへの影響はともかく、私たちは生活の中で、「失言」を繰り返しているのではないでしょうか。その多くは、失言であることも認識しないまま、心ある人には密かに軽蔑され同情されているかもしれません。「沈黙は金」とか「物言えば唇寒し・・」などという言葉は、失言だらけの切なさを憂いているのでしょうか。
いずれにしても、「失言」そのものを強く非難しすぎるのはどうかと思うのです。但し、他人を傷つけたり一部の人を軽蔑するような悪意に満ちた発言は、断じて失言などではないことを承知すべきなのです。
そういえば、つい最近のことですが、ある人の情けないような「失言らしい発言」に対して、相当の立場にあると思われている人が、「あの発言は、議員失格どころか、人間失格だ」などといった意見を堂々と述べられていました。
放映されることを意識している状態で、「人間失格」などという言葉を使うのは、「失言」ではないのでしょうか。いや、悪意に満ちた言葉ですから、失言の部類には入らないのかもしれませんねぇ。

( 2017.05.25 )

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