雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

国内最古の墓 ・ 小さな小さな物語 ( 970 )

2017-10-31 15:21:58 | 小さな小さな物語 第十七部
『 旧石器時代の人骨を1000点超、少なくとも19人分確認した。』と、沖縄県立埋蔵文化財センターから19日に発表されました。
沖縄県石垣島の白保竿根田原(シラホサオネタバル)洞窟遺跡の5年間にわたる発掘調査によるものだそうで、出土量は世界最大級で、国内最古の全身骨格の人骨もあったそうです。
洞窟を墓として、風葬されたものと判断されているようです。
旧石器時代の人骨の葬送と墓域が分かるのは初で、国内最古とみられる・・・、とも説明されていました。

人骨の年代は、全身骨格がそろった人骨は2体分あり、その1体は2万7千年で国内最古となるそうです。
宇宙の誕生や地球の歴史となれば、何億年、何十億年の単位になるのでしょうが、今回発見された人骨が2万7千年前には生きていて、その生涯を終えた時点で、形式はともかく墓に葬られたということを考えると、少々夢を広げさせてくれるような気がします。

今回発見された人物が生きていたのは石垣島ですから、交通手段がないことを考えれば、現在本州に生きている私と直接つながってくると考えるのには相当無理がある感じがします。何せ、2万7千年という時間は途方もなく、例えば一世代を30年と仮定した場合、私とはざっと900世代を隔てていることになります。
畏れ多いことではありますが、天皇家といえども今上天皇は第125代とされていますから、名門だとか旧家だとかいっても、100代以前まで遡ることが出来る家系はないはずです。900代前という歴史の遠大さが偲ばれる気がします。
それに、私に限らず、現在日本列島で生きている人すべては、この人骨と血縁を求めることには無理があるようです。つまり、旧石器時代から新石器時代への変遷があり、わが国で縄文時代から弥生時代への変遷があり、とても穏やかに700世代がつながれていったとは考えられないからです。

もっとも、この人骨発見のニュースを見て、自分のルーツと考える人はまずいないことでしょう。さすがに、私とてもそのような事を考えているわけではありません。
しかし、血縁的な繋がりはともかく、900世代、あるいはそれ以上と思われる過去において、喜びや悲しみ、苦しみや恨みなどとも戦いながら、懸命に生き抜き、そして、洞窟の岩陰に葬られた人物がいたということは事実だと思うのです。
さて、私は死ねば火葬されるはずですから人骨を残すことは出来ませんが、2万7千年後の世界の人たちは、現在、つまり西暦2017年という時代に生きていた人間に思いを馳せてくれる人間はいるのでしょうかねぇ。もちろん、人間でなくてもいいのですが。

( 2017.05.22 )

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 失言 ・ 小さな小さな物語 ... | トップ | 嫌な予感 ・ 小さな小さな... »

コメントを投稿

小さな小さな物語 第十七部」カテゴリの最新記事