雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

話せば分かる ・ 小さな小さな物語 ( 965 )

2017-10-31 15:31:30 | 小さな小さな物語 第十七部
「話せば分かる・・・」
時々目や耳にする言葉ですが、その場面場面にもよるのでしょうが、個人的には、重みが感じられない言葉の一つのように思われます。
折から、朝鮮半島を中心に厳しい状況が続いています。わが国には拉致問題が存在していることもあり、北朝鮮に対して無関心というわけではないのですが、イライラすることはあっても軍事的な衝突を真剣に考えることは少なかったように思われます。しかし今回は、もし軍事衝突があれば、どうやらわが国は完全に当事者になりそうです。

この地域では過去最大と思われる軍事展開をしているアメリカですが、ここにきてトランプ大統領は「条件さえ合えば話し合いに応じる」と言った発言をしています。ちょっと安心するような気もしますが、この大統領の発言は解釈がなかなか難しいようです。これまでの発言の幾つかについて、新聞やテレビの解説者の意見などを参考に考えてみますと、「選挙中の大風呂敷に引きずられていること」「外交が条件交渉的な部分が強い感じがすること」「アドバルーン的な発言がみられること」「もしかすると、すべての発言がとてつもない構想に繋がっているかもしれないこと」などが見え隠れしているような気がするのです。
従って、北朝鮮に対する「話せば分かる」的な発言も、実は軍事力を行使せざるを得ない時のためのアリバイ作りという可能性も否定できないような気がします。

わが国では、憲法記念日にあたって、首相は憲法改正への決意を正面から述べられました。しかもその中心は、自衛隊を憲法に組み込むことにあるようです。
憲法改正の是非はともかく、これだけ存在感のある自衛隊が憲法上で認知されていないのはやはり変な気がします。武力など全く保有しなくても、「話せば分かる」という意見は今も健在なのでしょうか。
いずれにしても、憲法は9条だけではないのですから、七十年間一度も変更していないことを誇りに思うのか、まったく変化に対して鈍感と感じるのか、変なイデオロギー中心ではない国民的な議論を高めてほしいと思います。

安易な「話せば分かる」という意見はあまり好きではありませんが、「話さなければ分らない」こともあることも否定できません。
「沈黙は金、雄弁は銀」という諺があります。多分、西欧からやって来た言葉だと思うのですが、議論や弁論を重視する社会のように思われるので不思議な気もします。もっとも、この言葉が生まれた当時は、「金より銀の方が価値が高かった」という説もあるそうです。もしそうだとすれば、金と銀との価値が変化したことは事実として、沈黙と雄弁の価値は変化しているのでしょうか。
また、この言葉の同意語を調べてみますと、「言わぬが花」という言葉が挙げられているようです。ただ、意味は大分違うような気がしますし、いかにもわが国民性に合っているような気がします。
世の中、世界情勢であれ、隣近所との関係であれ、「話せば分かる」で事が片付くのであれば苦労はしないのですが、どうも万能ではなさそうなことが残念です。

( 2017.05.07 )

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