雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

メーデーを考える ・ 小さな小さな物語 ( 963 )

2017-10-31 15:34:48 | 小さな小さな物語 第十七部
本日五月一日は「メーデー」にあたります。
折から、ゴールデンウィークの真っただ中ですが、このメーデーの日は、ゴールデンウィークの真っただ中だという人と、休みの間の出勤でどうも気が乗らないという人の、二種類に分かれるようです。もっとも、まったく関係ないという人もおいででしょうが。
ところで、この「メーデー」というものに、どの程度関心がおありでしょうか。
詳しく調べたわけではないのですが、この二、三十年の間に、関心の深い人や、直接行事に参加するという人は確実に減ってきているのではないでしょうか。メーデーの行事を主催する有力団体が、参加者の便利を考えてのことでしょうが、四月のうちに行うことから考えても、どうも下降気味だということを証明しているように思われます。

「メーデー」は英語では「May Day」ですから、文字通り「五月の日」という意味です。ヨーロッパなどでは、夏の訪れを祝う日でしたが、同時に、労使双方が共にお祭りに参加したことから、近代の「メーデー」へと転化していったようです。
労働者が団結して権利要求する形のメーデーは、1886年5月1日に、合衆国カナダ職能労働組合連合が、シカゴを中心に八時間労働制要求の統一テーマで統一ストライキを行ったのが起源とされています。誕生したのがアメリカだというのも、何か意義深い気がします。
わが国では、1905年(明治38年)に平民社主催で行われた茶話会が、メーデーの先駆けだとされているようです。
そして、1920年5月2日に第一回のメーデーが大々的に行われたようですが、その後は、わが国が第二次世界大戦へと向かっていく社会情勢の中で、メーデーにとっては不幸な時代を迎えることになります。逆に言えば、あまりにも階級闘争的な面が強くなり、その後の発展に暗い影を引きずってしまったような気がします。

戦後、第二次世界大戦の敗戦による惨憺たる状況の中で、わが国のメーデーは復活してきます。
それから今日まですでに七十年という年月が過ぎていますが、その間の経緯は今日の政界に結び付く部分もありますので割愛しますが、初期においては、政権闘争に組み込まれ過ぎたことがメーデーを今一つメジャーにすることが出来なかった理由の一つのような気がします。
「メーデー」は、国連などの国際機関で定められている「国際デー」に入っています。もっとも、「国際デー」とされているものは、例えば「1月1日は、地球の家族の日」といったように、四、五日に一度はあるというほどたくさんありますから、それでもって世界的に認められた重要な日というわけではありませんが、祝日とされている国は八十か国以上あるそうです。わが国やイギリス・オランダ・スイスなどは祝日ではないですし、アメリカ・カナダ・オーストラリアなどは、別の日に「労働者の日」といった祝日が設けられているようです。

わが国の場合、「勤労感謝の日」がそれに当たるという意見もありますが、「勤労感謝の日」と「メーデー」は趣旨がかなり違うのではないかと個人的には考えています。
現在のわが国の「メーデー」は、休みの人もおりそうでない人もおり、ゴールデンウィークの真ん中でもみくちゃにされているような気がします。一部の熱心な方々を除けば、「三月三日の雛祭り」より関心は薄く、せいぜい「九月九日の重陽の節句」並みだという人もあり、「もう役目を終えた」という著名なコメンテーターさえいます。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
「ブラック企業」などという嫌な言葉か誕生しています。一流企業だと思われている企業で、膨大なサービス残業が表面化してきています。サービスで残業しているわけではなく、生活のため泣き寝入りしているのですから、サービス残業などというとんでもない言葉は早くやめてほしいと思います。
「過労死の問題」もあります。企業内における「セクハラ」「パワハラ」も、表面化しないものが膨大なのではないかと心配されます。最近は、課長とか部長程度の、企業にとっては掃いて棄てるほどいる小者がこの種の犯罪を犯している例も多いようですから、もっとチェックできる制度が必要な気がします。
これらの問題に対して、「メーデー」がもっと活躍していただきたいし、すべきなのではないでしょうか。過去のマイナスイメージを払拭して、必死に生きている者の味方の機関というものを、今少し強化する必要があるように思うのです。

( 2017.05.01 )

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 一つの命 ・ 小さな小さな... | トップ | 任命責任 ・ 小さな小さな... »

コメントを投稿

小さな小さな物語 第十七部」カテゴリの最新記事