箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

揺らぐ学校の「聖域」

2021年03月14日 08時39分00秒 | 教育・子育てあれこれ


私が教師になった頃には、「3年B組金八先生」が学園ドラマの主流でした。

この番組を見て、私は当時、大学生でしたが教師になりたいという思いを膨らませたのを思い出します。

このドラマは、教師と生徒の人間的な人格のふれあいをテーマにしていました。

このテーマは、40年近くたっても、教育の王道であるし、本質であると、わたしは今でも思いますし、信じています。
しかし、今、時代の要請はそこにはないのでないかと思ってしまいます。

今、同じテーマで学園ドラマの番組をつくっても、視聴率が取れないのでないかと感じています。

「3年B組金八先生」の第2シリーズで、校内暴力を取り扱った回がありました。
加藤という生徒をはじめとした非行グループが校内で暴れ、鎮圧のため警察が入り、逮捕をしました。

このことについて、ハートのある教職員や地域のおとなが、学校に警察を入れることに抵抗拒絶しました。

「教育の放棄」を断固受け入れることはできないと金八先生をはじめ大人たちが生徒を守りました。

その主張には、「教育とは生徒を信じぬくこと」という教育哲学が流れ、学校は「聖域」であるという考えが社会の根底に位置づいていました。

わたしは、教育の本質はこの点にありといまでも考えています。

その後、わが国の中学校では生徒の校内暴力は鎮静化していき、かわって、いじめ・不登校の問題が多くなって、暴力・非行件数は激減し、現在に至っています。

そして現在では、今年の1月から「青のSP-学校内警察・嶋田隆平-」が放送されています。

SNSをめぐるトラブル、盗撮、教師のセクハラ、薬物乱用などの問題が起こる学校に警部補が常駐して、学校は「聖域」(sanctuary)ではなく、生徒も教師も法に触れる行為は容赦なく逮捕するというフィクションです。

このドラマの基本的考えは、「学校に警察が常駐することは教育放棄ではない、社会の厳しさや実相を知らせる教育になる」というものだと思います。

学校で起きるもめ事・トラブルなどの問題にも、法の規範が適用されるという主張で、今の学校の制度を問題提起していると言えると思います。

現実には、学校でのもめ事、紛争に中立的な立場で助言をするスクールロイヤー(弁護士)の配置が進んでいるのは、「青のSP」ほどの極端さではないにしろ、学校でも法が厳しく執行されるという時代が来るのかもしれません。