学校の教員を志願する学生が最近減っていることは、メディアでよく取り上げられます。
でもじつは、保育士や幼稚園教諭をめざす学生も減っているのです。
私立大学の一般選抜の志願者でみると、2023年度の教員養成系志願者は前年度(2022年度)のマイナス87・9%です。ところが、保育系はマイナス83・9%で、減少率をみると保育系の方が深刻であるといえます。
このように、保育士や幼稚園教諭をめざす学生が、いま減少傾向にあります。
保育士養成の大学や短大はここ5年間で22校が閉校しました。
また2025年度に学生を募集停止をする大学・短大23校のうち19校に保育科や幼稚園教育科があります。
少子化のため大学志願者数そのものは減少していて、そのなかでも保育や幼児教育への志願者の減り幅はさらに大きいのです。
ただ、教育関係者わたしとしては、保育の仕事に就きたいという子は少なくないというのが実感です。
実際に、将来になりたい職業ランキングで保育士・幼稚園教諭は小学生で4位、中学生で5位と回答しているように、依然として人気があります。
でも、大学進学となると他の道を選ぶ生徒が多いのです。一昔前前と違い、大学の学部・学科の多様化が示しているようにそれだけ選択肢が増えています。
高校の先生や親から、「保育はブラックだよ。給料が安いのに仕事がきついよ」と助言されることもあるようです。大学進学のときのそれら大人のアドバイスは進路選択にけっこう影響するようです。
また、家族のなかの子どもの数が少なくなり、
「子どもが好きだから」「弟や妹といっしょの時間を過ごしてきたので」という経験をしていないことも、保育士幼稚園教諭の志願者減少に拍車をかけているようです。
さらに大学在学中をみても、保育職への就職を希望し大学に入学した学生でも、一般就職に変更する場合も少なくないようです。
保育園実習や幼稚園実習で、現場のたいへんさを肌で感じ、「わたし一人でこんなにたくさんの子どもを見る自信はありません」と就職先を変えるのです。
加えて、バスの「置き去り事件」では、最近保育者に実刑判決が出ています。
保育現場の人手不足など厳しい現状が報道され志願者が減っているのが現状です。
「保育者の給料が安い」とよく指摘されますが、保育者の処選改善はここ数年かなり進んでいます。ただ、人員の配置は大きな課題です。
こども家庭庁は今年度、4・5歳児の配置基準を
76年ぶりに見直しました。
保育士1人で受け持つ人数を30人から25人に改正し、3歳児も20入から15人に減らしました。
さらに2025年以降、1歳児も6人から5人に改善する方向で検討しています。
しかし、それでもなお日本の保育士の配置基準は、世界的には不十分です。昨今のように災害が多発するこの日本で、保育者1人で1歳児6人を連れて避難できるでしょうか。答えは明白です。
保育者は、人間の成長にかかわりを持たせてもらうことができる素晴らしい尊い仕事です。
子どもたちの成長に伴走できる喜びや、親御さんとともに喜びあえます。親御さんに感謝される幸せを味わえます。
子育て支援の専門職として、高い専門性を持つ保育者がいかに重要であり、保育職の魅力というものが社会全体に十分に伝わっていくことを願います。そして、社会全体で子どもを育てていくのが今という時代です。