少子化が加速度的に進行しています。
2024年の出生数(しゅっしょうすう)は、はじめて70万人を割りました。
1人の女性が一生に産む子どもの数を合計特殊出生数といいますが、1.15と過去最低になりました。
少子化が進む要因はいろいろあり、ひとくくりにはできず、それぞれの要因に対しての対策が総合的に講じられなければ出生数は向上しないでしょう。
その要因の中でも、女性の仕事と子育ての両立の困難さが浮き彫りになります。
まず、二人目を産む困難さを、男性より女性が強く感じている状況があります。「子どもが二人ぐらいほしいね」と第1子を持つ夫婦の夫は考えます。
しかし、妻の方はもろ手を挙げて「そうね」とは言えません。「大丈夫だろうか」という思いを強くいだくのです。
いま、やっている仕事にやりがいがあると感じているのに、第2子を産むとその仕事から離れなければならない。戻ることができるだろうかという不安が強いのです。
出産育児がキャリア形成を途中で断絶させるのです。なかには、担当する仕事の責任者やチーフに数年内になりたいと願う女性もいます。
でもそれは、妊娠・出産の先送りを選ぶことにもなり、高齢化出産への不安が大きく、仕事か出産かの狭間(はざま)で心は揺れ動くのです。
夫の仕事も多忙で、夫婦で協力とはいいながらも、育児は自分が担うことが多くなるだろう。
戦後の高度経済成長期の専業主婦が多かった時代ではなく、共働き世帯が専業主婦世帯の2.5倍となった現在、とくに女性の悩みは尽きません。
性別役割分担意識が根強く残り、女性に家事育児の負担が偏る日本社会の問題点は解決されていません。
子育てと仕事を両立させるには、男性の育児への参加が不可欠になります。
男性の育休取得は増えていて、30%程度になりますが、取得期間1か月未満がほぼ6割を占めています。
男性が育児・家事を「自分がするべき役割」として、一時的でなく継続的に担って行くためには、少なくとも数か月の育休を経験しなければならないという研究者の見解があります。
こういった状況の中、政府は「異次元の少子化対策」と銘打って「こども未来戦略」で共働き・共育ての推進を掲げています。
しかし、企業側にも積極的な対策推進が求められます。
男性が数か月にわたる育休を取得できる意識や企業風土を醸成する。
育休をとった社員の業務を引き継いだスタッフへの十分な手当の支給など、効果的な手だてを打ち出すべきです。
やはり、男性が長期にわたって育休をとると職場に迷惑がかかるという気兼ねが大きいのです。
ならば、それを社員間の義理や恩に頼るのでなく、経営側がお金を出すという制度を充実させ、誰でも安心して力を発揮できる企業文化を築いていくのです。
もちろんそれだけで、少子化が防げるわけではありません。
たとえば、昔と違って一人の子の子育てにたくさんの多様な大人がかかわり、まわりが育ててくれるという時代ではありません。
ほとんどを親がかかわって、衣食住の世話から習いごとや送迎、学習をみるなどすべてのことに時間を費やす肉体的・精神的・経済的な負担が親だけに重くのしかかる状況の改善が必要です。
そうならないと「二人目を産む」という決断にはならないでしょう。
少子化という複合的な要因が絡みあう問題には、全体を俯瞰した総合的な対策が強く求められています。