中学生の進路指導を行う際、教員は奨学金の制度について、広く知っておく必要があります。
保護者は高校進学について、3年間でどれほど学費がかかるのかも考慮します。
自分の家庭の収入や家計をみて、必要な場合には奨学金の申請をします。
そのときに、適切なガイダンスや情報提供、手続きの案内を、学校もしなければならないからです。
奨学金には、国や地方公共団体による公的な奨学金と学校独自や育英団体による民間の奨学金があります。
また、給付型と貸与型があります。
さて、そのさまざまな奨学金の中に、「あしなが奨学金」があります。
この奨学金は、親を病気、災害、事故、自死などで亡くした遺児が受けるもので、全国で7000人以上が受けています。
ところが、今回のコロナ禍でひとり親家庭の親が、解雇などの影響を受けています。
2020年秋にあしなが育英会が行った全国の遺児家庭に対する調査によると、ほぼ3人に1人が「収入が減った」と答えました。
あしなが育英会では、奨学金の財源にするため、毎年春と秋の2回、全国のおよそ200箇所であしなが奨学生が募金活動を行なっています。
しかし、このコロナ禍で2020年は春秋とも実施できず、今年の春も募金ができません。(あしなが育英会は、募金以外に基金用に直接の寄付も受け付けています。)
遺児家庭は経済的に困窮する場合が多く、そこに今回のコロナ禍がさらに状況を厳しくしているのです。
夫を交通事故で亡くしたある母子家庭の母親は「ふだんでも子どもにはつらい思いをさせているのに、さらに厳しい生活になるのはすまなく思う」という切実な声が聞こえてきます。
学ぶ意欲や機会のある学生が、経済的な理由で進学を断念することのないように、学校は保護者の相談にのり、適切な手続きを行ってもらえるようサポートすることも、進路指導の大切な側面です。