箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

一人になる時間・場所もつ

2015年04月30日 21時45分15秒 | 教育・子育てあれこれ


いまの子どもたちは、一人で ぼっちでいることがイヤで、誰かといっしょにいることを求める傾向が強いようです。三中の子どもたちも例外ではありません。

もちろん友だちといっしょの時間を過ごすことで、子どもは安心感を覚え、それが、その子にとっての居場所になります。

そして、友だちといっしょにいることで、充実した時間を送ることができ、生活が楽しくなり、豊かになったりもします。

でも、友だちといっしょにいることを好むのは、グループの中でしか自分の居場所を見つけることができず、誰かと
いっしょにいないと不安でしようがない。

このような、思春期の子どもの心理の裏返しであるということも、養育者や教育者はとらえておく必要があります。

ただし、誰かといっしょにいることの重要性と同時に、思春期の子どもたちにとっては、「一人でいること」も成長を支えていく側面がある点にも留意しておかなければなりません。

とくに思春期の子どもでは、友だちとワイワイとにぎやかに過ごす行動と同時に、一人で時間を過ごすことが多くなる場合があります。

自分の部屋にこもって、好きなことに夢中になったり、本を読んだり、また出かけていってアイドルに没頭したりする・・・。

友だちといっしょにいるときと同様に、子どもが一人で好きなことに夢中になっているときには、一つの世界を
もっていることになり、充実感を得ており、心が豊かになっているのです。

一人になっていることを心配して、親が「何かあったの? 話してみなさい」・・・。

子どもが一人の世界に没頭しているとき、これは迷惑な声かけです。

親から見たら、「くだらない、つまらない」と思うことでも、子どもの好きなことを否定するべきではないでしょう。

それよりも、その子の好きなことについて尋ねたりすると、「うっせいー!」とめ言わずに子どもは喜んで話してくれます。

子どもが「一人の世界」を楽しんでいるときには、距離を置いて、静かに見守るようにしたいものです。それが、思春期の子どもの成長をうながします。

子どもの問題は、おとなが問題とすることで問題になる

2015年04月25日 08時54分22秒 | 教育・子育てあれこれ


三中の例ではないですが、あるとき、中学生をもつお母さんが、クラス担任の先生から次のように言われました。
「お子さんは、学校ではひとりでいることが多いです」と。

友だちがいないのかしら。友だち関係がうまくいっていないのかも。いじめられているのかしら・・・・・。
心配になり、いろいろ考えたお母さんは、子どもに問い詰めました。

子どもは、「一人でいるほうが落ち着くから。でも、いつも一人でないし、休み時間には、気が向けば友だちと遊んでいるよ。」

この場合、一人でいることを、親は問題だと思っていても、子どもは少しも問題であるとは思っていません。

このエピソードは、子どもの「問題」について深く考えさせてくれます。

一般的に、思春期には子どもにかかわるたくさんの問題が起こります。

勉強をしない。中学卒業後の進路のことを考えない。友だち関係でもめごとががある。いじめにかかわっている。学校へ行こうとしない。おしゃれやファッションに興味がある。朝、自分で起きれない・・・・。子どもに関する問題はいろいろと起こります。

このような問題に接したとき、「子どもの問題というのは、おとなが問題だと思うから問題になる」ということを意識しておきたいものです。

上の例の場合、お母さんは、学校で子どもが一人でいることを問題と思っています。しかし子どもは気にしていません。

この場合、子どもは問題と思っていませんから、「もっとクラスの多くのこといっしょに行動しなさい」とお母さんが言っても、うまくいきません。

子どもが思春期のときの「問題」は、親の考えるエリアから外れたときにおこります。(もちろん学校の規則や法律から外れた場合の問題は別です。)

つまり、親の思う「常識」・「普通」から外れたときに、「問題」だと見なすのです。
そしてそのエリアつまり「常識」・「普通」は、親によってちがいます。

テストで平均点しかとれないのは問題だ」と思う人もいれば「平均点がとれているならそれでいい」と思う人もいます。

「中学生がネイルアートに興味をもつのは早すぎる」と思う人もいれば、「年頃なんだから、ネイルを飾りたい気持ちは無理もない」という人もいます。

ですから、親が子どものことで問題であると感じたときには、次のように自問自答してみます。

「この問題は、本当は誰にとって問題なのだろうか」と考えてみます。思春期の子どもを受容する基本である「今のあなたで大丈夫」(=「ありのままで」)という態度で、子どもと接するのであれば、変わるべきなのは、問題と思われている人ではなく、問題だと思っている人であることも多いのです。

つまり、子育てに関係した問題というのは、「何が起きているか」ではなく、「起きていることをどのようにとらえるか」がポイントになります。

もし、子どもが「起こっていること」に何とも思っていないのなら、変わることを求めすぎない方がいいでしょう。

逆に、子どもが「これではいけない」と思えば、自ら変わろうとします。その気持ちの変化は、親よりも友だちからのひとことがきっかけになることもよくあることです。

そこで親は、子どもの成長力を信じて、見守ったり、サポートするのです。それが思春期の子を持つ親の役割なのです。

思春期は親離れ・子離れの時期

2015年04月19日 12時55分54秒 | 教育・子育てあれこれ


子どもが思春期に入ると、友達関係には大きな変化が現れ出します。

何をいっしょにするというよりも、誰といっしょにいるかが大切になってくるという変化です。友だちとただいっしょにいることが楽しい、と感じるようになります。

このようなとき、親よりも友だちがいちばん大切になってきます。これが子どもの「親離れ」というものです。

このような変化が現れたとき、親がわが子の友だちの批判をしたりすることに対して、子どもは反発します。

「あんなワルい子とつきあうのはやめなさい」
「あの子、行儀のない子ね。どんなしつけをされてきたの」

このような友だちを非難する言葉は、控えなければなりません。

思春期になるまでは「わが子の価値観=親の価値観」→思春期になってからは「わが子の価値観=友だちの価値観」。

ということは、親が友だちを否定すると、わが子は自分が否定されていると受けとります。これが親への反発となるのです。

小学生とちがって中学生では、二つほど意識や気持ちの違いが生まれます。

一点目は、いままで絶対的な存在であると思っていた親への価値観が揺らぎだします

「おとなっていい加減なところがあるし、うちの親もそうなんじゃないのかな」

親に対する尊敬の気持ちが薄れたり、あらためて自分にとっての親の存在に疑問を持ったりします。

また二点目としては、「できる・できない」が見えやすい時期になります。

たとえば、試験の成績やクラブでの技能など、仲間との差がはっきりとしてきます。

だんだんと社会の仕組みがわかってくる中で、
「プロの選手になるなんて、自分には難しい」とか
「今回の試験で自分はけっこう勉強したのに、もっといい点をとる子もいるんだ」

このように、自己を客観的に見るようになります。

このような変化に直面し、揺れ動く心情にある思春期の子どもがいちばん必要とするのは、残念ながら親ではなく、友だちです。

同じ価値観を共有し、そのことの関係性の中に居場所を見いだしながら不安を乗り越えていくのです。

思春期は、子どもにとっては親離れの時期であり、親にとっては子離れの時期であるのです。



自律する子どもに育てる

2015年04月16日 20時23分42秒 | 教育・子育てあれこれ



子育ての目標の一つは、子どもを「自立」できるように育てることです。
それとともに、子どもを「自律」できる人に育てることがとても大切です。

箕面三中の教育目標の中にも、「自立する子ども」と同時に、「自律する子ども」を掲げています。

自分の気持ちを自らのコントロール下に置く感覚や習慣が、おとなの中でも緩くなっているこの時代、子どもに自分を律することを求めるのは、なかなかたいへんです。

そのような社会の影響もあるのかもしれませんが、いまの子どもに足りない力は、自分の欲求を押さえて、ガマンする自律の力です。

自律とは、「~したい」、「~がほしい」という個人の気持ちがあっても、こらえるとかガマンすることです。

「あの服がほしい」「おこづかいをいっぱいもちたい」「あのおかしもほしい」・・・。

人の欲望には終わりがありません。うまく手に入れたとしても、「もっと、もっと」とエスカレートしていきます。

ですから、子ども自身が、どこかで気持ちに区切りをつけることができるようにすることが、自律させることです。

その場合、親は「ガマンしなさい」といいきかせることが多いでしょう。

ただしこのときのポイントは、子どもに「あきらめさせること」ではないということです。あきらめるということは、いつになっても手に入らないと思わせてしまいます。

だったら、極端な場合、盗ればいいと万引きに走る場合もなきにしもあらずです。

じっさい、万引きをした小中学生に聞いてみると、親から「だめよ、あきらめなさい」と小さい頃からいわれて育ってきた場合もあるようです。

そこで、自律のための子育てのポイントは、子どもの欲望を先延ばしすることであるといえます。

「もう少し年齢が上がれば、バイトをして、自分で稼いだお金で買ったらいいよ」とか
「社会人になって、仕事をするようになったら買えるようになるなるじゃない」

これが欲望を先延ばしすることです。いまは無理でも、できる日がやってくるという展望や見通しを子どもが持てるなら、いまはガマンしておこうかと納得できます。

これが自律を支える「ガマンしなさい」ということばの意味です。

自分を律する心、自律心はこのように育ってくるのです。

過去と現在のつながりの中で

2015年04月12日 15時08分35秒 | 教育・子育てあれこれ


毎日をあくせく生きている私たちですが、ふと立ち止まると、現在は過去につながっているという時間軸に気づくこともあるのではないでしょうか。

この時間軸を意識するのは、私たちおとなは、いまの自分を見つめることができるので、客観的に過去と現在を比較できるからです。

「3年前にはあれほど仕事で悩んでいたのに、自分なりに乗り越えて、いまがあるんやな」と思い、自分の成長・進化を確認することで、過去と現在のつながりを感じるのです。

しかし、小さい子どもは、過去と現在という時間軸は持ちあわせていません。いまを生きるのに精一杯だからです。

だから、幼児がいま夢中になってやっている遊びを、親が無理矢理にやめさせようとか、夢中になっているおもちゃを取り上げようとすると、子どもが泣きわめくことがしばしばあります。

このように、小さい子どもにとっては、いまがすべてなのです。

ところが、三中生のように、子どもが中学生という思春期になると、過去と現在のつながりを、少しずつ意識できるようになります。

たしかに思春期の子どもは、未熟かもしれません。でも、その子なりに自分を見つめ、過去のことから学んで、「いまこうしたい」という願いをもっています。

娘:「ワタシは、ミュージシャンになりたい。できればキーボードが弾きたい。小さい頃からピアノも習っていたし。そやから、音楽の勉強ができる高校へ行きたい」

母:「何を言うてんの。今の時期はとにかく勉強やろ。普通の高校へ行って、それからでも音楽の勉強はできるやんか。」

子どもはピアノを弾くのが好きだったという過去を思い、そのつながりの中でいまミュージシャンになりたいという気持ちを伝えています。

しかし、母はいま(=とにかく勉強すること)にこだわっています。この場合、時間軸がちがうので、なかなか娘と母の話はかみ合いません。

母:「音楽を一生懸命やると、どんなよいことがあるん? どう思っている?」

娘:「音楽をやれば、聞く人を楽しい気持ちにできる。でも音楽の練習に時間がかかるようになるので、お母さんのいう勉強の時間は減るかもね。でも、ワタシは音楽がやりたいの」

母:「そうなんやね。お母さんは勉強だけしてほしいと思ってたけど、あんたがそのように思っているなら、音楽を一生懸命やるのも一つかもしれんね」・・・

このように思春期には、子どもがおとなに対して、自分の願いや思いを話すことができる、伝えることができる関係をつくることがポイントです。

そのためには、「教えること」ではなく、「聴くこと」ができるおとなになる必要があるのです。

「こうしなさい」と教える時期は、おおむね子どもが思春期に入るまでです。

思春期に入った子どもには、自分で考えることができるようになるため、おとなは聴くことで支えていくことが求められるのです。

STAIRWAY TO AN ADULT(おとなへの階段を昇る子ども)

2015年04月11日 20時29分46秒 | 教育・子育てあれこれ


思春期の子どもの特徴は、「こうしたい」という目標と実際の行動のギャップが大きいという点を挙げることができます。

たとえば、「プロのサッカーチームに入りたい」と言っているかと思えば、学校のサッカー部をちょっとサボったりします。

また、理想と現実の態度がちがう場合もります。本心では、他者から「認められたい」と思っていても、いざ人から話しかけられると「別に・・・」とか「ウッザイんや!」と反抗することがあります。

このような行動は、他者から見ると、理解に苦しむことが多くあります。また本人自身がその矛盾を感じて、わけがわからなくなっているときもあります。

でも、この矛盾が思春期の特徴と言えます。

このような矛盾を感じたり、理想と現実のちがいに気づいたりしていくうちに、自分をうまくセーブしていけるようになっていくのです。

「ああ、ちょっと考えが甘かったな」
「うまくいかないときもあるのだ」
「こういうようなことを続けると、相手を困らせることになる」
「まあ、なるようになるのかな」

このように、本人に気づきが生まれ、自分を自分で制御できるようになります。

この意味で、思春期という時期には、様々な経験を積ませることが、たいへん重要なのです。本人にとってよい経験もよくない経験も、ひっくるめて経験することが必要になります。

おとなからすれば、
「世の中はそんな甘くない」
「努力もせずにうまくいくはずないやろ」
「他の人がどう思うか考えろ」・・・
と言いたくなることもあります。

それでも、おとながじっと見守り、あまり口出しをせず、待ちます。そうすると、子どもはゆっくりでも、自分にあうやり方を見つけ、自分自身で、ものごとを解決していくようになります。

このように、思春期の子どもは、ゆっくりでも、確実に大人への階段を上がっていくのです。

愛された子は、力強い

2015年04月10日 09時07分01秒 | 教育・子育てあれこれ


「愛」という言葉は、ありふれており、私たちは平素、「愛」というふうに、わざわざ口には出すのもなにかぎょうぎょうしく思います。

そこで愛情と言い換える方がしっくりいくでしょう。愛情は子育てにおいて、たいへん大きな役割をもっています。

子どもは愛されて育つと、自分のことが好きになります。この「自分が好き」という感情(自己肯定感)は力強いものです。これにより子どもは、自分のいのちを大事に思います。だから「いのちをムダにはできないな」という意識も生みます。

また、自分が好きという感覚は、人とつながり、社会とのかかわりをもつように、子どもを導いてくれます。

親というものは、子どもにとって大きなものです。その大きな存在である親が、自分のことを大切にしてくれることで、自分が存在していることに価値があると思うのです。

また、「いてくれてありがとう、うれしい」と、家族・親が思っていることを知っている子どもは、大きく道を踏み外すようなことも少ないでしょう。なぜなら子どもが自分の価値を知っていると、自分を大切にして、自分を守ろうとするからです。

保護者のみなさまも、教職員も子どもに無償の愛情を注ぎたいと思います。