箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

特異な才能を発揮できる学校環境をつくる

2024年09月30日 05時49分00秒 | 教育・子育てあれこれ

多数の児童生徒が集まる学校には、まれに知的能力が高く、IQが高く、特定の分野で突出した才能を発揮することがある子がいる場合があります。

専門的には、GIFTED(ギフテッド)と言われます。

その一方で、繊細な面があり、強いこだわりをもつことがあり、周囲から偏見をもたれたり、無理解に苦しむこともあります。


そのため、不登校になるケースもあります。




文部科学省は2021年に有識者会議を設置しました。


「特定分野に特異な才能のある児童生徒」への指導・支援のあり方を検討し始めました。


教員向けの研修パッケージの作成や指導・支援に関する研究を本格化させています。


ギフテッドは、高い知性や突出した才能が注目されがちになりますが、感受性がとくに鋭く、外界からの刺澈を増幅して受け取る特性から、周囲になじめず孤立感を抱くことにもなりがちです。



「なぜ自分はみんなと同じように楽しめないのだろう」

「学校は楽しいはずなのに、楽しめないのは自分に問題があるのかな」

と思い、悩みは深くなります。


まわりの雰囲気から浮いてしまわないように過剰に適応しようとするケースとしては、極端に「空気を読もう」としたりします。


または感情や行動を過度に抑えてしまったりする点もあり、本人の悩みは深くなります。


だから、周りの大人や友だちの理解が不可欠なのです。


そのような特性のある子であると、まずはGIFTEDの存在を知ることから始めます。


そして学校には、「自分は自分でいいんだ」と思えることで生きづらさの解消を目指していける人間関係の広がりが求められます。










部活動の地域移行の実現を

2024年09月28日 09時06分00秒 | 教育・子育てあれこれ


今年、5月から6月にかけて部活動の全国調査が行われました。


それによると、平日は8割近く、休日は6割ごえで地域のコーチでなく、教員が指導する従来の部活動が続けられていることがわかりました。


そのように、部活動の地域移行は、スムーズに進んでいないのが現状です。


まず、教員にかわる地域の指導者が不足しています。


平日は2時間、休日は3時間までという活動時間が決まっています。


そのため部活指導者として生計を立てることができない制度上の問題があります。


財源も確保できていません。


正直に言うなら、地域移行にかかわるそのようなさまざまな難しさは、現場経験のある学校教育関係者ならある程度は予想できていました。



ヨーロッパでは、住民の楽しみの場として地域のクラブが発展し、スポーツの裾野を広げてきたという歴史があります。


しかし、日本のスポーツは学校の部活動を通して全国各地に普及してきたのでした。


そして、種目ごとに(部ごとに)中体連の組織があり、地区大会→ブロック大会→全国大会へとつながる確固たる組織として、選手を育成するしくみが君臨してきたのです。


そして、基本的に学校の教員(顧問)が、自校の部活指導に加えて、大会運営を自分たちの休みを返上して担ってきたのです。


中体連のおかげで、生徒は学校という身近な環境で、さまざまな種目から好きなスポーツを選び、活動に参加できました。


保読者の金銭的負担も少なくてすみました。


学校が部活動を担うのは、日本特有のメリットであり、それを支えてきたのが、ボランティアとして部活動の指導に関わる教員だったのでした。


その日本独特の一連のしくみは、教員の選手育成の喜びと過重労働という矛盾を抱えながら何年も継続されてきました。


部活によって生徒の成長を支援できるという教育的な有用性を知る現場の学校教育関係者が、現状を継続する方向で努力を重ねてきたのです。


「問題があっても維持していくのがベストではないが、ベター」という、一定の合意のもとに歴史を重ねてきたのです。


校長会も、長年にわたり、学校が担わざるを得ない教育活動として、改革については沈黙を続けてきたのでした。


しかし、教員の働き方改革が進めるうえで、今回国としては部活動を地域に移行していく方針を大々的に打ち出したのです。


たとえは適切ではないかもしれませんが、いったん開けてしまったパンドラの箱は、もうもとには戻せません。


そして、移行にかかわるさまざまな問題が吹き出して、そのしくみ自体が揺らいでいるのが今なのです。


文科省は部活動を地域に移行していくという方針は示していますが、部活動を学校教育の一環であると、従来と同じ位置づけを学習指導要領で定めているままです。


地域に移行していくことを前提に、学習指導要領に表記して、財源と人材確保の課題にしっかり向き合い、地域移行を実現すべきです。



読書離れを防ぐ学校図書館の役割

2024年09月27日 05時13分00秒 | 教育・子育てあれこれ

9月21日のブログでふれましたが、日本で電子書籍を含み、月に1冊も本を読まない人(16歳以上の成人)が6割以上になることことがわかりました。

読書離れは、人びとの思考力や判断力の低下につながる心配があります。

さらに、インターネット上に誤った情報が横行する時代です。


その上で、言論の自由を維持しながら、信頼できる情報を与えてくれる貴重なメディアは、やはり本です。


たとえばノンフィクションはジャーナリストや専門家、事件・事故の当事者らが編集者と共にファクトチェックを重ねます。

そのように時間をかけて、本をリリースします。


読書の機会が減ることで、人びとが真実を見極める力が弱くなり、正しい判断ができなくなったりする危惧があります。


そこで、学校教育関係者として、わたしが思うのが、子どもときから読書環境を整備する必要があるということです。


研究者の長年の研究とわたしの現場経験から、児童生徒は生まれ育った地域によって、接する情報量に差が生まれてしまいます。


本は場所・空間を変えずとも、いろいろな世界に触れることができます。


子どもの頃から読書の機会をもつことは重要です。


その上で本との出合いの機会を作るためには、学校図書館の役割が重要です。


児童生徒が本と出会える機会そのものを提供します。


また、読書習慣を形成するための、啓発や教育の役割を担うのが、学校図書館です。







対等な男と女の関係とは

2024年09月26日 05時48分00秒 | 教育・子育てあれこれ
世界的にみると、日本では男女共同参画社会の実現が、以前として遅れています。

いま、次期総理大臣候補に名乗りをあげている人たちの中でも、女性は少ないです。

政治では、男女雇用機会均等法が1986年に施行され、職場における男性と女性の関係は少しずつ変わってきました。

その後、1999年の改正男女雇用機会均等法、2007年の新改正男女雇用機会均等法によって、男性と女性の関係は大きく変わってきました。

そういう変化は認めた上で、思うことがあります。

たとえば、政治のステージでよく言われる「女性の社会進出」という言葉です。

その言葉を聞いて、「女性は社会の一員ではなかったの」と思う人もいるのではないでしょうか。

でも、その言葉を聞いて、ピンとこない女性もいるようです。

大学でわたしは教えていますが、不平等をあまり感じていないようです。 


今の学生は男女を差別せずフラットな関係でもあるので、表面上はあまりピンとこない学生もいるようです。


ところが、社会にでると、雇用面や待遇面で公平でないことを実感するようです。


男女共同参画社会は、まだ道半ばです。




今を生きる不登校の子ども

2024年09月25日 11時24分00秒 | 教育・子育てあれこれ
夏休みの長期休業があける9月頃は子どもが不登校になりやすい時期です。

また、自殺児童生徒が増える時期でもあり、高校生を入れて、510人以上(2023年度)という少なくない数になっています。

児童生徒の多くが学校にもどるなか、登校できない子は苦しみます。

登校するのも、しないのもいまは選択肢の一つ。

このようにふっきれた心境になるならいいのですが、多くの子は行けない自分に後ろめたさを感じたり、自分を否定することも少なくありません。

親もわが子が不登校になると、「自分の育て方がよくなかったのか」と自分を責めることに、なります。

「普通に学校へいってくれればいいだけなのに」

「このまま大人になったら、社会でやっていけないのでないか」

「家に子どもがいることをとなりの家の人がどう思っているか。世間体が気になって」

このように、親は「普通」や「世間」というまなざしに苦しみます。

じつは、その親の苦しみを知る子どもは「わたしが学校にいけないから」と、同じく自らを責めるのです。

将来のことを考えると心配になるという親の不安は無理もないです。

しかし、子どもは将来や未来を生きているのではなく、現在を生きているのです。

親としてできるのは、子どもが自ら動き出そうとする環境を整えることなです。

また、「なぜ学校へいけないの」と親は子に突き詰めます。

しかし、多くの不登校の子は自分でも学校に行けない理由がわかりません。自覚できないイヤなことが蓄積されているからです。

まずは、じっくりと休むことをよしとし、言語化できない思いに寄り添うことが必要です。

大人のまなざしが否定から肯定に変わったら、子どもは自然に気がつきます。


そうすると心に意欲が芽生え、自分のペースで歩き始めます。まずは心の中に「休んでも大丈夫」という畑を耕します。







中学生との双方向のコミニケーションをとるには

2024年09月24日 06時00分00秒 | 教育・子育てあれこれ


教師が中学生と一対一で話し、双方向のコミュニケーションができるようになるには時間がかかることが少なくはありません。



中学生は打ち解けてくれるには時間がかることが多いのです。


中には、初対面では教師が話しかても目を合わせてくれない子がいます。


かわって、体を向けてよく目を合わしてくる子には、教師はできるだけ聞き役に徹する方がいいのです。



一対一で学習をみているときには、教師は子どもの聞こうとすることを正確に理解して、きっちりと説明しないと伝わらないのです。


教師の知識が不足していれば教えることはできめせん。


伝えたいことを言葉にする力がなかったり、語彙が不足していれば説明できません。



中学生は繊細で敏感な時期にあります。だから、雑な言葉遣いは避けるべきです。


かといってていねいに話す、わかりやすいようにかみ砕いて話そうとすると、受け手は「まわりくどい」と感じることがあります。


ですから、言葉を簡潔にわかりやすく話すことが必要で、なかなか簡単ではないのです。


相手が大人なら、足りないところは補ってくれる、余分なところは削ってくれるだろうと、適当に話してしまうことが多いかもしれません。


しかし、それでは中学生にはうまく伝わらないことの方が多いのです。


中学生との話は、小学生にはない難しさがあります。


しかし、自分で考え、自分でやりたい時期でもあるので、教師との話を理解し、納得したら、自分で行動しようとします。


その力は力強いものなので、ときには教師がそのこのことを頼もしく感じることもあります。


中学生は小学生にない難しさがありますが、大人に近づくぶん、支えていき自分のことは自分でやるように仕向けていくという生徒指導の醍醐味があります。



医療体験をする高校生

2024年09月23日 05時52分00秒 | 教育・子育てあれこれ

中学生や高校生のなかには、将来、医療の道を志す生徒がいます。

わたしが校長在任中に、中3女子生徒で看護師になりたい子がいました。

進学を希望する高校の普通科には学力的に合格が少し難しい状況でした。

わたしはその生徒が看護師志望だと聞いていたので、十分に合格可能性のある別の高校の受験を勧めました。

その高校は、総合学科の高校で、入学後に自分の将来の進路希望にあわせて、カリキュラムを組むことができました。

そこで、「看護師になりたいのなら、その高校で看護系の学習をしたらどうですか?」とアドバイスしました。

結果、その生徒はその高校に進学し、卒業後に3年の看護専門学校を卒業して、いま看護師としてがんばっています。

また、幼い頃からアレルギー体質で生まれた男子中学生がいました。

小さい頃から、他の子が自由に食べる肉類や牛乳は、一切口にせず大きくなってきた中学生でした。

大きくなるにつれ、症状はかなり改善されてきましたが、長崎にいるおじさんとの話で、そういう生い立ちをふまえ、自分は医師になるという気持ちを高めてきました。

学力的にはかなり高い生徒でした。そこで医学部に大学進学できる高校に進学していきました。

このように、医師や看護師を強い意志で希望する子はいるのです。


さて、高校生が地域の病院で医療を1週間体験する活動が今、展開されています。


高校生は、医療の最前線で奮闘する医師や看護師らの姿を目の当たりにします。


医療の道を志す高校生にこのようなプログラムを提供する取り組みがいま注目を集めているのです。


職業観を養うことでミスマッチを防き、将来を担う医療人材の育成を支援するのが目的です。


そのようなプログラムは.NPO団体が運営しています。


プログラムの一つに、高校生が病床で患者と交流し、話を聴くコミュニケーション力の養成があります。


息者の症状や日常の暮らしぶりなどを聞き出すのは、診療の基本中の基本です。


参加する高校生は患者を1人担当します。


生徒はあいまを縫って、病室で患者の様子をうかがい、その日の体調や入院生活で気になる点などを聞きとります。


もちろん、はじめはぎこちないやりとりですが、日がたつにつれ、スムーズになっていきます。



市役所へ行き、地域の医療事情などを勉強することもあります。


病院に戻り、検査室や院内薬局、栄養相談室を見学したりします。


医療従事者から業務内容の説明を受けた後、訪問看護に同行して在宅医療を間近で体験することもあります。


1日の終わりには報告会があります。当日の出来事を報告し、感想や自身の反省点、翌日の目標や予定を共有します。


患者や医療従事者らとの対話を通じ、自分の中に起きた変化を言葉で表現します。


高校生が実際に患者を担当する地域医療体験プログラムは、将来の志望を現実に近づける方法として、いま少しずつ注目されています。













29200分の1

2024年09月22日 05時56分00秒 | 教育・子育てあれこれ
人の寿命がかりに80歳だとしましょう。

365日×80で29200日を生きることになります。

思えば、そのうちのわずか1日を有意義に生きることは大切なことです。

有意義とはいかなくても、自分が納得できる1日をどう生きるかです。

何気ない1日が、じつはかぎりあるものと思うとき、納得できる1日にすることは、自身に突きつけられる命題だとふと気がつきます。

多くの人びとは、朝には1日に期待を寄せ大きな可能性があることを思います。

無駄に過ごせば、少しの後悔が残ります。

だからこそ、ときには今日1日が自分の人生の29200日の1ページになったかどうかを振りかえりたいのです。

活字離れではないが、読書離れが進んでいる

2024年09月21日 12時37分00秒 | 教育・子育てあれこれ




日本で、電子書籍を含み、月に1冊も本を読まない人(16歳以上の成人)がついに5割を超え、6割以上になることが、2023年度の「国語に関する世論調査」(文化庁)で明らかになりました。


比較対照できる2008年度以降では最多となりました。


2018年の結果より、月に1冊も本を読まない人が顕著に増えたことがわかりました。


これは、年齢や地域に関係なく、まんべんなく増えているのです。


スマートフォンやSNSの普及が原因と考えられます。


それは、本を読まないと答えた人が、インターネットで記事などを読んでいるのはほぼ毎日と答えていることからわかります。


その点で見れば、人が「活字離れ」になっているのではないといえます。


2018年度にスマホ・タブレットは普及していたのですが、この5年間で多様なアプリが充実してきて、人は本からスマホ・タブレットに乗り換えたということでしょう。


これは読書離れを顕著に示しており、以前にわたしは何度かブログにのせていますが、思考力、深い思索の弱体化につながるいう危機感をもちます。





疲れたときには専門家

2024年09月19日 06時07分00秒 | 教育・子育てあれこれ
現代社会は、ものごとが複雑化しています。人間関係も複雑になります。

私の20代のときは、勤めていても日常生活を送っていても、もっと単純でした。

しかし、今ではそうはいかないことも多くあります。

おしなべて、日本に住む人は結構真面目な人が多いと思います。

体の具合がよくなくても、周りの人に言わず自分でなんとかしょうとがんばります。

休みや休息期間が必要なのに、むしろ仕事に打ち込むことで克服しよう、いや紛らわせようとするのです。

そういうときに頼るべきなのは、やはり専門家です。

自己判断ではなく、専門家や専門医に相談することで、疲れがたまっていた不調感も、専門的な導きにより、原因がわかることかあります。

原因がわかれば対処法も見つかります。

心身に影響を及ぼしているストレス源は環境要因なのか対人関係なのか、あるいは両方なのか、はっきりするとその整理にかかることができます。

嫌な感情や自分を否定したいなど、心が乱れたり、人を責めたりするときには、今自分がそのような状態にあるということに気がつくことが大切です。

思考がネガティブな方へ傾くのを止めることができるのです。

また、一方で他者のしんどさや弱さをうけとめることも、いまは必要です。

本人だけに努力を求めるのではなく、しんどいと言えない人もいることを理解して、受けとめや見守りができることで、助かる人もいるのです。


秋のアネモネ

2024年09月18日 07時02分00秒 | 教育・子育てあれこれ
先日、京都の貴船に行きました。

貴船山に多く咲いているのが、貴船菊です。

貴船菊は日本の秋を彩る花です。

また、秋に咲く明るい花という意味で秋明菊とも言われます。

もとは中国、台湾で咲いていたのが、室町時代に渡来して、少しずつ野生化して今にいたると考えられています。

今では、すっかりと日本の秋の花として位置づいています。

菊の名がついているので、菊科の品種と思われがちですが、じつはアネモネの品種です。

なんと、花びらに見えるのはじちは萼(がく)だそうです。本来の花びらは退化していると聞きます。

花言葉は、忍耐、淡い思いです。

雨にも風にも負けず、風にあたり優雅にそよぎます。

ススキと組み合わせて一輪挿しに生けると、妙に落ち着いた秋の気分になります。

高齢者を老害視する日本社会

2024年09月17日 07時14分00秒 | 教育・子育てあれこれ


わたしが少年さらに青年の頃は、日本の高度経済成長期で、バブル景気の頃でした。

1970年代前後には、経済成長のつけとして、公害病が社会問題となり、人びとの健康をむしばむようになり、大きなとりあげられました。

しかし、その対策は「たれながし」にしていた工業廃水や大気汚染を適正に管理して、クリーンなものにして、経済発展を持続させるもので、一定程度の成功をおさめてきたのが日本経済でした。

その際には、CO2濃度などはすでに課題にはなっていましたが、今でいう地球温暖化対策ほどは世界中で問題視されるようにはなっておらず、今ほど深刻に捉えられていませんでした。

しかし、その後、化石燃料資源が有限であることや温室効果ガス対策が世界が認識する課題となり、国連もSDGSを提唱し、現在に至っています。


でも、過去の発展を謳歌してきた私たち世代が過剰に消費し尽くした後の温室効果ガス社会の

ぬぐいしなきゃいけない。不条理じゃないか。


そのような意識を、いまの若い世代が抱いているのでないかと、わたは最近よく思います。


また、若い世代の老後への不安も、今の高齢者への反感につながっているのではないかと考えます。


年金、医療制度への不満が高齢者への嫌悪感に結びつき、高齢者の所作や振る舞いが、いわゆる「老害」という捉え方になるのではないと思います。


私自身もスーパーのレジに並ぶ前に、目の前をゆっくりと歩き、道を塞いでいることに無自覚な後期高齢者にいらつくこともあります。


一方で、国内旅行や海外旅行にでかける元気な高齢者が増え、高齢者はいたわるべき存在ではなくなり、下の世代からは反感が生まれ、嫌悪の対象となっているとも考えられます。



年齢をとることへの恐れや憎悪のようなネガティブな感情、高齢者を何もできなくなった弱者のように見下す見方が「老害」視線を生み出すとも考えることができます。


とはいえ、考えてみれば、誰もがいずれは高齢者になります。



日本の高齢者はこれから高齢化社会に向かう世界のパイオニアです。


私たちは非常に難しい立場の主体としてどういう社会にしていくか、自分自身に問い直しながら考えていく必要があります。



きめつけや偏見は誰の心にもひそんでいます。


だからこそ、年齢や性別といった属性で人をひとくくりにするこではなく、一人ひとりを個別に見るよう努力することが、みんなに求められます。







制度の充実は実態を変える

2024年09月16日 08時25分00秒 | 教育・子育てあれこれ

厚生労働省が7月に発表した2023年度の雇用均等基本調査によると、男性の育児休業の取得率が初めて3割を超えました。


男性の育児休業取得率は、2022年度と比べて13%増え、30.1%となり、初めて3割を超えたのでした。


ひと昔前には、育休を取得する男性がほとんどいなかったのですが、近年は増えているのです。


女性の取得率が2007年度以降は8〜9割で推移する一方、男性は2007年度以降10年間ほどは1〜3%の低水準だったのでした。


当時は男性が育児休業をとると、ほんとうに珍しかったのでした。


その後、年々上昇して2020年度に1割を超え、その後は上昇幅が大きくなってきたのでした。


男性の育休取得を促すため、企業には子どもが生まれる従業員への意向確認が2022年4月から義務付けられました。

この制度が後押しをしたと考えられます。


くわえて、男性向けに産後8週間以内に最大4週間にわたり、休みを分割して取得できる「産後パパ育休」も2022年10月に始まったのでした。


そういう意味では2022年は育休をとりやすくする制度改革が大きく前進した年でした。


やはり、制度の充実というものは大きな役割をもつと、あらためて思う次第です。


ただし、まだ課題は残っています。


事業所の規模別に見ると、従業員500人以上の事業所の取得率が34.2%です。


しかし、5~29人の事業所では26.2%となっています。


また、産業によって1~5割台と差があります。


政府は民間企業の男性育休取得率の目標を2025年に50%としています。


その実現のためには、さらに努力が必要です。


男性が育休を取得しなかった理由としては


「収入を減らしたくなかった」

「職場が取得しづらい雰囲気だった」がたくさをになっています。


中小企業向けに、国はいま育休中の社員の仕事を引き継いだ同僚に手当を支給する助成金を出しています。


また今後、育休取得率公表が義務づけられる企業の対象が拡大されていきます。


また、育休を一定期間内に両親とも取得した場合の給付を増やすことが予定されています。


制度の充実は、実態を変えます。

実態が変化すれば、人びとの意識が変わっていきます。


そうなると、今までは「少数」は「多数」、「特別」は「一般」になるのです。


輪島塗の復興を祈って

2024年09月15日 07時52分00秒 | 教育・子育てあれこれ
わたしは2019年の9月に輪島の朝市を訪れました。

その輪島の朝市は大賑わいでしたが、今年の1月1日に発生した能登半島地震の火災で、壊滅的な被害を受けました。

燃えないで残った漆器店でも、山積みの瓦礫が重なり、輪島塗の漆器は下敷きになりました。

ある漆器店では瓦礫の下からは、2月を過ぎてから少しずつ漆器を取り出しました。

ほとんどの漆器がなんとか無事でした。

この漆器は、若い職人が輪島塗の技術を学ぶための大切な資料となります。

明治時代から引き継いできた輪島塗の歴史そのものなのです。それを未来に引き継いでいくために伝承していくかけがえのない現物となるのです。

なかには、壊れた漆器もあったのですが、漆はそれ自体が強い接着剤になるので、割れたところを繋いで漆を上塗りすればよみがえります。



輪島塗は、ずっと以前は行商の販売スタイルをとっていました。

北は樺太から、南は沖縄まで、塗師屋が自分の足で歩いて漆器を売っていました。

ところが、バブル景気になると輪島塗は飛ぶように売れるようになり、デパートなどで美術品、高級品として販売されるようになりました。

しかし。輪島塗は、本来、一生使うことができる「くらしの道具」であり、宝物のように押し入れにしまいこむ器ではないのです。

使い込んだ漆器は、塗り直しします。壊れたら修理してまた使うのがくらしの道具なのです。

使う人の顔が見えるから、塗師屋と顧客との信頼関係が生まれます。

輪島塗には信頼関係をベースして、いまでも行商をする店もあります。

時間はかかるでしょうが、輪島の朝市が蘇ることを期してやみません。


脳は疲れている

2024年09月14日 08時34分00秒 | 教育・子育てあれこれ




最近の人間の脳の研究は、めざましく発達してきています。

その研究で、最近、脳は体と同じように疲れることが明らかになってきました。

なかには、コンピュータを使った作業を1時間程度継続して行うと、踏み台昇降100回分に近い疲労度になるという研究もあります。

さて、私たちはふつう1日の半分以上を、雑多な考えをしています。

たとえば、電車に乗っていると、前の人のもつカバンに注意を向けます。

あの服装に、そのカバンは合わないな。

高級そうなレザーのカバンをもっている。高そうだ。

また、あの男の人のカバンはかなり使い込んでいて、くたびれている。

このように、雑念がザワザワと湧き上がってきます。

私たちは、このように1日の半分以上、このような雑多な「考え」をしているそうです。

じつは、この「考え」がなかなかの難敵で、脳を疲れさせるらしいのです。

そのエネルギー消費量は、脳エネルギー量全体の6割から8割を占めると言われているそうです。

脳はいつも現在、未来、過去を行き来しています。

今日の会議はこういう内容だ。昨日はあの人とうまくいかなかったな。明日は新しい案件がある。

これも雑多な考えになります。

そこで、雑多な考えが浮かぶたびに、頭の中でそれを鎮めるように自分に言いきかせます。

考えが浮かぶたびにそれを繰り返すと、不思議とやがては静かな状態になってきます。

それが疲れない脳になります。

脳を疲れさせない秘訣は、「注意を向ける」ことだそうです。

私たちの脳はいつも海原(うなばら)にもまれ、心ここにあらずなのです。

そのように脳がげっそりしているところに、一服の清涼剤を落として、静かな状態にしてみましょうと、専門医は言っておられます。