箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

磁力でつなかる

2023年09月30日 06時52分00秒 | 教育・子育てあれこれ
たくさんいる人のなかには「磁力」のような力をもつ人がいます。

なにか人を引きつけるところがあり、その引きつけるものは人一倍の情熱であったり、洗練された振る舞い、または人への愛だったりして、人がまわりから集まります。

こんな人がリーダーを務める組織では、人の輪ができ、一丸となった集団ができます。

ただ、今の人びとが求める一丸とは、内部で拘束する引力がはたらくのではなく、ゆるくつながる関係です。

集団の中で、個人の自由度が高い。でも、いざというときには磁力を発揮して、目的に向い団結する。

人は磁石になることができます。

その特性を高めあい、組織が発展・繁栄する成熟した人間関係がいま求められています。

学校の仕事をスリム化すること

2023年09月29日 08時23分00秒 | 教育・子育てあれこれ
学校の教員の時間外勤務の縮減は待ったなしです。

文科省の調査結果から、2016年度の公立学校の教員の月平均の時間外勤務は小学校で59時間、中学校で81時間でした。

なかでも過労死ラインと言われる月80時間以上の時間外勤務の教員は、小学校で約3割、中学校で6割いることが明らかになりました。

それ以来、学校では働き方改革を行政主導で進めてきました。

そして、2022年度の調査は、時間外勤務を月45時間以内とするという2019年度に出した指針をもとに行われました。

その結果は、小学校では約65%、中学校で約77%の教員が上限越えでした。

そこで、国は教員の時間外勤務の手当は、給料月額に一律に4%の教職調整手当をつけ時間外勤務手当を支給しないという給特法の制度変更を検討する方向で、いま動き出しています。

具体的には、管理職手当の増額、学級担任手当の創設、主任等への手当支給などが考えられています。

しかし、わたしはこれには違和感を感じます。

「給料に定額の手当を支給するかわりに、働きなさい」と言われているという印象を受けるのです。

それよりも、なんでも学校の仕事だと肥大化した仕事の量を減らすことが、働き方改革の本丸であるべきなのにと思うのです。

社会が複雑化するなともない、学校に期待される役割が増大してきて、いまに至っているのです。


そこに抜本的なメスを入れずに手当を増やしても、良心的な教師は膨大な仕事量を前にしても「子どものためだから」という思いで働き続け、結果的に時間外勤務は減らないのです。

もっと学校の役割をスリム化しないと、教職を志す人は増えないだろう、また時間外勤務の長さは減らないだろうと思うのです。







半世紀の歩み 名所の変貌

2023年09月28日 07時13分00秒 | 教育・子育てあれこれ
わたしは小学校2年生のとき、家族旅行で和歌山県南紀白浜の近くにある三段壁(さんだんべき)に連れていってもらいました。

真っ青な海にそそり立つ岩壁に圧倒されました。

海の青色と岩の茶色がコントラストとなり、圧倒的な迫力をもって、わたしに迫ってきたのを今でも鮮やかに思い出します。

そして、極めつけはそこが「自殺の名所」と聞いたことでした。

ここまで来て人は身を投げるのかと思い、わたしの感受性には戦慄が走りました。

それから50年以上が経ちました。

今、三段壁は「恋人の聖地」に変貌したと聞きます。

展望台の近くには、ハートのモニュメントがあります。

恋人たちはハート型の南京錠を、そのモニュメントに飾り、愛を誓います。


夜には洞屈で、プラネタリウトやライトアップを楽しむ「星降る洞窟 ナイトウォーク」を開催しています。


半世紀をかけ、投身自殺を思いとどまらせ、人と人をつなげたいという地元の人の切なる思いが伺えます。


8割成就でいい

2023年09月27日 12時15分00秒 | 教育・子育てあれこれ
対人関係では、とくに仕事について、自分がいい仕事をしよう、うまくやろうとすると、相手にも完全を求めてしまいがちになります。

そうすると、「なぜ〇〇ができないのか」とイラーとするのです。

そんなとき、「8割ほどできればいいか」と思っていると、相手にいら立つことがないのだと思います。

加えて、自分自身も無理をせずにすみます。

もともと、人は不完全なもの。自分自身も完全ではないのです。

仕事ではとくに8割成就をこころざせばいいのかもしれません。

自立とは何でも自分でできるようになることにあらず

2023年09月26日 06時45分00秒 | 教育・子育てあれこれ
社会では、人が他者に厳しくあたり、自分のことで精一杯で、ギスギスした世の中だと思われがちです。

でも、それほど捨てた世の中でもないと思う場面を見ました。

車いすに人を乗せて坂を押している女の人がいました。

あまりにも重くて一人で押すのには無理があり、立ち止まっている人がいました。

その人は、通りすがりの人に声をかけ、頼みました

「おばあちゃんは体重が重いねん。いっしょに坂の上まで押してくれへん?」と。


それを聞いた別の女の人は助けてくれて、いっしょに坂の上まで押してくれたのでした。

さて、「自立」という言葉を聞いたとき、多くの人は自立とは自分一人でできるようになることだというでしょう。

でも、私が思う自立とは、自分でできることは自分でしますが、一人ではできない場面がどの人にも多かれ少なかれあるでしょう。
そのとき、「助けてください」と言える、そして言われたほうも「いいですよ」と助ける。

そのような豊かな人間関係をもつことこそが「自立」なのだと考えます。

他者に頼ったらダメなのではなく、頼る、またそれに応える関係こそが、自立なのだとわたしは、教職生活の途中からそう思うようになり、今もそう考えています。

人の性格はそのままでいい

2023年09月25日 13時16分00秒 | 教育・子育てあれこれ
学校にはたくさんの生徒がいて、積極的な子もいれば、消極的な子もいます。

おしゃべりな子がいる一方で無口な子もいます。

楽天的な子もいますが、悲観的な子もいます。

人の性格や人となりについては、過去に教育心理学の研究者が、その研究を発表しています。

分析心理学の開祖と言われるユングは、

人の心の働きは意識をコントロールすることであり、認識していない無意識の働きが大きく影響するという研究をしました。

また、フロイトは人間の心のモデルは意識、前意識、無意識の三層構造であると主張しました。

人の性格は、一人ひとり違っていて、かえられないし、変える必要もないのだと思います。

本来の性格をかえようとしてねじまげると、かえって不自然になります。

わたしは教職を通して、生徒がそのような性格に生まれた、あるいは育ったことには意味があるという考えにいたりました。

無理に性格を変えようとせず、そのままの、ありのままの自分でいることが、自分を解放することになるのだと、いまは考えています。

学校に通うことが「無理」と言う子に対しては

2023年09月24日 06時44分00秒 | 教育・子育てあれこれ

今の子どもたちに関して、学校に通うことはけっこう難しいと思う子が少なくはないというのが現実です。

とくに長い休み明けの場合は、しんどいと思う子が増えます。

学校に来なくなる子はそれぞれに理由がありますが、その理由を安心できる人にしか話しません。

だから、大人からすればその子が考えていることはそう簡単にはわかりません。

もし、その子にとって学校との信頼関係が壊れているならば、たとえば教師から学校に来ない理由を聞かれても、正直な気持ちを言おうととはしません。

そして、「もう、この学校、この世の中無理!」と思ったら、学校には行こうとしません。

その場合、話せない、対話できない学校や世の中をつくってしまった大人の側に、不登校の原因があるとしか言えないのだと思います。

こういう主張を聞かれると、それは子どもの甘えでないのか?

大人が「私のころはもっとたいへんだった」とか「しんどくても、ほかの子はがんばっているんだ」と言っても、その声は届きません。

増えたとはいえ、学校に来れない子は全体の数からすれば「少数派」、つまりマイノリティです。

マイノリティの示す課題は、その人たちの問題ではなく、マジョリティ側の問題であるのが常です。

学校に来るのが難しいという子の話をしっかりと聞くこと。

そして、マイノリティの子にとって安心できる大人、教師や親が少しでも増えるよう、大人が変わることしかないと思います。




秋分・彼岸の頃

2023年09月23日 06時39分00秒 | 教育・子育てあれこれ
暑かった夏が終わり、やっと秋めいてきました。

9月23日が秋分の日で、10月7日までを「秋分」と言います。

秋分の日には、太陽が真東から出て、真西に沈みます。

春分の日の前後7日間、また秋分の日の前後7日間を彼岸と言います。

秋の彼岸は
9月20日の
水曜日から9月
26日の火曜日までとなります。

例年この頃には、彼岸花が咲きます。

まるで燃え立つような赤色は、いろいろな思いをあたたかく照らしてくれます。

また、今年の中秋の名月は9月29日です。

澄んだ秋の月光が情熱的な彼岸花を、コントラストとなり照らします。



地方女子の傾向

2023年09月22日 05時57分00秒 | 教育・子育てあれこれ
日本で最難関と言われる東京大学。

この大学の女子学生の比率は、およそ2割程度で、時代の変化に関わらず、ほぼ2割どまりです。

その2割の学生のうちの多くは、首都圏の出身者です。

地方学生の比率は少ないままです。

およその傾向として、地方から東大へ行くことに価値観を置かない学生本人と保護者の意識が関係していると思われます。

地方の女子学生はできるだけ実家から近いところで、資格の取得に有利な大学を選ぶ傾向があるようです。

また保護者も偏差値の高さよりも、合格しやすさを重視する傾向があり、東大を目指さない理由になっているようです。

なお、関西圏に住んでいて思うのですが、関西圏の女子学生は、難関国立大学を目指す女子学生は、大阪大学や京都大学へ行きます。

両大学は女子学生の比率も結構高いのです。大阪大学で約4割、京都大学で約3割です。
わざわざ東京大学へ進学しようとはしません。

わたしは、何も東大を目指さないといけないと考えているのではありません。

目指さない理由にも合理性があると思います。

ただ、女子だからとか、地方在住だからという理由で、人の選択肢がせばめられているのだとしたら、それは公平ではないと考えています。

国会議員や国家公務員、企業の役員には東大出身者が多く、男女比のアンバランスを解消するとするならば、男子学生:女子学生=8:2ではかわりようがないと思います。

学校の学習はスタート点

2023年09月21日 07時41分00秒 | 教育・子育てあれこれ
修学旅行で平和学習のプログラムを実施する学校の場合、戦争体験者からの聞きとり活動は、大きな意味をもちます。

そもそも、人は一生涯にわたって学び続けるものです。 

今の時代、情報は次々と更新されます。

社会で生きていくには、新たな知識を獲得して、それをはたらかせたいくためにも、学び続けることが必要です。

その視点でみたとき、学校教育での学びはたんなる「きっかけ」つまり「スタート点」です。

学校を卒業したら学習は終わりではなく、学び続けるのです。つまりlifelong learningなのです。

きっかけについては、教科の学習だけでなく、平和学習も同様です。

修学旅行での平和学習の学びはゴールではなく、スタート地点に立ったということです。

たとえば長崎で被爆体験者から原爆の話を聴くのは、畑に種がまかれたということです。

それを芽吹かせることを期待して、被爆体験者は気力と体力を振り絞って語るのです。

修学旅行できた学生に語っても何人の人に残るのかという疑問もあるかもしれません。

でも、それがかりに1人、2人であったとしても、ゼロではない。
 
そのような思いを込めて語ってくれる体験者の願いに応えるのは、種をまかれた子どもたちです。



ジェンダーバイアスから抜け出す学校

2023年09月20日 08時24分00秒 | 教育・子育てあれこれ
LGBT理解増進法が、今年6月に施行されました。

性的少数者が直面している困難を一つずつ解消したいくことが望まれます。

また、社会への啓発も大切です。

さらに、ハラスメントが起きないように学校教育の中に学習を位置づけることが課題になります。


実際に学校に身を置くと理解できますが、学校には一定程度の性的マイノリティに該当する子がいます。

そこで学校の人権教育では、LGBTQの子にどう配慮するかという学習をすることが多いのです。

でも、わたしはそれよりはむしろ「男らしく」「女らしく」というジェンダーバイアスを変えることのほうが必要かと思います。

つまり、固定的な性的役割に基づく思い込みや偏見を取り去ることが、学校では多様な性的マイノリティの子どもがいることの理解につながるのです。

子ども一人ひとりに適した対応があることで、どの子も生きやすい学校になるはずです。

性的マイノリティの子が周囲と良好な人間関係を築いていけることが、生きていくうえで大切になります。



教師にとっての不登校の児童生徒

2023年09月19日 09時11分00秒 | 教育・子育てあれこれ
不登校の児童生徒は、2021年度に24万人をオーバーして、今までで最多となりました。

学校で先生とおりあいがよくない、クラスや学年の友だち関係がうまくいかない、ときにはいじめを受けたなどが理由で学校に行けなくなります。

また、なんとなく学校の雰囲気があわない、起立性調節障害で、朝に血圧が上がらず登校できないなどの病気が理由になっていることもあります。

理由や原因が定かでないこともあります。

ただし、親や教師などのまわりの大人の期待は「登校してほしい。がんばって登校しよう」であることが多く、それが子どもにとっての重荷になることも多いです。

それを知った子どものほうは、自分の気持ちを抑え込み、無理やりに登校しようとします。

すると、体が拒否するようになり、お腹が痛い、頭が痛いとなり、ほんとうに学校に行けなくなります。

専門家は「傷つき、疲れ果て、追い詰められる前に、学校を休んだほうがいい」という見立てをします。

そして、休めるようになった子は心理的に楽になり、落ち着いてきます。

そのアドバイスを受けて、親御さんが「がんばって行きなさい」から「休んでいいよ」と態度が変わると、実際に子どもは落ち着いて家で過ごせるようになることが多いものです。

だからといって、教師も同じ態度でいいのかというと、わたしはそうではないと思います。

つまり、「休んだほうがいい」という見立てを曲解して、不登校の子への登校を刺激しないという口実で、その子へのかかわりをやめる口実にしてはいけないのです。

学校の教師なら、クラスの子が登校できることを願うのは当然のはずです。

来れないなら来れないで、その子その子にあわせ、家庭を訪問したりできます。

それがあわない場合は、手紙を渡すなどできます。

親御さんとつながりをもてるように、教師の方から近づき、人間関係を深めます。

また学級担任は、休んでいる子と他の生徒たちをつなぐ情報をクラスで伝えます。

もちろん、本人の了承をとり、「今は家でこんなことをして過ごしてるよ」と伝えるのです。

そうしないと、クラスに来れない子のことは、ほかの生徒たちから忘れられていきます。

こういう取り組みを丁寧に学級担任がしているクラスは、いざ不登校の子がクラスにはいったとき、受け入れができます。

教師は不登校の子に対してできることは、たくさんあります。

そのことは忘れないでほしいと思うのです。



天職から転職へ

2023年09月17日 07時29分00秒 | 教育・子育てあれこれ
日本では、年功序列制、終身雇用制が崩れてかなり年数が経ちました。

いまでは、一度就職したからといってずっと生涯にわたり勤め続けようとする人は少ないですし、また勤め続ける制度のあと押しもありません。

ずっと同じところにいずに、転職を志す傾向は、とくにいまの若い世代に顕著に現れています。

リクルートの調査では、26歳以下の社会人に、今いる職場にずっととどまりたいかという質問に対して、YESと答えた人は約2割でした。

とどまるのは2年から5年と考えている人が4割以上いました。すぐにでもかわりたいが15%以上でした。

この世代の人たちには、転職は当たり前の意識になっているのです。


古い世代の人たちのように、一度就職をして、その仕事を「天職」ととらえ、一生涯その仕事に精通するというのは、もはや昔の話です。

いまや仕事は「天職」ではなく「転職」になっています。

ですから、もうこれからは専門性をきわめるような「職人」は育ちにくい社会になっていくのかもしれません。

勤労観のちがいもあるでしょう。

新しいことにチャレンジできる。

起業したり、独立できることをめざす。

仕事一辺倒ではなく、プライベートな時間ももちたい。

社会のスピード感も変わってきました。それに対応するには、複数の職場を経験することも必要であると考える若い世代が増えているのでしょう。

企業側からすれば、働いてくれる人が定着しなければ、人材が育たず安定経営にも影響すると危機感をもつことになります。

この若い世代の意識変化に対応する採用活動、職場づくりが企業側に求められ、兼職も可能になる働き方を模索していくことに今後シフトしていくことになるでしょう。








学校教育をシンプルな営みに

2023年09月16日 08時09分00秒 | 教育・子育てあれこれ
そもそも、子どもは地域や社会で育てるのが、日本での教育でした。

しかし、ここ10年間ほどは家庭教育や学校教育で子どもを育てるものという流れに変わってきました。

こども家庭庁が、2022年に発足し、こども基本法が成立した背景には、弱体化した家庭教育を立て直す意図が根底にあります。

「第3期教育振興基本計画」(文科省)では、Society 5.0を見据え、それに対応できる人を育てるための学校教育の役割を重要視しています。

そういった教育の流れをおさえていくと、学校教育がたいへん複雑化してしてきているのがわかります。

それとともに、学校に求められる役割が肥大化してきています。

ICT教育、プログラミング学習、DX、生成AIなどを取り扱うなど、ますます現場の多忙感が増大します。

いまは、一度教育の目的である「人格の完成」(教育基本法)にたちかえり、オーソドックスな社会人の育成をめざすという、児童生徒がゆったりとした学校生活を送るというシンプルな営みに戻すのがいいのでないかと、わたしは考えます。



いまの学校でのリーダーになる生徒

2023年09月15日 06時52分00秒 | 教育・子育てあれこれ
児童生徒は、個々に様々な家庭環境を背景にもち、日々学校へ通ってきます。

その様々な家庭環境とは、親子関係、家族構成、経済状況など、子どもによって困難な家庭もあります。

一般的には、困難な家庭状況を抱える児童生徒の場合、それは学力向上に影響が出ます。

それを踏まえ、学校の教員はどの子にも学力向上を願い取り組むのです。

ただ、困難な家庭状況にあっても、高い学力を維持する子どもも、一方ではいます。

経験的にわたしが思うのは、その子たちに共通しているのが、クラスや集団の中での合意形成が上手な傾向が見られるということです。

ちがい考えや意見があり軋轢が起きても、柔軟に意見をきいてまわり、調整し、やがては「これでいこう」という折り合いをつけることができるのです。

今、学校教育の中で、リーダーの児童生徒というのは強い統率力ではないのです。

もちろん、そういうリーダーもいます。

でも、やわらかい人あたりで、同調圧力に屈せずコミュニケーションを大切に、意見をまとめていく子がリーダーになるのです。