30年以上前の医療現場では、当時、がんの患者さんに医師が病名を告げるのは医師の裁量にまかされていました。
また、がんの診断の確実性が高まっても、不治の病とされていたころには、本人が診断名を知り、ショックを受け治療意欲をなくしたりするのを恐れて真実を隠すことも多かったのです。
さらに、本人が真実を知りたいと希望する場合でも、実際には家族が強くがん告知に反対して、本人には病名を告げないこともありました。
その後1990年代前半は、本人への告知が大きな議論になり、最高裁はついに2002年、「告知を検討することは医師の義務」という新しい判断をくだしました。
たしかに、真実を伝えないことは、本人がパニックになるリスクを減らすかもしれません。
しかし一方では、何か隠されているかもしれないと本人が思い、勘ぐったり、不安を抱く場合もあるます。臆測がひとり歩きするとたいへんになります。
病名を告知する義務が生まれた後、「つらい病名をどのように伝えるか」というテーマで医師たちは研究しています。
今では診断を受けた方々も冷静に自分の病気を受けとめ闘っている人が多くなりました。
一時的には気持ちが落ち込むかもしれませんが、患者さん本人が立ち直り、前を向きに毎日を過ごすようになるケースが多かなっています。