蕎麦とうどん、どちらが好きかと問われたら断然そばと答える。
でも子どもの頃は、うどんの方が好きだった。
昔、母がおやつに蕎麦粉を練ったそばがきをよく作ってくれたのだが、散々食べた記憶のふかしたじゃがいもと同じで、最初は美味しいのだが徐々に飽きてきて、そのうちに見るのも嫌になってしまった。
だからお蕎麦もイマイチ好きではなくて、うどんの方が好きだった。
でも大人になるにつれてまた蕎麦が美味しいと思うようになった。
家では週に3〜4日は蕎麦を食べ、お気に入りの蕎麦屋も月一で通っている。
ところである方に「新そばの粉が出来たので、蕎麦打ちをしませんか」とのお誘いを受けた。
もちろん二つ返事ですぐに「行きます」と答えた。
実は蕎麦打ちは、昔一度だけやったことがある。
長男が中学一年で、長女と次女が小学生だった頃、子ども向けの蕎麦打ち講習会に三人を引き連れて参加した。
参加者が少なくて「お母さんもどうぞ」と言われて、蕎麦を練るところをやらせてもらったのだが、菊ねりというのが難しくてなかなかうまくできなかった記憶がある。
ところが意外や長男が上手で「中学出たら蕎麦屋にならないか?」と誘われていたっけ。長男には蕎麦屋になるという道もあったのだなあ、、なんて思う。
さて誘われた蕎麦打ち。
初心者という事で、ほぼマンツーマンで教えて頂けた。
教えてくれたのは、お蕎麦が好き過ぎて、自ら蕎麦打ちを始めた方々のサークル。
男性も女性も同じくらいの割合で、年齢層はやや高めだが、聞くところによると定年後の人もいれば、まだ現役世代の人もいらっしゃるとか。
みなさん、本業ではなく趣味で蕎麦打ちをやっていらっしゃる方ばかりだそうだが、揃いのユニフォーム姿は、どう見ても本物のお蕎麦屋さんに見える。
そして、いよいよ蕎麦打ち体験をした。
最初にお手本を見せてもらったのだが、蕎麦打ちから蕎麦を切る動作まで実にリズミカルで無駄がない。
練っている最中に新そばの良い香りが漂ってきて、蕎麦を打つより早く食べたい気持ちの方が強くなる。
お手本の蕎麦が出来上がったところで、いよいよ蕎麦打ち体験をしたのだが、先生方のようにリズミカルには全然いかない。
最初はぎこちない動作で打っていたのだけど、途中から「おやっ、もしかしてこんな感じ?」と覚醒(笑)した。
「上手です」と褒め上手の先生におだてられ、その気になってそばを打っていたら、いつの間にか汗びっしょりになっていた。でも達成感ある、、
出来上がったお蕎麦は、器に入れて自宅に持ち帰ることになり、最後に先生の打った蕎麦をご馳走になったが、蕎麦の香りが鼻に抜けてめちゃくちゃ美味しいお蕎麦だった。
そして蕎麦つゆもお手製とのことで、作り方は教えてもらったものの、出来たつゆを安くわけてくださるとのことで買ってきた。
こちらの蕎麦つゆも原材料から作り方までこだわり抜いたつゆで、最後まで残さず飲み干すほどの美味しさだった。
最後にお蕎麦を食べながら、先生方が熱く語る蕎麦に対する熱意を伺ったが、「蕎麦愛」とも言える情熱は、羨ましいと思うほどだった。
こんなに好きで、情熱を傾けることができるものを持っているのが羨ましい。
さて、そろそろ街のお蕎麦屋さんにも新蕎麦が並ぶ季節。
自宅に持ち帰った新そばを、二日に分けてお腹いっぱい食べたにもかかわらず、すでに今、お蕎麦が食べたいと思っている。