前回の旅行の続きです。
奈良、京都では幾つもの神社仏閣に行ったのだけど、その中で特に印象に残る場所の話を書こうと思います。
まず東大寺。
東大寺には有名な大仏殿のほかにも二月堂など有名な建物があって、特に二月堂の建物の美しさは言うまでもなく、そこからの眺めはとても美しくて印象に残るものだった。
しかし、別の意味で印象深い場所になったのが大仏殿だった。
こちらには、かの有名な大仏さまが鎮座していらっしゃる。
大仏殿の中は多くの修学旅行生が訪れていて、それぞれガイドさんから説明を受けていたが、近くにいた修学旅行生のガイドさんのお話がとても面白くて、つい聞き耳を立てて説明を聴かせて頂いた。
生徒さんの列の一番後ろに付いて、ガイドさんの説明に耳を傾けながら大仏さまの周りをひと回りして正面に戻って来た。
帰る前に、せっかくなのでお参りをしていこうと大仏さまに向かって手を合わせることにした。
「こういう場合、なんと言ってお参りすべきなのだろうか」と手を合わせてから考えた。
南無阿弥陀仏というのかな、、、それではどうもしっくり来ない気がしたので、いつも神社や自宅で行っている通りに感謝の言葉だけを心の中で思った。
ところで祈りを終えて目を開けた時、左隣に誰かが立っているのがわかった。
顔を左に向けると、隣に若い女性が立っていた。
私にぴったりと寄り添うようにしていたので、思わず「近っ」と思った。
また顔の位置がほぼ私と同位置だったのもちょっと驚いた、、、というのは、私の身長は171センチなので、最近は身長の高い若い娘はたまに居るが、これまで同じ高さに顔がある女性と、こんなに近くで並んだことがなかった。
その女性は、微笑みながら大仏さまを見つめていた。
よほど大仏さまが好きなのだろうと思ったくらい、大仏さまを慈しむように見つめている。
「大仏さまマニアなのかな?それにしても近すぎるわ」と思った次の瞬間、消えた!
えっ、なになにどうしたの?と後ろを振り返って見たり、周りを見渡して見たが、その女性はどこにも居なかった。
幽霊なのかと思ったが、これまで見た透けている幽霊と違って、あまりにもはっきりとした姿だったから、生きている人間だとばかり思っていた。
その女性の微笑んだ顔は、はっきりと見て、しっかり覚えていたつもりだったが、不思議なことに旅行中にどんどん忘れていった。
思い出そうとしても、まるで手から砂がこぼれるように忘れていった。
そして今は、大仏さまを見つめる目と微笑んだ口元しか思い出せなくなった。