さて、3日目はいよいよ次女ピーチが引っ越しをする日だった。
この引っ越しが思った以上にハードで、引っ越しを終えたあとは疲れすぎで、しばらく吐き気がしてご飯が喉を通らなくなるほどだった。
こんなに疲れたのは久しぶりかもしれない。
二階の部屋から重たい荷物を運び出し、それらをトラックの荷台に乗せる。
一人暮らしのはずなのに、こんなに多かったかと思うくらいのたくさんの荷物を二階の部屋(それも階段から一番遠い部屋)からトラックへと荷物を運んだ。
滑らないためにラバーのついた軍手を持っていて本当に良かった。
洗濯機や冷蔵庫などの大物家電は普通の軍手では運べなかったかもしれない。
ところで、私がなぜ引っ越し業者さんのように働かなければいけなかったかと言うと、軽トラック一台とそれを運転する男性ひとりしか頼んでいなかったから。
引っ越しをすることになって、私はいくつもの引っ越しやさんに電話をかけて、だいたいの見積もりを聞いたのだが、一般的な引っ越し業者だと12万円以上になった。
「単身世帯で目と鼻の先ほどの場所に引っ越すのに、そんなにかかるんだ」と驚いたが、軽トラックではなく普通のトラックで作業員が二名くることを考えると妥当な金額なのかもしれない。
そしてこのような引っ越し業者さんに頼むと、すべてをやってもらえるだろうから、たぶん依頼主は座って見ているだけで良いのだと思う。
ところで、私が見積もりをした中に○帽さんがあった。引っ越しも受け付けますと書かれていた。
試しに何社か見積もりを取ると、一般的な引っ越し業者さんに比べて四分の一以下で受けてくれるとか。
ただし運転手兼作業員一名しか来ないため、依頼主も働かなければならない。
私は働くのは苦にならないし、長女と次女もいる。
かよわい(?)女手だが、○帽さんのほかに三名いれば大丈夫だろうと思い、○帽さんにお願いすることにした。
さて、どこの○帽さんにお願いするか・・・
いくつかの○帽さんに電話をして、その中でも一番頼りなさそうな話し方をする○帽さんに決めた。
なぜ頼りなさそうな人に頼むことにしたかと言うと、頼りなさそうな話し方の中にもどこか誠実な感じを受けたからかもしれない。
引っ越しをお願いした○帽さんは、何度も何度も電話の向こうで当日の準備の確認をしてくれた。
「もう大丈夫ですよ」と思うくらい確認してくれる。
さらにはこちらを出発する二日前に電話をくれて、また当日の確認をした。
羽田に着く時間も教えてあったのだが、着いた時間を見計らうように東京でもまた電話をくれた。
「段ボール箱はアパートの前に置いておきました。盗まれる心配はありませんよね。大丈夫ですよね」と念を押すようにおっしゃる。
「大丈夫ですよ。段ボールなんて盗まれないと思います」と答えると、「いえいえ、段ボールで家を作って住んでいるおじさんが持っていく心配がありますから」とおっしゃったのには思わず笑ってしまった。
一生懸命に引っ越しをやってくれようとしているのが伝わって来て、最後に渡そうと思っていたドリンクは、お茶のペットボトル以外に家に帰ってから飲んでもらうように缶ビールも2本買っておいた。
(まちがいなく、この方はお酒が好きだと思ったので)
やってきた○帽さんは60代後半と思われる方だったが、電話から想像していた通りの実直そうな方だった。
そして自分のことを「おじさん」と呼び、私のことを「おかあさん」と呼び、チェリーとピーチのことを「むすめ」と呼んだ。
「おじさんがこっちを持つから、おかあさんはそっちを持って。むすめ!むすめは段ボール箱を運んで」というような感じで、引っ越しは順調に進んで行った。
しかし、すべての荷物をトラックに積み込み、新しいアパートに向かう途中で道に迷ってしまったのは予想外の出来事だった。
目印になる建物を教えてもわからない様子なので「おじさんの地元はここではないのですか?」と聞くと「いやぁ~ここなんだが・・・」となんとも頼りない返事が返って来た。
結局、かなりの時間をかけて新しいアパートに辿り着いたのだが、それでも滝のような汗を流しながら安い料金で一生懸命に引っ越しをして下さったおじさんには感謝しかなかった。
引っ越しが終わり代金を支払おうとすると「今、領収書を書いてきますから」と言っておじさんはトラックに戻り、しばらくして戻って来たおじさんから受け取った領収書の金額を見て驚いた。
なんと当初聞いていた代金の三分の一の金額で書かれていた。
これではあまりにも少なすぎる!
それを言うと、おじさんは頭をかきながら「いやいや、おじさん迷ってしまったし、おかあさんもむすめもたくさん働いたから、これくらいでちょうど良いんです」とおっしゃった。
しかしそのような金額では私の方が後味が悪いので、きちんと当初の金額でお支払いするとおじさんは申し訳なさそうに受け取ってくれた。
そしておじさんはピーチに向かって「あと3年間、頑張って勉強してください」と言い、チェリーには「おねえちゃん、今日はたくさん荷物を運んでくれたね。ありがとう」と言い、私にも「おかあさんもよく働いてくれました」とおっしゃってくれた。
頑張ってよく働いてくれたのは、おじさんの方なのに・・・
引っ越しを終えたあと、身体は吐き気がするほどヘトヘトだったが心には温かいものがこみ上げてきた。
○帽のおじさん、ありがとう。
この引っ越しが思った以上にハードで、引っ越しを終えたあとは疲れすぎで、しばらく吐き気がしてご飯が喉を通らなくなるほどだった。
こんなに疲れたのは久しぶりかもしれない。
二階の部屋から重たい荷物を運び出し、それらをトラックの荷台に乗せる。
一人暮らしのはずなのに、こんなに多かったかと思うくらいのたくさんの荷物を二階の部屋(それも階段から一番遠い部屋)からトラックへと荷物を運んだ。
滑らないためにラバーのついた軍手を持っていて本当に良かった。
洗濯機や冷蔵庫などの大物家電は普通の軍手では運べなかったかもしれない。
ところで、私がなぜ引っ越し業者さんのように働かなければいけなかったかと言うと、軽トラック一台とそれを運転する男性ひとりしか頼んでいなかったから。
引っ越しをすることになって、私はいくつもの引っ越しやさんに電話をかけて、だいたいの見積もりを聞いたのだが、一般的な引っ越し業者だと12万円以上になった。
「単身世帯で目と鼻の先ほどの場所に引っ越すのに、そんなにかかるんだ」と驚いたが、軽トラックではなく普通のトラックで作業員が二名くることを考えると妥当な金額なのかもしれない。
そしてこのような引っ越し業者さんに頼むと、すべてをやってもらえるだろうから、たぶん依頼主は座って見ているだけで良いのだと思う。
ところで、私が見積もりをした中に○帽さんがあった。引っ越しも受け付けますと書かれていた。
試しに何社か見積もりを取ると、一般的な引っ越し業者さんに比べて四分の一以下で受けてくれるとか。
ただし運転手兼作業員一名しか来ないため、依頼主も働かなければならない。
私は働くのは苦にならないし、長女と次女もいる。
かよわい(?)女手だが、○帽さんのほかに三名いれば大丈夫だろうと思い、○帽さんにお願いすることにした。
さて、どこの○帽さんにお願いするか・・・
いくつかの○帽さんに電話をして、その中でも一番頼りなさそうな話し方をする○帽さんに決めた。
なぜ頼りなさそうな人に頼むことにしたかと言うと、頼りなさそうな話し方の中にもどこか誠実な感じを受けたからかもしれない。
引っ越しをお願いした○帽さんは、何度も何度も電話の向こうで当日の準備の確認をしてくれた。
「もう大丈夫ですよ」と思うくらい確認してくれる。
さらにはこちらを出発する二日前に電話をくれて、また当日の確認をした。
羽田に着く時間も教えてあったのだが、着いた時間を見計らうように東京でもまた電話をくれた。
「段ボール箱はアパートの前に置いておきました。盗まれる心配はありませんよね。大丈夫ですよね」と念を押すようにおっしゃる。
「大丈夫ですよ。段ボールなんて盗まれないと思います」と答えると、「いえいえ、段ボールで家を作って住んでいるおじさんが持っていく心配がありますから」とおっしゃったのには思わず笑ってしまった。
一生懸命に引っ越しをやってくれようとしているのが伝わって来て、最後に渡そうと思っていたドリンクは、お茶のペットボトル以外に家に帰ってから飲んでもらうように缶ビールも2本買っておいた。
(まちがいなく、この方はお酒が好きだと思ったので)
やってきた○帽さんは60代後半と思われる方だったが、電話から想像していた通りの実直そうな方だった。
そして自分のことを「おじさん」と呼び、私のことを「おかあさん」と呼び、チェリーとピーチのことを「むすめ」と呼んだ。
「おじさんがこっちを持つから、おかあさんはそっちを持って。むすめ!むすめは段ボール箱を運んで」というような感じで、引っ越しは順調に進んで行った。
しかし、すべての荷物をトラックに積み込み、新しいアパートに向かう途中で道に迷ってしまったのは予想外の出来事だった。
目印になる建物を教えてもわからない様子なので「おじさんの地元はここではないのですか?」と聞くと「いやぁ~ここなんだが・・・」となんとも頼りない返事が返って来た。
結局、かなりの時間をかけて新しいアパートに辿り着いたのだが、それでも滝のような汗を流しながら安い料金で一生懸命に引っ越しをして下さったおじさんには感謝しかなかった。
引っ越しが終わり代金を支払おうとすると「今、領収書を書いてきますから」と言っておじさんはトラックに戻り、しばらくして戻って来たおじさんから受け取った領収書の金額を見て驚いた。
なんと当初聞いていた代金の三分の一の金額で書かれていた。
これではあまりにも少なすぎる!
それを言うと、おじさんは頭をかきながら「いやいや、おじさん迷ってしまったし、おかあさんもむすめもたくさん働いたから、これくらいでちょうど良いんです」とおっしゃった。
しかしそのような金額では私の方が後味が悪いので、きちんと当初の金額でお支払いするとおじさんは申し訳なさそうに受け取ってくれた。
そしておじさんはピーチに向かって「あと3年間、頑張って勉強してください」と言い、チェリーには「おねえちゃん、今日はたくさん荷物を運んでくれたね。ありがとう」と言い、私にも「おかあさんもよく働いてくれました」とおっしゃってくれた。
頑張ってよく働いてくれたのは、おじさんの方なのに・・・
引っ越しを終えたあと、身体は吐き気がするほどヘトヘトだったが心には温かいものがこみ上げてきた。
○帽のおじさん、ありがとう。