散歩中にたくさんの人がパークゴルフをやっている公園の横を通りかかった。
普段はそのまま通り過ぎるのだけど、その日は天気が良くて気持ちのいい日だったので、少し見学していこうと思った。
パークゴルフのことは、ほとんど何も知らない。
多分ゴルフのようなものなのだろうと思うが、実はゴルフも知らない。
でも広い芝の上でボールを打って、旗が立っている穴の中に入れたら良いということはなんとなくわかる。
公園内に入って遠くから見ていたら、一人の女性がニコニコしながら近づいてきて声をかけてくれた。
「初めてですか?よかったら一緒にやって行きませんか?」
いきなりのお誘いになんと答えてよいのかと迷っていたら「楽しいですよ。少しだけでも体験してみたら」と言われて、好奇心がむくむく湧いてきてやってみることにした。
本当は数百円のお金がかかるのだけど、「私の顔パスで無料よ」と言われ、散歩中ということもあってお財布を持っていなかったため、お言葉に甘えることにした。
ゴルフクラブもボールもすべて貸して頂いて、早速やってみた。
ゴルフボールより少し大きめのボールを置いて、パークゴルフ用のクラブで打つ。
出来るだけ穴(カップと言うらしい)の近くまでボールを転がすといいと聞いて、思い切りクラブを振ってみたら、なんと豪快な空振りをしてしまった。
「初めてならそんなもんよー。気にしない」と女性に励まされ、再び打ってみたら、またもや空振り。
見ていたら簡単そうだけど意外と難しい。
周囲をあらためて見回してみると、五十代と見える方もいるが、多くは七十代から上といった年齢の方で、誘ってくれた女性も七十代かなという感じだった。
でもパークゴルフ自体は、子どもからお年寄りまで楽しめるスポーツで、パークゴルフの大会では「小学生の部」なんていうのもあるそうだ。
皆さん、長くやっているだけあってすごく上手で、もちろん豪快な空振りをしている人はいない。
ゴルフクラブの持ち方から打ち方まで教えてもらって、なんとか打てるようになり、カップにも入れることができてすごく嬉しかった。
「ねっ、入ると嬉しいでしょ?慣れてくれば打つ時の力加減がわかるから上手になるよ」と女性は励ましてくれた。
本当はハーフで9ホールあるそうだが、初心者が一緒だと、回るスピードが遅くなって、後ろからは次のグループが迫ってきていたりして、申し訳なくなってしまい、4ホールで抜けさせて頂いた。
でも楽しかった!今度はちゃんとお金を払ってコースを回ってみようと思う。
少しの時間だったが、なんだかスポーツを久しぶりにした感があって、その日の夜はぐっすりと眠ることができた。
見知らぬ私に「やって行きませんか」と声をかけてくれた女性には感謝しかない。
最近、趣味の会で六十代以上の方と交流することが多いのだが、パークゴルフをやりませんかと声をかけてくれた女性と、趣味の会で一緒の方々が、どこか共通する雰囲気がある。
それは何だろうと思ったら、みんな遊びを楽しんでいることじゃないかと思った。
これまで接する高齢者と言えば、介護の仕事で出会う高齢者の方やお姑さんだったが、その時とはまったく違う。
介護されている方は、お腹の底から笑っている人は少なく、いつも諦めたような顔で椅子にじっと座っている方が多かった。
元気だからこそ遊びを楽しめるのかもしれないが、でもそうじゃないのかもしれない。
歳をとって介護されても、まだ楽しむことはできるのではないか、、、
今はまだ私にはわからないことだけど、いつかわかる日が来るのかもしれない。
もっと楽しめ、遊べ遊べと言ったら、叱られるだろうか。
障害児の教育に心血を注がれて、生涯現役で107歳でお亡くなりになられた曻地三郎さんの言葉が心に残っている。
「我々、年齢を重ねた人間は、ただでさえ心も体も硬直してくる。それをほぐすには笑いや遊びが一番である」