親しくしているご近所の中国人の王さんと、王さんの家の前でばったり会った。
「久しぶりですね」と挨拶をすると、王さんは「息子の所に行ってました」と教えてくれた。
そして「チョット待ってて」と言いながら、王さんは急いで家の中へ入って行った。
戻って来た王さんの手にはお菓子。
「これ〇〇のお土産」と言って、息子さんが住む本州の地名を言いながらお菓子をくれた。
王さんは、どこかへ出かけると、必ずと言っていいほどお土産を買って来てくれる。
そこで私もお返しでお土産を持っていくのだが、王さんとはとても日本的なお付き合いをしていると思う。
ところで、聞けば息子さんはすでに結婚していたようで、この度、赤ちゃんが生まれたため、赤ちゃんの顔を見に行っていたそうだ。
赤ちゃんは、とても可愛かったと笑顔だった(気持ちはよくわかる。孫はカワイイ)
産後のお手伝いに行っていたのかと思ったら、顔を見てすぐに帰って来たそうだ。
「お嫁さんのお母さんが近くにいるから全部任せてるね。中国と日本では、しきたりが違う。日本人のお嫁さんは、日本のしきたりでやった方がいいね。だから顔だけ見て帰ってきた」
日本人同士でもそれぞれ家のやり方が違うが、違う国同士であればもっと違うだろう。
余計な争いは避けて、住んでいる国に同化しようとする王さんは、さすが医師だけあって賢いと思った。
王さんは、来日して二十五年以上経つそうだが、すでに日本国籍も取り、二人のお子さんたちも日本人として育った。
お嬢さんなどは「私の心は日本人」と言うくらい日本に馴染み、祖先である中国人を毛嫌いしているかのように見えることがある。
息子さんもそうだったように、きっとお嬢さんも日本人と結婚して子どもを育てて、日本に同化して日本人として死んでいくのだろうなと思う。
ところで最近読んだ本がとても面白かった。
「日ユ同祖説」と聞いたことがある。
日本人の祖先が、2700年ほど前にアッシリア族に追放されたイスラエルの十支族の一つであると言う説だが、こちらの本は、同祖ではなくて日本にやって来たユダヤ人たちが、日本に同化していった「同化説」を主張している。
著者によると渡来人と言えば、ほとんどの人は中国人や朝鮮人だと思っているが、実はそうではなくて、渡来人🟰古代ユダヤ人だという。
古代ユダヤ人たちは、旧約聖書の時代から5世紀にかけて、5波に分かれて日本に渡来し、一神教であるユダヤ教を捨て、日本人が信仰する自然崇拝を受け入れ、そして日本に同化していったことを実例をあげながら紹介している。
日ユ同祖説と日本同化説、どちらの説が正しいのかわからないが、いやどちらの説も正しいのかもしれない。
ただユダヤ人との関係が深くあったことだけは、 古墳から発掘された土偶からも間違いないらしい。
現在でも超正統派と呼ばれるユダヤ教徒の装束とそっくりな埴輪。
日本に定住したユダヤ人たちはユダヤ教を捨てたが、正式に埋葬される時にはユダヤ人としての伝統的な姿を重視したため、古墳から出土する埴輪もその形をとっていると考えられる(日本にやって来たユダヤ人の古代史より)
こうした埴輪は関東と東北で多く見つかっているが、近畿、九州など全国各地で出土しているそうだ。
古代を想像しながら読み進めることが楽しくて一気に読んでしまった。
読み終わって思ったことだが、こうして古来に日本にたくさんの渡来人が入って日本人になっていったとしたら、それは現代も変わっていないのではないだろうかということ。
中国から来た王さん一家のように、子孫たちが日本人になっていく姿を見ると、それが良いか悪いかは別として、古代も現代も同じなのだなと思った。
少しずつ同化し、また新しい日本人が生まれていくのかもしれない。