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ゆめと心理と占いのはなし
Por donde, amor, he de ir?
 Rosalia de Castro

父の声

2015-07-18 16:00:52 | 日記

ぼくの小さいときをよく知っているという女性に、「お父さんの声そっくりだね」と言われた。

その女性は遠い親戚にあたる人で、父の法事に来てくれた。ぼくとしては初対面同然の女性だったんだけど、叔母との思いで話しを傍で聞いていたら、ぼくが幼いときの我が家の様子がそれとなくわかっておもしろかった。

うちの両親は仲が悪く、末っ子のぼくが生まれたころには別居状態になったみたいなので、ぼくは父親の顔は覚えているけど声がどんなだったか記憶が全くない。父と一緒にいたときの情景はいくつか思い出せても、まるで無声映画のような感じで父の顔が流れていく。彼は無口で、いつも酔っぱらっていた。

父の声は柔らかく優しい話し方をしたという。たしかに、ぼくも話し方が優しくて、「電話で話しているとほんとにいい人に思える」って何度も言われたことがある。そう言われた時は、「実際もそうだよ」って返すことにしているけど、父の場合、本当はどうだったんだろうか。別居とか離婚とかして母親と暮らすようになると、子供は母方の親戚に可愛がられたりして、父や父方の人たちは「悪者」だと刷り込まれてしまうものだ。ぼくも大人になるまで「父は悪い人」だと思い込んで疑っていなかった。

でも、父が亡くなった時、父が働いていた会社の若い人たちが葬儀に参列してくれて、父との思い出話をして、とても「いい人」だったとぼくに言った。葬儀でなくなった人の悪口を言う人はいないということを差っぴいても、とても意外な気持ちがして返答に困った記憶がある。そして、それ以来、「おやじって本当はどんな人だったんだろう」っていう疑問が消えなくなった。今回も、法事に来てくれた女性に父がどんな人だったかを聞こうと、探るような会話をしてみたんだけど、「相性がわるかったんだよね」ってな具合で、父のことも母のことも何も具体的な話しはしてくれなかった。

男女の仲は、当事者しかわからないことがたくさんある。母を悪く言うつもりはないけど、きっといろんなことがあったんだろう。父が生きていたら、酒を飲みながらいろんな話しをしてみたかったという気持ちが強くなってきた。もう、ありえないことだけど。


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