MELANCOLICO∠メランコリコ!

ゆめと心理と占いのはなし
Por donde, amor, he de ir?
 Rosalia de Castro

abandoned

2011-08-15 19:55:44 | 日記
数年前に、ある映画祭でメキシコ映画を見た。なんというタイトルだったのか思い出せないけどじわっと心に残るドキュメンタリ作品だった。舞台は女性刑務所で、主人公は収監された中年女性。囚人たちは小さな個室を与えられて、囚人同士の行き来も自由で、刑務所は「塀」のある低所得住宅といった感じだった。収監されて間もないころは、家族や友人がたくさん面会に来てくれて、面会日を楽しみにして、収監されたショックはあまり描かれていなかった。外で惨めに稼ぐよりこっちにいる方が楽だという会話も挿入されていた。

しかし、ケンカする人、脱獄を図る人、自殺を図る人などを見て、彼女はだんだん長く収監されることの恐ろしさが分かってくる。夜、一人でベッドに入ると、シャバの空気が強烈に恋しくなる。映画は淡々と彼女たちの日常を追って、主人公の女性がだんだんと精神的に疲労し、自由のない生活に打ちのめされ始めるのを見逃さない。そして、映画のラストは急に何年か過ぎたときの主人公の顔の呆けたようなクローズアップだったと記憶する。

中の生活は最低限の規則を守っていると、それなりに居心地がいい。でも、自由に外に出られず、家族の面会もだんだん頻度が減ってくる。すると、毎日のルーティンがまるでカミュのし「ジフォスの神話」のように、重く感じられるようになって、彼女の刑期があと何年だったか覚えてないけど、彼女はだんだんと自分が見捨てられていると感じはじめ、気持ちがさ迷いはじめ、生きている価値が感じられなくなってくる。

あの映画は、人間が生きるうえでの自由の意味、自由の価値、自己決定の大切さを強く訴えていたような気がする。ちょっと大げさで、的外れだけど、遊びの誘いを断り毎日閉じ込められたかのように仕事をしている自分の顔を鏡で見たとき、ふとあの映画が思い出された。家の外で「夏休みは…」とか「お盆だから…」とかいう話し、ニュースがあふれていればいるほど、自分がabandonされた人間のようなに思えて、気持ちが凹む。ああ、思いっきり汗をかいて、思いっきり飲んで騒ぎたい!!

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