9月20日 おはよう日本
宮崎駿監督の「魔女の宅急便」。
13歳の魔女キキを描いて大ヒットした。
原作の本を書いたのは児童文学作家の角野栄子さん。
200近い作品を世に送り出し
このほど“児童文学のノーベル賞”とも言われる国際アンデルセン賞を受賞した。
8月31日 ギリシャで行われた授賞式。
児童文学の分野で世界的に最も権威があるとされる 国際アンデルセン賞。
83歳での受賞となった。
(児童文学作家 角野栄子さん)
「物語には大きな力があると信じています。
そう信じてこれからも書き続けていこうと思います。」
60年以上の歴史があるこの賞。
日本人では3人目の快挙である。
過去の受賞者は
「長くつ下のピッピ」 アストリッド・リンドグレーンさんや
「ムーミン」 トーベ・ヤンソンさんなど
そうそうたる顔ぶれ。
(ロシアの図書館関係者)
「作品を書いてくれてありがとう。
英語で読んだので
ロシア語版が出てほしい。」
角野さんの作品は
“迷いながらも自ら道を切り開いていく登場人物が世界中の少女たちを励ましている”と評価された。
(国際アンデルセン賞 選考委員長 パトリシア・アルダナさん)
「角野さんが描く登場人物たちは
どんな困難にあっても乗り越える方法はあると
子どもたちに示してくれます。
人生を肯定していると言えます。」
迷いながらも自ら道を切り開いていく少女の物語。
その代表作が「魔女の宅急便」である。
1人前の魔女になるために
たった1人で見知らぬ街で暮らし始めた13歳の魔女 キキ。
唯一使えるほうきで空を飛ぶ魔法を生かして
配達の仕事を始めるが
魔女への偏見など様々な壁に直面。
わたし
悲しいわ。
どうして魔女は悪いことをするって決めちゃうの?
すねたりめげたりしながらも
知恵と工夫で乗り越えていくキキ。
物語は9つの言語に翻訳され
世界中で愛されている。
(角野栄子さん)
「それぞれの子が
何かを抱えて大きくなっていくのだから
その中で本というのは偉大な力がある。
自分から読みたいという気持ちになる作品を
私は書きたい。」
角野さんの作品はどのように生み出されるのか。
鎌倉にある自宅。
家の中は遊び心 満載。
仕事部屋には角野さんの手書きの壁画が。
子どもの頃の角野さんはいつも泣いてばかりの少女だった。
5歳のとき病気で母親を亡くした寂しさからである。
(角野栄子さん)
「よく泣く子だった。
だめな子で。
自分が情けなくてしょうがない。」
寂しさを紛らわせてくれたのが空想の世界。
家出をした自分にやさしい人が声をかけてくれる。
そんな物語を思い浮かべた。
(角野栄子さん)
「空想の中で
『本当にかわいい子だ』と言われて
カステラとか24色のクレヨンとかお土産をくれる。
すごく単純な話を繰り返し自分の中で思って
泣きやむ。
そのとき自分が想像する世界がとても助けてくれたような気がする。」
幼いころの空想が原点という
子どもたちを励ます物語。
その執筆に使うのは原稿用紙ではなく白紙のノートである。
(角野栄子さん)
「マスがあるのは自由を失う。
私にとっては。
マスどおりに書かなくちゃいけない。
線どおりに書かないと。
だからノートは絶対 白。
何もない。」
いま書いているのは「魔女の宅急便」の番外編 「半分魔女」。
主人公は母親を亡くした魔女の女の子である。
今度はどんな物語で子どもたちを励ましてくれるのだろうか。
(角野栄子さん)
「想像力は人間に与えられるすごく大きな力だと思う。
すぐに役に立つ
効率的な数字で表されるものではないが
その人を一生 潤してくれるものが体の中にたまっていくんじゃないかな。」