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知られざる仏教遺跡 メス・アイナク

2013-04-24 08:02:59 | 海外ネットワーク


  4月14日 NHK海外ネットワーク


  東西の文化が交わるガンダーラの地で花開いた仏教文化。
  その歴史を示す貴重なアフガニスタンの遺跡が危機に。
  遺跡の保護かそれとも復興のための開発か。

  ガンダーラは今のパキスタンからアフガニスタンにかけて広がっていた地域。
  シルクロードの交易路にあたるため
  東洋と西洋の文化が融合した貴重な文化財が残されている。
  エジプトのアレキサンドリアで作られたローマングラス(1~2世紀)。
  双神変の仏陀立像(3~4世紀)。
  肩から炎を出し足元から水を出す姿はガンダーラに多い作風である。
  バーミヤンの周辺では仏陀が描かれた鮮やかな壁画も見つかっている。
  このガンダーラを経て仏教は遠く日本にまで伝わった。
  しかしアフガニスタンの貴重な文化財は長年の戦乱や略奪でその多くが破壊されてしまった。
  そして今 新たに危機に直面しているのが中部の仏教遺跡 メス・アイナクである。
  遺跡の真下に大量の銅の存在が確認されていて
  アフガニスタン政府は銅の開発を進める考えを示している。
  
  首都カブールから車で1時間半のアフガニスタン ロガール州。
  依然 武装勢力の活動が活発で軍や警察が厳重に警備している。
  ここにあるのが仏教遺跡メス・アイナク。
  標高2,500m 
  東西12キロ南北8キロにわたり広がっているとみられている。
  2世紀から7世紀の間に栄えた仏教都市である。
  4年前 地表から5メートルの深さで見つかった遺跡の数々。
  これまでに8つの寺院が確認されている。
  最大の特徴は保存状態の良さである。
  説法する仏陀の像は衣の朱色が千数百年の時を経て残っている。
  波打つひだもはっきり確認できる。
  仏塔の近くでは人の骨も前進がわかる形で見つかった。
  当時 寺院で暮らしていた僧侶と見られている。
  見つかったのは寺院だけではない。
  (イギリス人の考古学者)
  「この小さな部屋を見てください。
   地下室への入り口は頑丈にできています。
   ここは銀行だったとみています。
   この周辺から数百枚の硬貨が見つかっているのです。」
  メス・アイナクはこの地域の歴史を新たに照らしだす貴重な遺跡群だとみられている。
  発掘された1,000点以上の品々は
  ガンダーラ美術を集めた首都カブールの博物館に収蔵されている。
  金箔で覆われた仏陀の頭部など
  ふんだんに金を使った像が盗掘に合わず出土するのはきわめてまれである。
  5世紀ごろに作られたとみられる木の仏像は
  アフガニスタンだからこそ奇跡的に見つかったものである。
  (学芸員)
  「湿度が高くない気候ゆえにこの木の仏像は腐ることなく保存されていた。
   おそらく世界で最も古い木製の仏像といえるのではないか。」
  
  この貴重な遺跡が今取り壊されようとしている。
  遺跡の近くに立ち並ぶプレハブは地下資源の採掘を行う中国の国営企業の建物である。
  年内にも開発の乗り出す予定である。
  仏教遺跡の発掘調査が進む山のふもとに大量の銅が埋蔵されている。
  このため開発が行われればこの山全体がなくなるものとみられている。
  発掘調査は4キロ四方で進められている。
  古来から銅が取れることで知られ銅を求めて集まった人たちが集落を形成。
  その周辺に仏教寺院が建てられたとみられている。
  銅の採掘予定地をみると遺跡群のほとんどが取り壊されることになる。
  発掘調査にあたっている地元の考古学者は
  遺跡が保存できないことに悔しさをにじませている。
  (地元の考古学者)
  「発掘調査を早く終えるように圧力をかけられ
   30年から40年かかる作業をたった4年間で終えることになった。
   遺跡が破壊されることは考古学者だけでなく国民にとってもとても悲しい。」

  メス・アイナクの保存を求める声はアフガニスタン国外にも広まってる。
  仏教徒が多数を占めるタイでは
  文化財の保護を担当する国連の機関ユネスコに対するデモが行われ
  参加者は遺跡を守るよう訴えた。
  欧米の考古学者などで作る団体はインターネットを通じて遺跡保護の署名活動を行っている。
  10万人分集めてアフガニスタンのカルザイ大統領に提出する予定である。

  2001年のタリバン政権の崩壊後
  アフガニスタンは国際社会の支援を受けて国の立て直しを進めている。
  しかし目立った産業はなく復興は遅れている。
  地下に眠る天然資源の採掘は経済的な自立に欠かせないのである。
  遺跡の破壊だという批判に対しアフガニスタン政府は出土品をできるだけ保存すると主張。
  遺跡を詳細の測量しデジタルデータの形で後世に残す作業も進めている。
  (アフガニスタン副情報文化相)
  「私たちは遺跡の保存に取り組んでいる。
   また経済の安定のため鉱山から利益を得ようとしている。
   これは国民のためだ。
   アフガニスタン社会を安定させるためには財源が必要だ。」
  
  長年にわたる戦乱から抜け出そうとしているアフガニスタン。
  いまだに復興への軌道に乗れない厳しい現実が
  人類共通の文化遺産の破壊という問題を生み出している。
  
  
  
 
  

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